よしもとばなな
『どんぐり姉妹』★
私の名前はぐり子。姉の名前はどん子と言う。
とんでもない名前だと思うでしょう、私もそう思います。
この世には、意味なく存在するものはない。
でも深い意味があるってほどでもない。
サムゲタン
「結婚には興味ない、恋愛のはじめの頃だけが好きなの。だって、こんなときって、なにもしなくても幸せなんだもの。息しているだけでも楽しい。」
調べたらみんな蒸発しちゃう、この豊かな水が。この水をゆっくり一滴ずつためて、きれいな湖をつくるまでにかかる時間のほうが好き。
どんな人も、ちょっとくらいでいいから、子どものときの自分に会いにいけるといいのにな、と私は思った。
目を閉じると、窓からの光がまぶたの色でオレンジに見えた。生きてるってこれだけのこと、でもなんてすごいことなんだろう。
「韓国の夜道は、まだ夜がちゃんと夜なのです。暗くて、冷たい空気の中に氷の粒がたくさん入っているみたい。人々は白い息をはき、楽しいときは楽しい、いやなときはいやだという顔をちゃんとしている気がする。いい人はいい顔、悪い人はずるい顔をちゃんとはっきりしています。」
「韓国にいると命がぐっと自分に近い気がする。」
あんなに空が青いなんて。心細くなるくらいに。
「飽きたくないのに。」
こんな世界で暮らせたらいいのに、そう思うから大人は絵本を描き続けるのだろう。
夢の中にまた夢があり、目が覚めると新しくまた夢が始まった。
夢というものは自由すぎて、時々わけがわからない。
やちむんの里
マルタン・マルジェラ
トルストイ
望月哲男 訳
『アンナ・カレーニナ3』★★★
さて第三巻
快適読書が続く。
おもしろいことに、この作品を構成する239の章は、34のセグメント(=あるまとまったエピソードの単位)に分かれていて、しかもアンナのセグメントとリョーヴィンのセグメントがそれぞれ17という、いわばバランスのよい構造をなしているという。しかも隣接するセグメント同士はある種のテーマや事件(恋愛における裏切り、過去への回帰、病気、死など)を共有する別の単位を構成している。さらに各部ごとの物語も一定のまとまったテーマ性を持っていて、
たとえば作品の
第一部は「混乱」
第二部は「転進」
第三部は「計画」
第四部は「結合」
第五部は「新婚」
第六部は「田舎」
第七部は「結末」
第八部は「未来」
といった潜在的なテーマにささげられているという。
(第三巻は「新婚」と「田舎」)
ただ単純に読み進めるじゃなくそういった構成原理を見るのもまた+
「パートナーを持つ存在は持たぬ存在よりも生活速度が速い」
「罪(意識)を背負う者は充実した長い生を享受できずに、早く人生の結末に到着してしまう」
不安な気持ちも杞憂に終わった。
どーーーんと構えていればよいんじゃない?(笑)
うちらは変わらないよ。
椎名誠
『酔うために地球はぐるぐるまわってる』★★★★
たまには新刊を。
酒飲みは一日にしてならず。
うむ。その通り。
ビール飲みつつ読む2 休日それも土曜なのが最高
何と240冊の本を書いていて唯一「サケだけの本」だって(笑)
それもいつも沢野さんのイラストなのに誰の絵だろう?
