江國香織
『ヤモリ、カエル、シジミチョウ』★★
一度挫折し今回はじめから。
拓人
つづき
こんな場所に来るつもりではなかったのに、と。誰のせいにもできないことはわかっていた。
--------
また「こわっ」な出だしに(笑)
ひっかかかった素直さにちょっとキュン
--------
テレビ局でディレクター
心はいつも彼のそばにあるのだから、身体だけひき離しておくのは無理なのだ。
「そこに帰ってもいいかな」
「都築さん!」
(しゃべれ。さっきみたいにしゃべれ)
「ぴょっぴょ?」
「会いたいよ」
言葉は、苦もなく口から滑りでた。
「相手の言葉が信じられないなら、結婚なんてすべきじゃないと思うわ」
せかいはいつもいっぺんなのだ。
むらさきの花々はきれいすぎるほどきれいで、そのことがなぜか悲しく思えた。
ひともムシも“いる”ことがぜんぶなのだ。
「何を言ってほしいんだ?」
異物、と思う。夜に、戸外でのむのみものは川みたいだ。体内に流れ込む川。
植物たちはつながっているのだ。地球の裏側までも、もしかすると宇宙までも。だから彼らは安らかで、何の心配もしない。ここで枯れても、どこかで生え、風に揺れているのだ。自分の始まりが始まりではないし、自分の終わりが終わりではない。
大人には、言葉の重さが全然わかっていないのだ。
みんなはまくの外にいて、自分だけがまくの内側にいる。
(涼しいところに旅行に行かれたらいいでしょうね。どこだろう、アイスランドとか?)
「どういう意味?」
硬い声がでた。カップがソーサーにあたる音が、それに重なる。
「文字通りの意味よ」
母親はあっさりと言う。やわらかな声音で。
--------
忘れないように記しておこう。
二人がそれでよいならよいんじゃなぃ?
「普通は」とか「誰々は」とか
今度目を見て言ってみようたくとみたいにね。
これが最後のディトにはならなかった。
--------
そばにいない人間の言葉は信じられる。
(まあ、もともと人間が考えだした概念ですからね、時の流れというのは)
つたえる。つたわる。しゅんじに。からだぜんぶで。せかいそのものをとおして。
まちがえた、というきもちと、たしかめた、というきもちがりょうほうしたが、どちらも、しんせんでしたしみぶかい、そとのくうきのにおいをかぐとすぐにわすれてしまった。
この子は恋をしているのだ。だから何もこわくないのだ。
「あの人は恋愛が好きなの。あなたじゃなく、恋愛が好きなのよ」
結婚指輪というのは、夫婦で揃いのものを身につけるから意味があるのではないのだろうか。
「真雪」
--------
ちがう と思った。
驚いたけど冷静さはあって不思議だった。
その気がないのに 交番前でぐいっと引っ張られ「話がある」 ある種の満足
つないだ手のにぎる強弱
返信がなく、案外やり手はあっち?
--------
「平気な顔で帰ってくるのね」
「ふつう、浮気というには妻にばれたら終わりにするものなんじゃない?」
「それが、浮気の定義なのか?」
「定義が大事?」
「いや?ぜんぜん?」
「でも、もしそれが浮気の定義なら、俺は浮気はしたことがない」
「なおひどいわ」
恋愛には賞味期限があるのだから。