よしもとばなな
『ムーンライト・シャドウ』★★★
よしもとばなな
『ムーンライト・シャドウ』★★★
よしもとばなな
『ハゴロモ』★★★★
再読の再読?
今のわたしにぴったりかと。
あぁしっくりきて救われた感
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ものごとはきれいな面だけではない。
仲のいい両親の子供は世界を疑うことを知らないで育つことが多い。私のように。
そういう無駄なやりとりがえんえん続いた。でも結局だだをこねているのは自分だけという状況に追い詰められた。ひとりで質問し、ひとりで答え、ひとりで文句を言っているようなものだった。
つらいなぁ、と私は妙に心静かに思った。それはもう相談ですらないじゃないか、決定じゃないかと
もう少しどろどろもめたり、迷ったり、時間をかけようよ、と思っていた。でも、彼がそう決めてしまったんなら、何も言うことがなかった。
本当は自分が何か大切なものを刻一刻とすり減らしているのはわかっていた。自分の時間、自分の考え方、そういうようなもの。
受け身、受け身の日々だった。
ぴりっとする冷たい風の中には、かすかに、木の燃えた後のような香ばしい冬特有のいい匂いが混じっていた。
人の、感じる心の芯のところは、決して変わることがないようだ。
人と人との間には本当には言葉はない、ただ、全体の感じがあるだけだ。
外は冷たそうな風がごうごう吹いていたが、部屋の中は暖かかった。ヒーターがちょうどよい熱を放っていた。窓はかすかに曇り、その向こうには枯れた木の枝が模様のようにきれいに見えた。
人の、意図しない優しさは、さりげない言葉の数々は、羽衣なのだと私は思った。
いつのまにかふわっと包まれ、今までは自分をしばっていた重く苦しい重力からふいに解き放たれ、魂が宙に気持ちよく浮いている。
東京では考えられないくらいの、きれいな空気だった。それが私を今という時間にひゅっと引き戻した。
東京と違うなあ、と私は思った。だいたいちゃんと空が黒い。東京ではたいてい、夜の空はぼんやりとグレーに明るかったのだ。
この世にはいろいろな苦しみがあり、時間が過ぎていく。自分だけの狭い世界から、少しだけ頭を出して、人の苦しみを思った。
「まじめなおつきあいよ。だって、私の人生、うわついたことをしているひまなんてないもん。本当はもう少しうわついたことをあれこれしたかったくらい、確実に進んできてしまったわ。やっぱりそれは環境の反動ね。」
甘かった、と私は思った。いい意味で、しっかりとそう思ったのだ。
彼はしばらく黙って、遠い、雪山を思っていた。それは、私にも伝わってきた。その憧れ、その渇望。
「私も、経験あるけれど、あれは中毒だと思う。朝、起きてまずTVをつけてしまうと、あっという間に一日がたってしまうの。」
恋愛はすばらしい。でも、この世の中は、もっともっと大きなことでできているんだ、と私はまた実感した。
そうこうしているうちに、私は、だんだん忘れてきた。
時々発作のように思い出が襲ってきて足元をすくわれることはあったが、回数は目に見えて減っていった。
時間というもののおそろしい力を、私は実感した。
青春と呼べる時期に私が考えていたことと言えば、食べ物とセックスのことぐらいだった。
私も私の内面を掘り下げていくことだろう、どこにいても。そして幻の外に一歩踏み出せるかもしれないし、それはまた別の幻に移行するだけなのかもしれない。一生続く、勝ち目のなさそうな戦いだ。
こうやって、ばっさり切られた傷が治っていくように、ほんとうに少しずつ、新しい細胞が生まれてくる。そして、いつのまにか傷があった時とは、決して同じように考えれらなくなってくる。体が勝手に今現在の自分に焦点を合わせてきて、どんなすばらしい過去であろとぼんやりとしてくる。
彼はいろんなことを全然急いでいない、何も急いでいないのだ。
重力から解き放たれ、一瞬、きれいな高みから世界を見おろす。
何かの残り香を求めていたのに、あるのはただ「これまでとは違う」という現実だけだった。
彼はこうと決めたことを、それが私と別れるということであれ、実行できたのだろうう。後追いの未練の電話もなく、急な訪問もなく。
「だって、あの朝に運命がわかれてしまったんだもの。後を追っても、もう、追いつかないわ。」
私は、時間をかけて、自分がちゃんと流れ着くようなところへ行こう。
そのためには、もう少し時間をかけなくては、と思った。
あれ?あんなにふさいでいたのに夕方になったら、もう、気分が変わっていた。
西の方から何かきれいな光がどんどん押し寄せてきて、いつのまにかそれにさらされて気分が変わっていた、だとか、寝て起きたら、全く違う雰囲気に包まれていた。
自然との感応はまるでいいセックスのようなものだ。
「一回泣くごとに、元気になっていくという感じ」
私たちはもうすっかり大人で、実際には簡単に寝ることができた。
弱っているときにじんわりしみてくる気がする。
まさにそんなお話☆
よしもとばなな
『すばらしい日々』★★
放射能
先日、第一原発沿いを通った。
未だに数値は3
歩行者と二輪車は通行禁止
知っていた街はあの日のまま。
ひび割れた道路
崩れ落ちたままの瓦
割れて散乱したガラス
伸び放題の草
道端に「獣と衝突」
ガードで通れなくなっている曲がり角
信号は黄色の点滅
警察車両と監視員
帰宅困難区域(高線量区間を含む)
広野、楢葉はまだ、
そこから先の富岡、大熊、浪江は見るも無残荒れ果てていた。
原町(私の中では)、相馬もまだ。
すばらしい日々
私の中ではユニコーンが流れる♪~
歳相応なばなな 世代はちがうけど伝わる。
老犬の死
両親の死
血まみれの手帳(表紙ね)
友達の死
わたしが死んだら、思い出もみんななくなっちゃうのかな?
