徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

インフルエンザ脳症、再襲来!

2025年01月15日 14時59分03秒 | 小児科診療
新型コロナ禍以降、最大級のインフルエンザ流行が猛威を振るっています。
それに伴い、子どものインフルエンザ脳症発生がニュースで流れるようになりました。
紹介する記事でも、地域基幹病院の小児科医師が、
脳炎・脳症の患者がこれほど多いシーズンは経験したことがない
とコメントしています。

診療経験のある私にとって、
「アッという間に命をさらわれる」
という印象の合併症です。
発熱後、1日のうちに進行して意識障害・けいれんが出てきます。
タミフルなどの抗インフルエンザ薬は間に合わないのです。

罹ってからではもう遅い、有効なのはワクチンだけです。

以前にも書きましたが、1990年代後半に多発した頃と今の状況が似ています。
その当時、インフルエンザ脳症を発症すると、
・3割は死亡
・3割は後遺症
・3割は助かる
とされていました。

あれから四半世紀が経過して医療が進み、
現在では死亡率1割未満、後遺症3割未満と改善していますが、
やはり恐い合併症です。


▢ インフル感染原因で子供らに「急性脳症」発症相次ぐ  幼児死亡例や重い後遺症  脳炎も注意
2025/1/11:産経新聞)より一部抜粋(下線は私が引きました);

全国で猛威をふるっている季節性インフルエンザだが、医療現場では感染が原因で「インフルエンザ脳症」などを発症する子供らが相次ぐ。・・・熱が下がった後も意味不明な言動が続くなど症状が悪化するケースもあるとされ、医師らは、迷わず医療機関を受診するよう促している。 

【ひと目でわかる】インフルエンザ脳症を疑って受診する目安 

 

静岡県静岡市の県立こども病院では、インフルエンザの流行に伴い、昨年12月中旬から、発熱してけいれんや意識障害での救急搬送が増加している。小児救急輪番日では一晩で4~5人が運ばれてくるとし、インフルエンザ脳症の症状の有無を慎重に評価する。 

▶ 基礎疾患なく
 小児感染症科の荘司貴代医長によると、運ばれてくる多くは短時間でけいれんが止まる「熱性けいれん」。だが、けいれん後に意識が戻らない、もしくはけいれんが続いて呼吸状態も不安定になる場合は中枢神経合併症を疑われ、緊急で処置が始まる。先月中旬から今月6日までに乳幼児3人がインフルエンザ脳症と診断され、うち幼児1人が死亡した。 幼児は生来健康で、ワクチンは未接種での初感染だった。ウイルスから体を守ろうと、免疫が過剰反応し、脳が急激にむくみ血液循環の悪化で脳の一部が壊死する「急性壊死性脳症」だった。インフルエンザ脳症の中でも重症で死亡率が高く、後遺症が出ることが多いという。 
 国立感染症研究所のまとめによると、昨シーズン(令和5~6年)のインフルエンザ脳症の患者数は189人(昨年10月8日まで)で、少なくとも8人が死亡。元~2年は患者が258人、死亡が16人だった。 荘司氏はインフルエンザで療養中に受診する目安として、
・けいれん
・意味不明な言動
・異様に興奮している
―といった神経症状などを挙げ、「インフルエンザでは高熱でうわごとを言う熱せん妄が出やすいが、解熱剤を使っても持続する場合は迷わず受診してほしい」とする。
 
▶ 通常診療に影響
 治療の緊急度が高いインフルエンザ脳症患者が急増している影響で、小児集中治療室(PICU)で神経機能を検査する脳 波計などの検査機器が占有され、通常の予定されている診療が難しくなってきているという。
 加えて、感染症の治癒過程でウイルスに免疫が過剰に反応するなどし、中枢神経に炎症が起きて歩行障害などが出る「急性散在性脳脊髄炎」などの脳炎の患者も多く、荘司氏は「脳炎・脳症の患者がこれほど多いシーズンは経験したことがない。機器もマンパワーも足りていない」と訴える。
 さらに、総合診療科の入院患者の半数がインフルエンザによる肺炎や喘息(ぜんそく)などの症状で、家庭内感染が目立ち、ほぼ全員がワクチン未接種だという。荘司氏は「多くの患者が入院しているが、ワクチンを接種した方の重症化はまれだ。チャンスがあればワクチンを打ってほしい」と話した。


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コロナ対策は効果があった?なかった?

