小川洋子
『完璧な病室』★★★
初期も初期な作品を収めた短編集
(『完璧な病室』単行本1989年9月、『冷めない紅茶』単行本1990年8月を再編集)
--------(抜粋)
弟はいつでも、この完璧な土曜日の記憶の中にいる―—病に冒された弟との日々を描く表題作、
海燕新人文学賞受賞のデビュー作「揚羽蝶が壊れる時」に、
第二短篇集「冷めない紅茶」を加えた、かぎりなく透明で瑞々しい最初期の四短篇
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・完璧な病室 ★★★★
主人公と弟との邂逅
いきなりその母親が銀行強盗に巻き込まれ射殺されるという、
静かな物語の中に突出してくるかのように、違和感
現実とはそういうこと?
ラスト・・思わず声が出てしまった!・・(^▽^;)ドキッ
・揚羽蝶が壊れる時 海燕新人文学賞受賞作
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彼は絶対に自分から食べることを提案しない。以前、空腹を快感にかえて更にそれをエネルギーにするんだ、と言っていた。
「彼女とわたしたちと、どっちが本当の現実なの?」
他人の舌はいつでもバターのようにしなやかだ。
「それは誰にも決められない。」
彼の声が鼻孔にバターの香りを運ぶ。
彼は繰り返し繰り返し、わたしを輪切りにする。
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正常と異常、真実と幻想
発語と沈黙
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わたしは裏返しになっている。内側がなくなっている。わたし自身とあの内側と、どちらが本当の現実なんだろう。
―—どっちの“僕‘’を信じようと、僕の自由なんだ。
―—彼のことばを繰り返してみる。あなたはどこまで成長するつもりなの?
わたしはいつでも彼に反対しない。
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・冷めない紅茶
睡魔・・
・ダイヴィング・プール
孤児院が舞台(・完璧な病室も先生の実家が孤児院だった・・繋がってる?)
内に秘めた残酷性 それをどう上手くコントロールし付き合ってゆくか。
先日読んだ角田光代もそうだけど、プールの描写は揺らめく水面が浮かんで静謐な気持ちにさせられる。
今回は飛び込みをするから室内プールで、天窓からの光に包まれた飛び込み台と塩素の匂いが漂う様
水泳選手の引き締まった裸体
確かに抱きしめてもらいたいと思わなくもない。
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「気づいてたんだ、前から。君がしてたこと」
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小川洋子と言えば『博士の愛した数式』です。
映画から入ったけど、何度観ても染みるのよね。
寺尾さんも深津絵里も、そしてルートもよい味出してる。