村上春樹
『一人称単数』★★★
2020年7月20日 第1刷発行
2020年7月30日 第2刷発行
あんなに読み込んでいた春樹に興味がなくなり・・
(ただノモンハン事件の書籍を手に取った時に思い出すきっかけに)
--------(抜粋)
6年ぶりに放たれる、8作からなる短篇小説集
「一人称単数」とは世界のひとかけらを切り取る「単眼」のことだ。しかしその切り口が増えていけばいくほど、「単眼」はきりなく絡み合った「複眼」となる。そしてそこでは、私はもう私でなくなり、僕はもう僕でなくなっていく。そして、そう、あなたはもうあなたでなくなっていく。そこで何が起こり、何が起こらなかったのか?
「一人称単数」の世界にようこそ。
収録作
「石のまくらに」「クリーム」「チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァ」「ウィズ・ザ・ビートルズ With the Beatles」「『ヤクルト・スワローズ詩集』」「謝肉祭(Carnaval)」「品川猿の告白」(以上、「文學界」に随時発表)「一人称単数」(書き下ろし)
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・石のまくらに
ずいぶんとクドイ文体になったな・・
補足が多くて、そこは言わずとも分かるし伝わるけどって箇所が目に付く。
細かいニュアンスまで記しておきたいってこと?
やはり年齢的なこともあるのかな?
惹かれる要素が年々減ってゆく。
セックスの描写も出尽くしてて、マンネリ
・クリーム
中心がいくつもあって、しかも外縁をもたない円
描写から何となくの予想は出来たけど、茫然と佇む主人公の姿が見える。
次の展開に何かしら相手からのアクションがあるかなと期待した部分もある。
ただこういうオチがない話でも意外と好きかも。
・チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァ
・ウィズ・ザ・ビートルズ With the Beatles
春樹「らしさ」を感じられる短編
そう音楽に関しては熱い気持ちを持っているから、生き生きしているし、
レコード屋さん巡りは知る人ぞ知る趣味でもあるから、こういうネタは尽きないだろうね。
ボサノヴァのレコードが本当に存在してたか否か、
ビートルズのレコードを持った少女が存在したか否か、
夢か現実か。
学生時代の記憶はどこか薄ぼんやりしてる中にも淡い光が差している。
自分も高校時代の恋愛を少し(少しね)思い出す。
純粋な恋心って心が温かくなるね。
さて村上春樹と言えば野球(ヤクルトスワローズファン!)
こちらの文体も生き生きしていて、惹き込まれる。
芝生に寝っ転がってビールを飲みつつ野球観戦なんて最高ですな。
・『ヤクルト・スワローズ詩集』
詩集!!??
何だか自伝になってますけど(笑)
人生経験がものを言うってヤツ
死ぬ前に過去のことを洗いざらい記しておこうって?それは言い過ぎ。
黒ビールの場面は印象的でお友達との会話の話題に。
今年は野球観戦したいなぁ(って言ってもドームの巨人戦だろうけど)
・謝肉祭(Carnaval)
『アンナ・カレーニナ』の引用が出て、通じることが心地よい。
どんどん読んでゆく内に馴染んでゆく。
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謎(エニグマ)に近い存在
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肌のひりひりとした痛み
悪の方程式
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ほんの些細な出来事でも、心の残ることがあって、同様に何かを思い出しそうになった。
抱えている爆弾
・品川猿の告白
群馬の鄙びた小さな旅館で言葉を話す猿に出逢うお話
それもお風呂場に現れる・・一番無防備な場面で出くわすって・・(笑)
やはり性欲の話が出る。これまた「らしい」
・一人称単数
標題の書き下ろし短編
女性の一声で雰囲気がガラッと様変わりして、胸が苦しくなる。
その負のオーラが一瞬にして伝わり身動きが取れなくなる。
言葉一つで世界が変わる。
最初の一編を読んだ時はどうなの?と思ったけど、村上春樹的読ませる自伝的短編集でした。
期待する小説世界がよきかな・・次作はどうくるか?