2025年01月14日 15時27分55秒 | 小児科診療
こちらの動画で検証していました。
解説は愛知県立医大の清水宣明先生。
「飲食店の感染対策が解除されずにずっと続けてしまったのは罪深い」
とコメントしています。

▶ 手指のアルコール消毒は無意味だった。
・環境の表面などにウイルスがついていてそれを触ることによって、
 口や目に持っていって感染してしまうことは、
 まず確率的に考えられない。
・新型コロナウイルスが接触感染することは確率的に考えられない。
・常識的な手洗いや消毒はエチケット的によいと思うが、
 コロナに特化した過剰な消毒など必要なかった。

▶ パーティションは無意味だった。
・新型コロナ感染はパーティションやシールドでは止められない。
・新型コロナ感染は、最初「飛まつ感染」だと言われたが、
 その後さらに細かい粒子の「エアロゾル」による空気感染であることが判明した。
・エアロゾルはパーティションでは止められないこと、
 アクリル板が空気の流れが妨げられ、逆にウイルス滞留時間を長くした可能性が実験で明らかになった。

・・・パーティションは無意味だったと私も理解していますが、
手指のアルコール消毒はどうでしょう?

接触・飛沫感染する病原体に対する手指消毒は感染対策の基本です。
動画に登場する医師は、
「コロナは接触・飛まつ感染よりエアロゾル感染がメインである」
と言いたかったのかもしれません。

ここではマスクに言及していません。
マスクはエアロゾル〜空気感染対策として換気と共に最強です。
一般の方が使用している布マスクやサージカルマスク(不織布マスク)は目が粗いので限界がありますが、
それでも感染リスクを確実に下げてくれます。

私は小児科医として日々コロナやインフルエンザ患者と対峙していますが、
サージカルマスクを常用していても時に風邪をもらってしまいます。

私自身がコロナに感染してから、
サージカルマスクをN95マスクに変更しました。
それから数年、風邪を一回も引かずに診療を続けています。




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インフルエンザにかかる人・かからない人の違い

2025年01月11日 06時15分15秒 | 小児科診療
インフルエンザが猛威を振るっています。
12月中はA型が中心、年が明けてからはB型も出現。
おそらくこれから、学級閉鎖が相次ぐと思われます。

また、小児の重症例もニュースで報道されています。
私も昨年末、インフルエンザ脳症患者さんを救急車搬送しました。

その際、1990年代後半を思い出しました。
インフルエンザワクチン定期接種が中止され、
小児のインフルエンザ脳症、高齢者施設での死亡例が社会問題になりました。

今シーズンは、新型コロナ禍が一旦落ちついて感染対策が緩み、
インフルエンザワクチンに対する関心が低く接種率も低い・・・
1990年代後半の再来になるのではないかと懸念していましたが、
残念ながら予想が当たってしまいました。

さて巷には、
「何も対策をしていないけど、インフルエンザに罹ったことがない」
という人がたまにいます。

インフルエンザ患者さんをたくさん診療している医師も、
「なぜ罹らないんですか?」
と聞かれることも時々あります。

そんな謎に答える記事が目に留まりましたので、紹介します。

<ポイント>
・感染しても発症しない人。初期の免疫である“自然免疫”が強力な人。これは抗体を産生する“獲得免疫”とは異なる免疫能力である。
・“自然免疫”は基本的には持って生まれた生物多様性の一つ。後天的には、運動しながら規則正しい生活と良いタンパク質を摂ることで、ある程度日常から免疫力を上げていくということはあり得るが、それがウイルスを防御できるかどうかは別の問題。
・医師の養生法の例:『移動するたびに手を洗う』『診察ごとに飲み物を飲む』『海藻・きのこ等を食べて腸活する』『高速でぶくぶくうがい』

・・・風邪を引かない人は、持って生まれた“自然免疫”が強力である、という結論ですね。
よく通販やTV番組で「免疫力アップ」を謳った商品や健康法が紹介されますが、
まあ「やらないよりまし」くらいに捉えた方がよさそうです。

ちなみに私の感染予防法は、
・手指消毒:患者さんの触れる前後でアルコール消毒あるいは手洗いをしています。
・マスク:サージカルマスクを装着していたのにもかかわらずコロナに感染したので、それ以降はN95マスク(密閉して息が苦しくなる医療用マスク)を装着しています。変更してから数年間、1回も風邪を引いていません。

