あるBOX(改)

ボクシング、70年代ロック、ヲタ系、日々の出来事などをウダウダと・・・

東京フィルメックス2017授賞式+「24フレーム」を見た

2017年11月25日 | 生活
チケット購入済みの「授賞式+24フレーム」までは時間がある。
とりあえず昼食を・・・と有楽町マリオンを出る。



どっかのアンテナショップで名産料理を食べようかと思ったが、
その前に有楽町駅のガード下で「C&Cカレー」を見つけてしまい、
私の好きな塩っ辛いカレーを食べた。

まだ時間が余ってるので座って和める所で一休み。
あとはツイッター。



17時半を目途にマリオン12階に戻る。
※実際は11階から入ってエスカレーターで1F上がるのよね。

開場時間で会場入り。今回の席は結構前の方だ。
見上げる形になるが、登壇者の表情など良く見える。



司会やプレゼンターが登場。
順次表彰作が発表されていきます。

学生審査員賞は『泳ぎすぎた夜』The Night I Swam
(監督:ダミアン・マニヴェル、五十嵐耕平)

学生審査員の女性が日本語と英語でコメント。
若きダミアン監督が「素晴らしい英語コメント」と感激している。



観客賞は・・・『ニッポン国VS泉南石綿村』!
Sennan Asbestos Disaster(監督:原一男)

登場した原一男監督、第一声が「私、審査委員なんですよね」。
これには客席からも笑い声が。



まぁ、あれだけ圧倒的な作品見せられて、原告女性から投票を
呼び掛けられちゃ皆入れますわ。
※もちろん私も投じたし…

~というか、原一男氏は審査委員長です。



※いちおう「参ったな~」的なポーズされてますが・・・

監督は泉南と共に「水俣」の現場も撮っているそうで。
※これも渋谷アップリンクで語っていらしたが

熊本県水俣のチッソ工場から海に垂れ流された水銀が原因となった
公害「水俣病」。

「1年で『水俣』のドキュメンタリーを完成させます!」と、
そう宣言されましたよ。



70年代が運動のピークといえた「水俣病訴訟」「患者認定活動」。
もはや熱量も下がり、泉南どころじゃない現状。

それを撮るのは、もっと困難である…と。
※「患者を傷つける発言があった」として原一男監督が謝罪したと
 いうニュースもありましたね。

しかし、決意を持っての完成宣言。
今度は1年で新作発表。期待で御座います。

さらには現状の日本映画界(特にドキュメンタリー映画)への苦言
もあり、社会派映画復権の必要性を説いた原一男監督。

なんとドキュメンタリーではない、通常映画の脚本を書いていると
発表!こちらの完成も誓っていらした。

すばらしい創作意欲。
72才の原一男監督だが、そのエネルギーは、まだまだ働き盛りの
50代のようだ。(見た目も若いよね)

観客への叱咤もあったから、こちらも受けて立たねばならない。
映画への姿勢だけじゃなく、国民としての立ち位置まで質されて
ますからね。

まぁ、当方も安穏とはしておらず先の選挙じゃ新宿街宣に合わせ
声を上げたりしておりますので。
原一男監督のアジテーションにも乗る気マンマンで御座います。



◆最優秀作品賞表彰
壇上には原一男氏の他4名の審査員。国籍も様々。

原氏から「今年は最優秀作品賞が2作品」「同率で2作品が1位」と
説明あり。
※審査員特別賞は無し。賞金は折半して75万円ずつ。

【最優秀作品賞】
『殺人者マルリナ』Marlina the Murderer in Four Acts
(監督:モーリー・スリヤ)
『見えるもの、見えざるもの』The Seen and Unseen
(監督:カミラ・アンディニ)

2人ともインドネシア出身の女性監督でした。
「インドネシア映画のフィルメックスのコンペ作品は初。そこから
作品賞を受賞したことを誇りに思う」とはスリヤ監督。
「全く違う作風の映画だが、それはインドネシア映画の多様性を
表わしている」と語ったのはカミラ監督。
両者が敬意を持ち合っているのは明白で退場前にはハグされていた。



そしてクロージング上映。
『24フレーム』24 Frames
(イラン、フランス/2017/114分/監督:アッバス・キアロスタミ)

自身は完成を見ることは叶わなかったキアロスタミ監督の遺作。
写真が撮られる瞬間、その前後はどうなっているのか…と云う
コンセプトを基に作られた映画。
写真家でもあるキアロスタミ氏らしい意欲作との触れ込み。

最初の1枚は絵画に雪、動物が重なり動きと時間が表現される。
他の1フレームは窓から見える鳥の動きを、森の中を移動する牛を。
そして鹿、押し寄せる波と鳥、雨と動物、などなど続いていく・・・。



大半は白黒の固定フレーム。これが24フレーム分。
写真と映像が合わさって描かれるのだが、なかなか忍耐の要る鑑賞。
・・・というか、これはもう修行!

