NHK火曜夜10時のドラマ「燕は戻ってこない」全10話終了しました。まあ物凄いドラマでした。もちろん桐野夏生の原作が面白いのでしょうが、桐野先生自身が先日ラジオで「ドラマは結構わかりやすくしてくれて感心しながら見てます。」と言ってたので原作との相違は結構あるのかも。
番組サイトでは「「命」はだれのもの?代理出産を巡る女たち男たちの欲望のドラマ!」という宣伝文句ですが、簡単には割り切れない人間の心の内や、実際みんなドロドロとしたものを抱えているのがテーマというのは桐野作品ならではでしょう。
主人公は低収入で彼氏なしの派遣社員リキ(石橋静河)で、職場の同僚から卵子提供で金を稼ごうと誘われたものの、実際そのエージェントで面談を受けたところ持ち掛けられたのは代理出産だったというのがメインのストーリー。
そうしてまでまとまった金を手に入れようとするに至る初回がツボで、給料は安いし、ある日同じアパートに住む男とトラブルになり、それ以来会うたびに嫌がらせが続き、とにかく今の生活から抜け出したいと追いつめられ、自暴自棄になる描写は見事でした。
予想としては、ビジネスとして代理出産を引き受けたものの、妊娠から出産に至る間に母性が芽生えてしまい契約は破棄という展開かと思っていたら、妊娠前から様々こじれた問題や新たな登場人物もあり、そこは原作の力を感じました。さすがに常人が考えるような展開にはしませんね。
その主人公の職場の同僚が面白くて伊藤万理華が演じてますが、なんとも下世話というかどうしようもないというか。リキが人工授精で妊娠を請け負う相手は元世界的なダンサーであり稲垣吾郎が演じてるのですが、その写真を見て「うわ~、私なら生でセッ〇スできる。」なんていうくらい。
代理出産を依頼してくるのは稲垣吾郎と内田有紀の夫妻なわけですが、稲垣吾郎のナルシストぶりがはまり役で、内田有紀も人は好さそうだけど人間そんな簡単なものじゃないというのを存分に発揮し、こういうところは美形の人がやるとピッタリでした。自分勝手な感じがプンプンして。
そして圧倒的にインパクトが強かったのが内田有紀の友人で春画作家役の中村優子。この人は「見たことある」という程度でしたが、一気にドラマの雰囲気が変わるほどの存在感でした。この人をキャスティングした人にアッパレです。
また、出番は少なかったけど富田靖子が良かったです。静かな演技でありながら、表情だけでどういう人か想像させるというのはさすが。吸い込まれそうな優しい笑顔が見られました。最近ドラマで見た中では一番良かったです。
色々語り尽くせないほどの作品で私は高評価です。ただ、もう一度見たいかというと、かなりの覚悟がいるのであまり…。ま、それくらいヒリヒリするドラマもたまにはいいですね。
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