カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

物語その85・僕のぬいぐるみ

2020-03-21 13:58:55 | 不等号の関係性
たかあきは、富豪の息子とぬいぐるみに関する日常の物語を創作してください。

 長らく子供が生まれなかった富豪の夫婦は、長男の誕生記念として有名な職人に特注でテディベアを作らせた。
 最高級のビロードに木屑を詰めたぬいぐるみはやがて長男にとって口数の多い友達になったが、当の長男はぬいぐるみが喋る理由を特注品だからと信じて疑わず、故にお互いに取って平穏の日々が続いた。
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物語その80・英雄と呼ばれたくなかった魔導士の話

2020-03-19 21:27:02 | 不等号の関係性
たかあきは、赤の魔道士と孤児院の幼女に関する追憶の物語を創作してください。

 赤の魔導士と呼ばれ、その激烈な魔法で祖国を勝利に導いた男は戦争終結以降、完全に歴史の表舞台から姿を消した。
 世を儚んだ隠棲や影響力を恐れた暗殺まで様々な行く末の噂が流れる中、王都からはるか離れた辺境の教会で戦災孤児たちと暮らす物静かな男の正体について気に掛けるものは誰もいなかった。
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骨董品に関する物語・キリスト教の瞑想の本

2020-03-19 19:35:10 | 突発お題

 妻が毎日のように骨董市で見付けてきた由緒ありげな本を開いては一喜一憂するので何をやっているのか尋ねると、本を開いた際のページに書かれた聖句や文章で一日の運勢を判断している、これはキリスト教が禁じる占いではなく遥か昔から行われている神聖な託宣行為なのだと断言されたが、実際そういうものなのだろうか。

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骨董品に関する物語・三日月のブローチ

2020-03-19 18:16:28 | 突発お題

 月光錬成の基本は真珠の生成だが、真球と呼べるほどの精密な品物を錬成するのは長年にわたる熟練の技術と勘処が必要で、最初は大概が塊(ナゲット)と呼ばれる歪な形の真珠しか錬成出来ない。だが、初めて錬成した自作の歪な真珠を装飾品に仕立てて常に身に着けている学生は決して少なくない。
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物語その79・そこに居ない少年

2020-03-18 20:31:20 | 不等号の関係性
たかあきは、皇太子殿下と一人ぼっちの少年に関する友愛の物語を創作してください。

 その生まれと立場から常に周囲から遠巻きにされてきた皇太子殿下は、本来は誰も足を踏み入れる筈のない宮殿の奥庭で自分と同じくらいの少年に出会い、友達になった。少年は自分の事を殆ど話さなかったが、やがて皇太子は少年が政争に破れて父親共々粛清された筈の叔父の息子であることを知った。
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物語その78・哀しき道化が流すは涙に非ず

2020-03-17 21:22:30 | 不等号の関係性
たかあきは、富豪の愛娘と一人ぼっちの少年に関する退屈の物語を創作してください。

 少年は時として退屈が人を殺すと知らなかったが、少年の主人である少女が退屈に蝕まれていることは分かったので、何とかその退屈を取り除こうと努力を重ねた。故に彼女は曲馬団の道化を見物する観客のように少年をぞんざいに扱ったが少年はそれでも構わなかった。
 少なくとも、あの日までは確かに。
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春の創作怪談・桜が咲く前に

2020-03-15 23:00:58 | 突発お題
 桜が咲く少し前に父さんと母さん、それに僕と妹で車に乗って湖に行った。
 湖は遠かったので途中でご飯にしようと夕方近くになってドライブインに入り、オムライスとサクランボの乗ったプリンを食べたこと。それに、再び車に乗る前に駐車場から見えた山に掛かる夕日と燃えるような色の空は鮮明に覚えているが、そこから先に何があったのか思い出せないまま、僕は一人で叔母さんの家に引き取られることになった。
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物語その77・忘れ形見を見詰める瞳

2020-03-15 19:18:42 | 不等号の関係性
たかあきは、大商人とぬいぐるみに関する愛憎の物語を創作してください。

 ぬいぐるみ一つを抱いた姿で親に捨てられた少年は、余人の想像を絶する苦労と努力と幸運の末に大商人となった。そして彼の部屋には今でも当時のぬいぐるみが飾られているが、経年から擦り切れて汚れと乱雑な縫い跡が目立つぬいぐるみを見詰める時、彼の瞳はとてつもなく昏い輝きを湛えるのだった。
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物語その76・貴女を残したい

2020-03-12 21:00:13 | 不等号の関係性
たかあきは、お嬢様と貧乏画家に関する邂逅の物語を創作してください。

 その筋で聞いた話によると、男性による女性のナンパ成功率はそれほど高いものではなく、概ね薄利多売な声掛けの末にほんの数件という程度らしい。しかも、モデルになって下さいなどという初対面の貧乏画家の声掛けに対して素直に応じてくれたお嬢様が本当に存在したら、それは奇跡と言っていいだろう。
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物語その75・夜啼鶯の鳴く頃に

2020-03-11 22:31:27 | 不等号の関係性
たかあきは、富豪の愛娘と夜啼鶯(ナイチンゲール)に関する退屈の物語を創作してください。

 病がちの愛娘の為に富豪が銀の籠に入れて贈った夜啼鶯は何故か全く鳴こうとしなかった。これでは役に立たないと嘆く父親に向かって娘は寂しそうに、きっと自分はこの夜啼鶯が鳴いたら死んでしまうのだと呟いた。ちなみに、その後も夜啼鶯が鳴くことはなかったが、すっかり健康になった娘に父親がその話をすると、とたんに目を逸らして話を無かったことにされる。
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