なんか、しんどくなって(トイレに行きたいのもあり)私は途中で
退出。他にも同様の人がいらっしゃった。



キアロスタミ・ファンのファンとはいえ、ほぼ実験作といえる今作は
厳しかった。

最近映画館やホール上映での映画鑑賞が増えた私だが、その厳しさを
教わりましたな。

有楽町マリオンを出て地下街へ。地下鉄から乗り継いで自宅に戻った。


途中、ホームに「日ペンの美子ちゃん」の広告があった。
癒された。

結局、最後は漫画で癒された。そんなハードな土曜で御座いました。

東京フィルメックス2017で「ニッポン国VS泉南石綿村」を見た(2)

2017年11月25日 | 生活
ちょっと内容を書き過ぎたかな…。
休憩は助かった。
※トシ取ってトイレが近くなってるのよ。



上映終わって「さすが原一男監督だ」という思いを強めた。
ドキュメントだが「教育映画」「資料映画」では終わらない。

一種のエンターテイメント・ドキュメンタリーとなっている。
深刻な社会問題を、ここまで昇華させるんだから凄まじいよ。



上映後、再び監督たちが登壇して挨拶。そしてQ&A。
さすが「こういう映画を見に来る方々」、挙手しては印象深い
質問を述べた。
※協力的じゃなかった方々は最後までそのままだったそうな・・・



「被害者ではあるが、あくまで普通の人々。そういう人たちを
撮って面白い映画になるのか、ずっと不安で今も不安」・・・と
コメントした監督。

怒りの柚岡さんには「8年も原監督と一緒で邪魔じゃなかった
ですか?」と質問があったが「もちろん邪魔でした!」と即答
されて我々を笑わせてくれました。

※これは信頼関係あった上でのコメントですね。
 柚岡さんは空気を読んで気を遣う人だと思いました。

女性被害者の佐藤さんは「泣きながら撮って、ずっと一緒にいて
くれて、原監督には本当に感謝しています」。
そして「どうか観客賞に推薦してください」と頭を下げられた。



山形国際ドキュメンタリー映画祭2017では市民賞を獲得したこの
「ニッポン国VS泉南石綿村」。
最優秀じゃないのか…と監督はコメントされてたが、私は市民に
寄り添って映画を撮る原一男監督に相応しい賞の名前だと思った。

※釜山映画祭では最優秀を獲得されてリベンジは成ったかな?



「山形では多くの人に『面白かった』と言って貰え自信になったが
月日が経ってもう不安になっている。今回も色んな人に『面白い』
~と言って欲しい」と語った原一男監督。
頷く壇上の方々。

過剰なスーパーヒーロー不在のドキュメンタリー映画。しかし、
だからこそ現実味がある。
過剰なスーパーヒーローはドキュメンタリーなのに現実離れした
存在のようにも感じられる。

普通の人々の現実の話だからこそ、身近に、力強く訴えてきた。

『ニッポン国VS泉南石綿村』、凄い映画です。
来年3月にユーロスペースで公開予定。
興行の成功を祈りたい。

東京フィルメックス2017で「ニッポン国VS泉南石綿村」を見た(1)

2017年11月25日 | 生活
東京フィルメックス(TOKYO FILMeX)とは、
毎年秋に東京で開催される、作家性ある映画人を育てる事を標榜し、
アジアを中心とした各国の独創的な作品を上映する映画祭。



今回は各監督が来日、上映時に舞台挨拶や観客との質疑応答(Q&A)を
行なった。

上映作品は、コンペティションと、特別招待作品がある。
審査員によってコンペティションから、最優秀作品賞や審査員特別賞、
学生審査員賞が選ばれる。

観客賞もあり、これは特別招待作品も対象となる。



正直、同イベントに来るのはワタクシ初めて。
お目当ては、原一男監督の『ニッポン国VS泉南石綿村』
(Sennan Asbestos Disaster 2017年/215分)

上映場所は、有楽町マリオンの11階にある有楽町朝日ホール。
時間は朝10時から。仕事に都合付けて臨んだ。



以前、「ゆきゆきて神軍」トーク付き上映会で原一男監督が語った新作。
なんと215分の長さで、途中で休憩があるという。

入場前から入り口には列が出来ている。
カウンターではパンフレットが販売されてたので(1500円)、入場の
前に購入。



映画のテーマはアスベスト問題。
大阪・泉南アスベスト工場の元労働者らが国を相手に起こした訴訟を
記録したドキュメンタリー作品で、原監督のカメラが原告団・弁護団、
支援団体の活動を8年間にわたり撮影した渾身の一作。



明治時代から石綿(アスベスト)産業が盛んとなった泉南地域。
石綿により健康被害を被った石綿工場の元従業員や近隣住民たちが、
国を相手に国家賠償請求訴訟を起こした。

