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近所を歩く、遠くの町を歩く、見たこと食べたこと、感じたことを思いつくままに・・・。おじさんのひとりごと

“原節子を何となく” その⑧ 東京物語は家族の崩壊ではなく変遷です!ねェ?小津さん!?

2011年06月16日 | 原節子

昨日の続きです。

本日も、『原節子 あるがままに生きて』(貴田庄著 朝日文庫 2010年10刷)を読みつつ、綴っています。

それで、昨日予告した『東京物語』なのですが、この作品は小津安二郎監督にとっても、原節子にとっても、誰が何と云っても、代表作なのです。世界の小津、世界の“東京物語”なのです。

です。がぁ~、しかし、その代表作、世界の“東京物語”に対して、このわたくしが、何と、不遜にも、大胆にも、一言、苦言?を呈すると云うか、疑問?を投げかけると云うか、イチャモンをつけると云うか・・・・・・。

それで、先ずは、小津監督自身が“東京物語”について、こんな風に、とても短く、

『親と子の成長を通じて、日本の家族制度がどう崩壊するかを描いてみたんだ。ぼくの映画の中ではメロドラマの傾向が一番強い作品です』(『キネマ旬報』小津安二郎〈人と芸術〉)

と、語っているのを、43章『東京物語』で見つけたのです。それで、問題なのは前段で“親と子の成長を通じて、日本の家族制度がどう崩壊するかを描いてみたんだ”の部分なのです。



テーマとしては、家族とか、親と子とか、夫婦とか、絆とか、老いとか、死とか、別れとか、そんなテーマを、戦後の経済成長の中で、移り変わっていく様を描いたとの解釈が、一般的だと思います。

問題は、小津が大上段に“日本の家族制度がどう崩壊するかを描いた”と云うところです。日本の“家族制度”は、『崩壊』したのでしようか?

尾道の地方公務員の一家は、長男は医者になり東京で開業、次男は戦死、三男は大阪で国鉄の職員、長女も東京で美容院を経営、次女だけが尾道で教師をしていて両親と同居。



5人兄妹は、成長して、両親の元には三女だけが残り、一家は“バラバラ”になる。老いた両親は子供達に逢いに東京に出て来る。しかし、子供達は生活に忙しく、両親を快く持てなすことはなく、次男の嫁だけが二人を、快く迎えてくれるのであった。

それで、これが家族制度の崩壊なの?と思うのです。子供が成長し、経済的に自立し、結婚し、子供をつくり、親となり一家を形成して行く、これは、家族制度の崩壊ではなく“変遷”であり、いつの時代でも、くり返されてきたことです。



“崩壊”ではなく、笠智衆と東山千栄子の作り上げた家族は役割を終えたのです。育てた子供達は、次世代の家族を作り、その子供達も、いつの日にか・・・、そんなくり返しなのです。



笠と東山の老いた両親からの視点から見ると、苦労して育てたのに、子供達の扱いが冷たく感じるかも知れませんが、子供達は自分達の新たな家族を作り上げる為に、それなりに苦労しているのです。

子供が親になると、両親の存在は、自分の子供よりも小さくなるのです。笠と東山も、自分達が若かった頃、両親達をどう扱ったのかと考えれば、それなりに判るのです。



他人である次男の嫁が、自分の子供達よりも、快く持てなしてくれたと“感じた”のは、それは、嫁と云う“他人を前提”としているからです。次男の嫁、原節子には子供もなく、家庭もありません。まぁ、新たに家庭をもっていたら訪れることはあり得ません。



そんな、ことで、東京物語で描かれていたは、日本の、戦争直後の、家族の、変遷であって、“日本の家族制度の崩壊”ではない!・・・・・・、と思うのです。

だからと云って、映画そのものの評価とは、とくに、関わりはありません。確かに、とても、しんみりで、ゆっくりで、じっくりで、哀れで、感動的で、すばらしい映画だと思います。

それと、驚いたのは、この東京物語の撮影に入る直前に、原節子の実の兄である、カメラマンの会田吉男が、原の主演で、義兄の熊谷久虎が監督した『白魚』の撮影中に、列車に轢かれて死亡していたのです。



そんな悲しみの中での撮影だったのです。この列車事故で兄を失ったことは、その後の引退に繫がる、理由の一つだとも云われているそうです。知りませんでした。

本日は、世間の評価を、監督の意図を、大胆不敵にも、否定してしまいました。でも、随分前に東京物語を観たあと、世間の評価を、見たり、聞いたり、読んだりして、何か!変!と、胸の奥で抱いていた疑問を、ココにこうして世間に表明して、スッキリしました。

まぁ、そんなことでした。

“原節子 あるがままに生きて”を、読みつつ、綴るのは、切りよく今週で終わる予定です。 

今日も、午前中はおふくろを、“痒い痒い”で、いつもの皮膚科への通院で、午後の更新となりました。

それでは、また明日。


コメント (2)
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