’08/05/18の朝刊記事から
二国家共存 遠く
イスラエル建国60年
パレスチナの地にイスラエル国家が建国されてから60年を迎えた。
エルサレムでは14日、ブッシュ米大統領ら各国首脳を招いて記念式典が行われたが、建国以来の最大の課題であるパレスチナとの二国家共存への道は依然遠い。(カイロ・鄭真)
足踏み続く和平交渉
イスラエルのオルメルト首相は7日、エルサレムの戦没者追悼式典で演説し「長い戦いと尊い犠牲を経て建国60年を迎えた。だが、真に欲しいのは戦争ではなく平和だ」と述べ、パレスチナ自治政府との和平実現に決意を示した。
首相と自治政府のアッパス議長は昨年11月、和平交渉を再開したが、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸などの占領地でのユダヤ人入植地拡大問題をめぐり、交渉は膠着状態に陥っている。
パレスチナ分裂の危機
イスラエル建国の源流は19世紀末にさかのぼる。
欧州で迫害されたユダヤ人の間で、パレスチナの地に故郷を再建し帰還を目指すシオニズム運動が高まり、入植地が拡大していった。
第二次世界大戦下のユダヤ人大量虐殺の悲劇を乗り越え、1948年5月14日、イスラエルが独立宣言。
翌日にアラブ諸国との間で第一次中東戦争が発生てし以来、戦火は4度にわたった。
多くの占領地を得たイスラエルは「和平と土地の交換」の戦略に出て、78年にエジプトとの和平に合意。
90年代からパレスチナとの二国家共存を目指す和平交渉が本格化し93年、パレスチナ暫定自治宣言(オスロ合意)にこぎ着けた。
しかし、2000年に交渉決裂。
アラファト議長の死後、パレスチナでは、イスラエル壊滅を掲げるイスラム原理主義組織ハマスが台頭、06年の総選挙で勝利し、さらにガザを武力制圧するなど自治区は分裂の危機に直面している。
支配者と先住民の構図/国際社会にも責任 東大名誉教授 板垣雄三氏に聞く
イスラエル建国60年について板垣雄三東大名誉教授(中東研究)に聞いた。(国際部 坂東和之)
現実は、イスラエルが植民地支配する側で、パレスチナが支配される先住民の構図だ。
核武装したイスラエルが、パレスチナ市民の生活を攻撃し、「民族浄化」しようとしている。
2006年には、隣国レバノンにクラスター爆弾を打ちこみ、多くのパレスチナ難民が犠牲になった。責任は国際社会にもある。
欧米は虐殺を招いた反ユダヤ主義の償いをパレスチナに肩代わりさせた。
国連は、先住民の意思を無視してパレスチナ分割を決めた。
日本で「遠い国の問題」との声を聞くが、間違いだ。
第一次世界大戦の戦勝国がユダヤ人の国づくりを決定した国際会議では、日本は主要な参加国だった。
国際社会はイスラエルに何の制裁も加えようとしない。
しかし、イスラエルが今のように非人道的な道を歩んで、存続できるとは思わない。
かつてパレスチナでは、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の民が共存していた。
日本人もパレスチナの今と未来を真剣に考えてほしい。