歩く・見る・食べる・そして少し考える・・・

近所を歩く、遠くの町を歩く、見たこと食べたこと、感じたことを思いつくままに・・・。おじさんのひとりごと

浅草橋立体駐車場の「桂文楽」

2006年11月12日 | 昔の思い出

以前、東京に行ったときのことです。

上野駅で降り、墨田川を目指し浅草橋に向かいました。
この辺りは、何回か歩いたことがあります。その時は黒塀に囲まれた料理屋、柳橋から望む両国橋の写真撮ってきました。



この時、浅草橋から川沿いに出る途中で、懐かしい建物を発見したのです。建物の裏は隅田川で住所は柳橋一丁目です。

入り口の『浅草橋産業会館』の文字を見て、三十七年前の記憶が蘇ったのです。

高校を卒業してすぐに入った会社での出来事です。その会社が作った立体駐車場がここにあるのです。

入社して間もなくの頃、先輩社員に連れられて、定期点検に来たときのことです。
駐車場入り口にある受付の部屋で、先輩が駐車場の操作盤を点検しているのを、傍らで見学していると、馴染み客と駐車場の係り員との世間話が耳に入ったのです。

その係り員の、切れのあるしゃべり方、言葉使い、声の響きが耳に心地よかったのです。
これが『江戸っ子の職人言葉』なのかと思いました。
名人の落語家が江戸っ子の職人を演じているように聞こえたのです。

その人は、五十代の後半で、頭は角刈り? だった気が? 雪駄履きだったのは間違いありません。つま先を浅く入れ、踵とが雪駄からはみ出ていたのを不思議に思った記憶があるのです。

駐車場の点検作業が終わったのが昼時だったので、雪駄履きの粋な係りの人に、近くに食事をする場所はないか聞いてみたのです。

その人が、

 『そこの路地を右に入った先に、小料理屋があるから、昼間は焼き魚とか刺身で、安く喰わしてくれるから、行ってみなよ、美人の女将さんがやっているから』

・・・・・・そんな内容でした。口調がとても「粋」でかっこよかったのです。
 
言われた店に行ってみました。店はカウンターとテーブル席が幾つかある小さな店で、和服姿の女将が一人でやっていました。
その時はかなりおばさんに見えたのですが、いま思うと四十代の前半位だったのでしょう。

髪型、化粧、着こなし、立ち振る舞い、言葉使い、すべてがこれまで見てきた女性とは違っていました。
さすが柳橋と思いました。きっと芸者として、最近までお座敷に出ていた人だと、かってに思い込んだのです。

今まで経験したことのない『花柳界』という『おとなの世界』の妖しい匂いを、ほんの一時、少しだけ嗅いだ気がしたのです。

入り口には「盛り塩」があり、店内は、綺麗に片づけられ、掃除 も行き届き、『小粋』な落ち着いた色調だった気がします。

作業服姿の自分が場違いのようで、落ち着かなかった記憶があります。
何を食べたのか、味はどうだったのか、他に客は居たのか、そういうことは思い出せません。

いまにして思うと、その時が、花柳界に一番接近したときでした。それ以来、今日までまったく縁がありません……。
 
もしかして、当時の店が有るかもしれないと思い、辺りを歩いたのですが、それらしい店は見つかりませんでした。

あの時の、駐車場にいた「おじさん」が、八代目桂文楽のような人だった気がしてきました。記憶の中に、想像が入り込んでしまったかもしれませんが・・・・・・。

落語が聞きたくなりました・・・・・・・・「黒門町の師匠」の話が。
ここはやっぱり、「愛宕山」ですかね。

テープを探そう・・・・・・・・。

コメント (3)
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