'06/12/22の朝刊記事から
官舎問題だけでない 税調会長の資質も欠く
経済評論家 森永 卓郎氏
政府税制調査会の本間正明会長が辞任した。
当然だと思う。
第一の問題は、資格があったかどうか疑わしいのに公務員宿舎を使用していたことだ。
本間会長が問題の公務員宿舎に入居したのは経済財政諮問会議の民間議員を務めていた時代だ。
月に数回しか勤務のない非常勤公務員が、そもそも公務員宿舎の使用資格を持っているのかどうかについては大きな疑問がある。
普通の国家公務員の場合、常勤で毎日勤務していてもすべての職員が公務員宿舎に入居できるわけではない。
にもかかわらず、本間会長が都心の一等地にある広い宿舎に入居できたこと自体に不透明さが残るのだ。
第二の問題は、実際には妻は大阪にいるのに、公務員宿舎に別の女性と暮らしていたことだ。
この女性は、公務とは一切関係がないのだから、偽って国有財産を使用したことになる。
第三の問題は、空白期間の存在だ。
本間氏が諮問会議の議員を辞めてから政府税調の会長になるまでには空白の期間が存在する。
この間、本間氏は単なる大阪大学教授だったはずだ。
ところが、本間氏が問題の公務員宿舎を諮問会議議員を辞めたあとに退出し、政府税調の会長になってから入居したという形跡はない。
つまり、無資格の状態で公務員宿舎を占拠していた可能性が高いのだ。
これは、本間氏だけの問題ではなく、そうした行動を黙認していた管理者にも責任がある。
資格のない人間を公務員宿舎に住まわせていたことには、相当の癒着がある可能性がある。
さらに、本間氏には不適切な公務員宿舎使用以前に、政府税調会長としても、その資質に大きな問題があった。
それは、政府税調の存立基盤を揺るがす大きな問題だ。
本間氏は、税調の第1回の会合が始まる前から、減価償却費の算定で消却可能額の上限を撤廃する方法で、大規模な企業減税を行う方針を明らかにしていた。
政府税調というのは、与党税調と異なり、政治的な思惑から離れて、公正・中立の立場から、学者や労働者など各界の代表を集めて、国民にとってどのような税制が望ましいいのかを大所高所から議論する場だ。
しかし、委員の数が多く、審議時間も限られているため、現実には、原案づくりで事務局と密接に連絡を取り合える会長の影響力が非常に大きい。
だからこそ、会長たる者は、それぞれの委員の意見を慎重に考慮して、バランスの取れた答申を作る義務があるのだ。
ところが、本間氏のやったことといえば、あらかじめ答申の内容を自ら決めてしまい、それをメディアに伝えることによって、大規模企業減税を政府税調の既定方針としてしまったのだ。
それは、政府税調の存在意義を揺るがす暴走と言ってもよいだろう。
さらに、政府税調の答申は、手取り所得の減少に悩む庶民に増税を押し付け、空前の利益に沸く企業を減税するという逆噴射の税制改正だった。
私はそうしたセンスのなさも、辞任に値すると思う。