なんと椎名さんの絵だった!それも下書きなしなのがよい。
はじまりは乾杯
人生では酒にたすけられる瞬間というものがある。
サケは高地になると酔いがより深くなる。早い話、いくら気密化されているといっても飛行機で飲むとやたら短時間でいい気持ちになって寝てしまう。
ひとむかし前の日本の納豆屋さんのようなもので、ドイツは朝にできたてのビールを飲む人がけっこういる。
ドイツ人は外国人がビールを飲んでいるのを見ると、みんなものすごく嬉しくなるらしい。
フランス統治の長かったベトナムはこのフランスパンがたいへんうまい。このパンの真ん中を裂いてコブラの唐揚げとハーブみたいなものをはさみベトナムソースをかけると「コブラサンド」の出来上がり。
シングルモルトウイスキーの本場でやる水割りは、グラスのウイスキーの十分の一ぐらいの水を加える程度である。
「お静かに。ウイスキーが眠っています」
ザ・マッカランはスペイン産のシェリー樽を使って貯蔵している。
ボウモアを牡蠣に垂らす。牡蠣の塩味とボウモアのスモーキーな香りが絶妙に相まって、激旨となる。
正しいモルトの飲み方
「まずグラスをかざして色を見ます。光を通して金色に輝いて見えるでしょう。グラスをゆっくり円を描くように揺らすとモルトがグラスの内側に付着し静かに垂れてきます。ゆっくり垂れるほどよいモルトなのです。水を少し足して手でグラスに蓋をして混ぜます。そのとき立ち昇る香りを静かに嗅ぎます。それからひと口。飲むのではなく口の中で優しく噛むように……」
伽羅の香り
「わたしらは、神社仏閣の香りといいます」
家に帰ると犬が「くふくふ」笑った。
サウナの中は退屈なので腕をのばして汗が出てくるところを眺めていたら、汗というのはいきなり「ぷくん」ととび出してくるのですね。「あついあついあついもうだめだぷくん!」
ぼくはSF小説をかなり書いているのだが、未来の先進科学医療をもっと進めてもらって、やがていつか取り外し自由の「イブクロ」が開発されているシアワセの未来の話を何度か書いた。
二日酔いの日は体の中のイブクロをそっくり取り外し、キンチャクを裏返すようにして胃の内側のサケで爛れた胃壁を冷たい水で丁寧によく洗い、二時間ほど「陰干し」してからまた体内に戻す。爛れきった胃は廃棄し、フレッシュスペアイブクロ「無敵」なんていうのに入れ替えることもできるようにしていただきたい。
「その土地のサケはその土地で飲むべし」
気持ち丸分かり!
お酒を好きな分だけ美味しく飲めて幸せ♥♥♥
明日は早朝から九十九里 波乗りちゃん。
吉本隆明×吉本ばなな
無題(なのがよい)★★★
どうしても惹かれてしまっていつも気になってしまう本
父の記憶、娘の記憶。
ばなな「でも私もよく人から『何でそんなことで急に深刻になるの?』とか言われるから、そういうのが何かしら遺伝してるのかもしれない――遺伝っていうか家族の雰囲気から伝わってきてるのかもしれませんね」
隆明 「一生に一度ぐらいはねぇ、『あっ、この人だ』っていう人に必ず会うからね、会うと思うからそんなに焦ることも何もないよとかね、心配することもないよっていうのが僕の考え方で(笑)。」
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父は評論家、娘は小説家。
ばなな「結局人間が書くものは人間そのものにはかなわない――かなわないっていうか描写はできないと思うから。
隆明 「あのねえ、おれの感想はねえ、君の作品のひとつの特徴は、人間を書いているわけじゃなくてね、ひとつの“場”を書いていると思うのね」
ばなな「おおっ、ためになるからこの部分はぜひ保存していて下さい」
隆明 「じぶんで一番いい作品だと思うのは何?『アムリタ』?」
ばなな「いや、それは絶っ対にないです。『アムリタ』はもう、はじめから書き直したい。思い入れで言ったら『N・P』が一番思い入れが深いかなぁ」
『哀しい予感』『新婚さん』『TUGUMI』
『白河夜船』
隆明 「あと君の作品の特徴として言えることは、たやすく登場人物を殺すことだね」
ばなな「最近はそんなことしない。最近は少ないと思う(笑)」
ばなな「やはり死そのものよりも心が癒されてゆく過程を描くことに興味があるんだと思う」
ばなな「音楽はみんなで聴くとかという楽しみもあるしいろんな形があるけど、映画とか小説は一対一のものだと思うから、より深く入っていきやすい」
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吉本家の子どもとして生まれて。
「書きたいものを書きたいバランスで書いて、それで読む人がいればいいやっていうか、うん、いまんとこそいういうとこに落ち着いてるなあ。なんかそうやってるうちにうっかりなんかすごいものが書けちゃうんじゃないかっていう期待だけをこう、じぶんの中に温め続けながら書いていくのが大事かなと」