文中に受験生の対策や学校での感染対策も出てきますが、
皆さん、コロナ流行中の感染対策を思い出してください。
数年間、インフルエンザの流行はありませんでした。

あのくらい(生活に支障が出るくらい)感染対策を徹底すると、
インフルエンザには罹らないことを証明してくれました。
ただ、振り返ると無駄な対策(アクリル板、レストランでの手袋など)もありました。
今は、その教訓・エッセンスを活かす時です。


▢ 「インフルにかかる人・かからない人の違いは?」「医師はどう予防?」
〜インフルエンザの疑問を専門家に聞く【ひるおび】
2025/1/10:TBS NEWS)より一部抜粋(下線は私が引きました);
・・・
Q.  同じ予防をしていても、インフルエンザにかかる人とかからない人がいるのはなぜ ? 
A.  免疫力の強さやワクチンの有無、疲れや睡眠などの体調による。
 インフルエンザのウイルスは、口や鼻などから侵入し、喉の粘膜に定着します。このとき、免疫力が低いとウイルスが増殖して発症しますが、免疫力が高いと増殖せずに発症しないのです。 

恵俊彰:  家族で同じ環境で過ごしていても、パパはかかるけどママはかからないとかあるもんね。 この免疫力っていうのはどうやってわかるんですか?「元気」とは違うんですか? 
東邦大学 小林寅喆教授:  違いますね。
 発症しないというのは「自然免疫」という初期の免疫が非常に強いケースなんです。 後で抗体ができて免疫力が上がるのではなくて、最初から入ってきた病原体をうまく抑えることができる免疫を持っている人がいるんです。 
コメンテーター 眞鍋かをり:  それは普段の頑張りなんですか?それとも持って生まれた・・・ 
小林寅喆教授:  基本的には持って生まれた生物多様性の一つだと思います。 後天的には、多少度合いの問題ですけども、運動しながら規則正しい生活と良いタンパク質を摂ってというような形で、ある程度日常から免疫力を上げていくということはありますただそれがウイルスを防御できるかどうかはちょっと別の問題になってくる、難しい話です。 コメンテーター 眞鍋かをり:  かかりやすいからといって普段不摂生なんだって反省しなくてもいいんですね。よかった… 

Q.  毎日多くの患者を診察する医師は、どう予防している? 
・・・
東邦大学 小林寅喆教授 ⇒『移動するたびに手を洗う』 
ひなた在宅クリニック山王 田代和馬院長 ⇒『診察ごとに飲み物を飲む』 
いとう王子神谷内科外科クリニック 伊藤博道院長 ⇒『海藻・きのこ等を食べて腸活する』
すずらん歯科矯正歯科 照山裕子院長 ⇒『高速でぶくぶくうがい』 

小林寅喆教授:  手を洗うのはもう基本です。 流行期には、どこかを触るということはたくさん人が触れている場所に自分の手が触れるわけですから、やはり外へ出たときには必ず手を洗う。 基本的に手が鼻・口にいかなければいいので、一番のリスクは食事をするときには一番触れやすいので、そこはもう必ず手を洗う。それと人混みに行ったときには必ず手を洗うことです。 

田代和馬院長:  喉の粘膜を乾燥させてしまうと、そこが脆弱になって菌やウイルスが入ってきやすくなる可能性があります。 本当に僕らもしょっちゅう言われるんですよね。これだけ診ているのになんでかからないんだって。やっぱりプロは自分の身を守れてこそプロ。小林先生がおっしゃるように侵入経路を防ぐ基本的な対策をしています。 田代院長によると、「口の中が汚いとばい菌が増えてしまい、インフルエンザ後の肺炎のリスクが高まると言われている。口の中も綺麗に保つことは大切」。 そこで有効なのが、歯科医の照山院長も行う『高速ぶくぶくうがい(毒出しうがい)』です。 

≪毒出しうがいのやり方≫ 
〔1〕口に含んだ水を上の歯に向けて強く早くぶつけ、10回ぶつけたら水を吐き出す
〔2〕同じように下の歯、右の歯、左の歯にぶつけるようにうがいを行う。 
※口に含む水は30ml(ペットボトルの蓋2配分)程度 