奥崎謙三のような「強力な個性」の人物がいない、普通の市民の戦い。
撮影は長期にわたって、映画的な盛り上がりを期待する原一男監督が
焦燥する展開へ・・・。



前知識はその程度。あとは見てみないと分からない。
上映前後に監督・出演者挨拶があるとの事。

出演者というか、ドキュメンタリーだから原告と支援者である。
「怒りの柚岡」といわれる原告男性(けっこう年配だが背すじは伸びて
エネルギッシュ)、「原監督は時に泣きながら私たちを撮ってくれた」
・・・と感謝を述べる女性。



一旦、皆さん舞台袖に去り、上映開始。

「さぁ、2017年の原一男映画」・・・と構えていると、ザラザラした画面、
街の音の中で取られたクリアじゃない音声、そこから車に同乗し他人の
家を訪ねるシーン。

おお、いつもの原一男映画だ!いつものドキュメント映像だ!
*国際映画祭の上映ゆえ英語字幕こそありましたが...。



後は一気に引き込まれた。
監督が「この映画は『ゆきゆきて、神軍』の対極にあるような内容」と
話していたように、強烈すぎるキャラクターは登場しないが、石綿被害
者やその家族と、弁護団たちの「等身大の姿」が迫ってくる。

まずは被害者探しから始まる。
余りにも「泉南地域の石綿労働者が早死にする事は当然」のように思わ
れていたから、それが何かを訴える事であるのかも分からない人が大半
だったのだ。

ただし、亡くなり方の異様さ、その苦しみの壮絶さに疑問を持つ家族、
被害者そのものが原告団として団結し始めた。
その中には「経営する側」も含まれた。

耐熱性・絶縁性・保温性に優れ、断熱材・絶縁材など古くから用いられ、
「奇跡の鉱物」と重宝されてきた石綿。

石綿による塵肺・肺線維症・肺癌・悪性中皮腫など人体への健康被害を
引き起こす事が発覚したあとも、国は経済優先で制限を遅らせ、工場の
空調設備整備を指導し始めたのが70年代、石綿自体の取り扱いを終わら
せたのは2004年。

国家による切り捨て政策を認めさせ、救済を求めるのが「大阪・泉南
アスベスト国家賠償請求訴訟」。
※それを今回初めて知りました・・・。

反発もあった。
貧しき者が石綿紡績のおかげで家族の生活を守り、子供が進学できた、
もう終わった事として、訴える事を拒む人もいた。

淡々とした活動に原一男監督が苛立つシーンもあった。
原告団・支援者・弁護団も、一枚岩じゃなく、それぞれの考えがある。

地裁で勝っても上告が繰り返される。
勝ったとしても、ぬか喜び。長引く裁判の間に原告が次々と亡くなって
いく・・・。

さっきまでスクリーン上でオモロイ関西ノリの言動で笑わせてくれた人。
その人たちの葬式が次々と続く。棺桶から死に顔も映す。
悔しそうな顔にも見えた。

こんなもん、こっちゃ泣くに決まってるじゃないか!
周辺の席でも鼻をすする音がひっきりなしに聞こえる。
*私の右隣には白人女性がいらしたが、彼女も泣いていただろうか...。

「この世界の片隅に」で流した涙とは違う涙。悲しい、悔しい涙。
手法としては剥き出しで叩きつけてくる原一男監督のやりくちはエグイ!

エグイが引き込まれる。
どの手法が偉い、凄いじゃない。それぞれが凄い・・・。

陳情に行くが役人はマトモに対応しない。「上の者を出せ」と喚いても、
戻ってきたら同じ答えを繰り返す。

怒りを覚えたが、それを通り越して笑ってしまった。彼らも哀れだ。
気の毒だ。どうせ上から言われた通りの事しか出来ないのだ。
※役人じゃないけど、私も似たような仕事してるからなぁ・・・

そんな中、強行突破を目論んだり、役人を怒鳴り飛ばしたりするのは
「怒りの柚岡氏」。

弁護士から「そんな事しても逆効果だ」と言われ、仲間同士で一触即発。
原告にも「あくまでルールに則って勝たないと」という、怒りを静かに
燃やす人もいる。

ときに浮いてしまう「怒りの」柚岡さんは、平成の映画界で先鋭的で
あろうとし、力強いメッセージを作品に託す原一男監督そのものとも
通じる気さえした。

※多分に監督はドラマチックな映像が欲しくて出演者を煽り、そその
 かす手法を取る。カメラの前では柚岡氏以外の原告も高揚している。
 奥崎謙三を暴走させた原一男監督の魔術だ!!

こんなに葬式だらけの映画を、悲惨な死が続くドキュメンタリーを
面白がることが許されるのか!?面白がってイイのか!?

・・・でも、でも面白れぇんだよ!!!

スゲエ面白いよ、原さん!!

(続く)