帰り道 ふとこの半年私が何をしているのか全く興味がないんだなぁって。
「もうやめよう」
吹っ切れた。何かが失われた。
その行動としてメールを消去 1213通
消去したメールはゴミ箱へとそれも消去
軽くなった。
くだらないものだった。
そしたら本命が音信不通に…何かしら?
半月先の約束をしようとする男
お気楽に自己中心的に連絡してくる男
また新しい人?
普通の日常が続くわけがない
「男より女を読むほうが難しいの」
「予想を裏切るのはあなただけ」
音信不通じゃなかった。ちゃんとつながってた。
よしもとばなな
『海のふた』★★
先日旅した西伊豆が舞台の物語
読むのは二度目だけど今回はまたひとしお。
あのシュノーケリングしたおだやかな海の景色が浮かぶ ゆら2
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実はいろんなことってそんなに確かなものじゃない。っていうことに気づいたら苦しいから、あんまり考えないでいらるように、神様は私たちをぼうっとさせる程度の年月はもつような体に作ってくれたのだろうか。
人は、人といることでもっともっと大きくなることがある。
ふるさとの町のこの景色、変わらない海岸線……打ち寄せるなめらかな波、遠くの灯台からまわてくる赤い光の筋……でも、こうしている間にも、なにひとつ同じであるものはなくて、どんどん変わっていき、失わせているのかもしれない。
「そうか、私は成り行きにまかせて、つまみぐいをしながら自分勝手に育っていくタイプだわ。」
よしもとばなな
『スナックちどり』★★
あぁまたばなな(笑)
最初に歌の歌詞を持ってくるのが定番?
ぷんっと一瞬お部屋に日本酒の香りが。
コップにつがれたままの獺祭。。
やっぱり本日の高松便は欠航
読みが当たって平和に読書で言うことなし。
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ペールブルーに淡く続く海とさびれた感じの港と新鮮な魚介類があるだけ。
海岸特有の透明な光が人々の姿を照らし出し、その影を幽霊みたいに透かす場所
セントマイケルズマウント
私たちはその町の孤独にからめとられ、つかまってしまったみたいだった。
ニーハオとかアンニョンとかコニチハとか、あてずっぽうで子どもたちにさんざん声をかけられた。
くたびれてはいるけれど、心は自由になったような感じだった。
「~その固定観念に満ちた価値観をくつがえさないと」
九割の真実と、一割の逃げ、その逃げの部分がどうしても気になって、じくじくと膿んだ傷のように治らなくなった。
私は単純だから、そういうのにすぐしびれてしまう。自分を曲げない、曲げようがないっていうはひとつの才能だと思うのだ。
「そうかあ、ああいうのに弱いんだ。面白いもの好きなんだね。」
新しい家族に恵まれることもなく、多少老けて、思い出だけはいっぱいに抱え、気持ちは子どもみたいなあのときのままで。
『いくら楽しく過ごしても何も残らず、ほんとうには心が通わない淋しい人だ』
どうもイギリスの人たちは明るいところでお酒を飲むのが嫌いみたいだと思った。
こんなに暗くてはギネスなんて闇に溶けて見えなくなってしまうではないか。
「理由はないけど、どうしていいかわからないほど淋しいの。」
先の約束をひとつする度に、未来に小さな光がひとつ灯った。
夜の時間が、お酒の力でのびていくのがわかった。
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そのこってりさにけっこううんざりしていた
りさ?
(笑)
よしもとばなな
『どんぐり姉妹』★
私の名前はぐり子。姉の名前はどん子と言う。
とんでもない名前だと思うでしょう、私もそう思います。
この世には、意味なく存在するものはない。
でも深い意味があるってほどでもない。
サムゲタン
「結婚には興味ない、恋愛のはじめの頃だけが好きなの。だって、こんなときって、なにもしなくても幸せなんだもの。息しているだけでも楽しい。」
調べたらみんな蒸発しちゃう、この豊かな水が。この水をゆっくり一滴ずつためて、きれいな湖をつくるまでにかかる時間のほうが好き。
どんな人も、ちょっとくらいでいいから、子どものときの自分に会いにいけるといいのにな、と私は思った。
目を閉じると、窓からの光がまぶたの色でオレンジに見えた。生きてるってこれだけのこと、でもなんてすごいことなんだろう。
「韓国の夜道は、まだ夜がちゃんと夜なのです。暗くて、冷たい空気の中に氷の粒がたくさん入っているみたい。人々は白い息をはき、楽しいときは楽しい、いやなときはいやだという顔をちゃんとしている気がする。いい人はいい顔、悪い人はずるい顔をちゃんとはっきりしています。」
「韓国にいると命がぐっと自分に近い気がする。」
あんなに空が青いなんて。心細くなるくらいに。
「飽きたくないのに。」
こんな世界で暮らせたらいいのに、そう思うから大人は絵本を描き続けるのだろう。
夢の中にまた夢があり、目が覚めると新しくまた夢が始まった。
夢というものは自由すぎて、時々わけがわからない。
やちむんの里
マルタン・マルジェラ