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K

2014-12-28 | 作家別諸々(か行)



鹿島田真希
『ゼロの王国』★★


結構厚めなハードカバー
持ち応えがある。
見た目だけでもこれからどんな物語が始まるかワク2する感じ。
ネバーエンディングストーリー的な。

しかし内容は、、、

会話で成り立つ物語



「恋というものはそういうものなのよ。男か女、どちらかが激しく傷つくものなのよ。」



「見返りを気にしていたら、生きてはいけないではないですか。」



「多くの人を愛すると、そのぶん一人に対する愛情が薄まってしまうとお考えなのでしょう。男というものは特にそういうことを考えてしまいがちですね。なにしろ男という生き物は、表面には出さないものの、本当は実に嫉妬深く、独占欲の強い生き物ですからね。」



「あなたは短所ばかりの人間なんていないと思っているのでしょう?確かにそれはあなたの考えている通りかもしれないけれどもねえ。じゃあ仮に短所ばかりの人間がいるとしましょうか。それも女と限定してみましょう。そういう女は男にたいそう愛されるでしょうよ。私を尊敬しているだなんて!私はそういう理由で男の人に愛されたことはないわ。私はいつも短所ばかりの女として、男に愛されてきたわ。君の太ももは大変たくましい。鎖骨の発達ぶりも異常だ。昔はさほど美しいとは思わなかった。それから君は馬鹿だ。愚痴ばかり言っていないで、たまにはモンテーニュの『エセー』でも読みたまえ。こんな具合にね。だから君を抱いてあげよう。もっと汚らわしくしてあげよう。そうやって私は娼婦のように抱かれてきたのよ。どうして男は美しくもなく、馬鹿な女を抱きたいと思うのかしら。愛というものはなんて理不尽でいびつなのでしょう。
ある時私は読んだわ。モンテーニュの『エセー』を。はじからはじまで。暗記するほどなんども。悔しくて別れることもできなかった。丁寧に研究して、ある時語ったわ。『エセー』について。彼は私の乳房に触れてこう言ったわ。ねえ、もう難しい話はやめようよ。と。抱き合おうという意味だったのよ。私はそのことに気づいた。そしてその愛の理不尽さが怖くなった。決してその男と抱き合ってはならないと思ったのよ。だから私はある時言ったのよ、私の体はとても不潔です、と。そんなこと、と男は目を爛々と耀かせて言ったわ。そんなこと、それなら僕が食べてあげるよ、と。だから風呂にも入らなくてもいい、と。僕だって性器の皮がぽろぽろ剥けるんだよ、とその男は言ったわ。とにかく私は恐ろしかったわ。その男の屈折した性欲が。とにかく、焦る必要はないわ、と私は言った。とてもいやらしい声で。抱かれるためではなく、性交を拒否するために私はいやらしく、したたかになっていったの。僕は焦ってなんかいない、とその男は言ったわ。例え三ヵ月後でもいい、と」



冷笑する人には知的な人が多いといわれている。確かに、冷笑する人には、人生というものを真剣に考え、その考えを出すために、さまざまな本を読んで深い教養を身につけた人が多いのだろうと考えられる。シニカルになるためには、それなりの努力が必要というわけだ。しかしシニカルな人が忘れがちなのは、その根拠というものが、所詮人間が作ったものであるということだ。シニカルな人は、人間が作った根拠を第一であると考え、それを超越する存在があるかもしれない、という可能性を考えない。そうやってよくよく考えてみると、シニカルな人というのは、人間の作ったものをそんなにも信仰できるのだから、楽観的な人種なのではないか、とも考えられる。



「恋愛も、け、権力闘争だということが。とても小さな規模の。どちらが主人で、どちらが奴隷かという戦いなのですよ。だけどそれは単なる単純な権力闘争ではありません。支配の快楽、これは誰でも知っています。だけど奴隷の屈辱の快楽。これがあるんですよ。だから、誰しもが主人になりたいと思っているわけではない、進んで奴隷になろうとする人がいるのですね。」



「人は、ものを所有していると、それに縛られてしまいますからね。財産を持っていると、それがいつなくなってしまうか、気をもんでいなければなりません。そして、人はものに束縛されてしまいます。ものを捨てるというのは、自身を解放する行為だと思っています。」


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