Q.  ワクチンを接種したのに40℃の高熱が・・・ワクチンは意味がない? 
A.  インフルエンザ以外の風邪も同時にり患している可能性がある 

Q.  去年10月にワクチンを接種、まだ流行しているので2回目を受けたほうがいい? 
A.  基本的に1シーズン1回の接種でいい。
ワクチンの効果の期間を見ると、接種から1か月ぐらいで最も有効性が高くなり、そこからゆっくりと落ちていきます。大体5が月ぐらいが目安だということです。
小林寅喆教授:  3、4か月ぐらいから緩やかに落ちていきますので、インフルエンザの1シーズンは基本的には乗り越えられるだろうと。ですから、1と0という関係じゃなくて、どれぐらい残っているかによって防御効果を発揮するかを考えます。 

Q.  来週末に大学共通テスト 勉強する環境はどうすればいい? 
◆ 室温は20℃以上 
◆ ひざ掛けなどで体を冷やさない工夫をする 
◆ 加湿器などで湿度を50%以上にする 
◆ こまめな水分補給をする 
◆ あめなどでのどを潤す 

教育アドバイザー 清水章弘: 換気はどうですか? 
小林寅喆教授:  基本的には風邪、コロナ、呼吸器疾患全て、やはり換気は非常に重要ですので、ある程度の時間をあけて空気を入れ替えてまた暖かくして湿度を保つ。これは基本ですね。 
田代和馬院長:  やはり加湿をして、空気中のウイルス飛沫、ウイルスの塊に水分を含ませて重くして下に落とすとか、あるいは換気して外に流す。そうしたこまめな基本的な対策が受験生を守り、本番で十分実力を発揮していただくことにつながると思います。 

田代和馬院長に学校での感染対策を聞きました。 
◆ ワクチンの接種率を上げる 
◆ 休み時間に換気をする 
◆ 人混みではマスクを着用する 
◆ 体調が悪いときは無理して学校に行かない 
◆ 食事前・トイレの後は石鹸を使って手を洗う 
◆ 給食やお弁当は間隔を空けて食べる 

田代和馬院長:  一番重要なのは私はワクチンの接種率だと思っています。 やはり集団でインフルエンザが一番広がりやすいので、そこでの集団免疫を高めておけば感染拡大を防ぐのに効果的ですし、それこそお弁当の時間にわざわざ前を向いて食べる必要性も低くなっていくと思います。 発症を予防する効果ももちろんありますけど、重症化を予防したり感染拡大を抑える、そういった効果まで含めて行うのがワクチンですので。 
恵俊彰: 今からでも間に合うんですか? 
田代和馬院長: (免疫ができるまで)2週間ぐらいかかると言われています。 まだまだ流行る時期だと思いますので、今からでも打っていない方は打たれてもいいのかなと思います。
小林寅喆教授:  論文で、ウイルスはやっぱり高温多湿で早く死んでいくというデータがきちんと出ていますので、温度を上げながら湿度を高くするということが非常に重要なポイントです。 今おっしゃったように、ワクチンを打って、あとは環境を整えて乗り越えていくことがやはり大事な点だと思います。 
(ひるおび 2025年1月9日放送より)

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献体された遺体の前でピースサイン

2024年12月28日 07時02分04秒 | 小児科診療
という美容外科医師のSNS投稿写真が物議を醸しています。

その昔、私が医学生だった40年ほど前、
やはり解剖実習がありました。
厳かな雰囲気の中で粛々と行われた実習で、
笑いなどはありませんでした。

その頃、こんなニュースがありました。
別の大学ですが、遺体のある解剖実習教室に、
誰もいない夜、医学生が興味本位のガールフレンドを連れてきてそれを見せた、とのこと。
当然ながら、その医学生は退学処分となりました。

医師は人の裸や生死を扱う職業です。
そのため、高度の倫理観が要求されます。

あれから40年。
いつの時代でもそのような人はいるのですね。

問題となった女性医師を擁護する美容外科グループの院長のコメントが悲しい。
まるで自分が被害者のよう。

美容外科医は医師の間では、
手術の後の合併症に責任を持たないことで有名です。
自らの手術の不具合でつらい思いをさせた患者さんを他の医師に押しつけ、
自分は街へ繰り出してシャンパンタワーを楽しんでいた、というニュースを先日耳にしました。

どうなっているのでしょう?

そういえば、近隣の美容外科系の皮膚科医院で予防接種を受けたお子さんが、
接種当日夜に高熱を出したと当院を受診されました。
「発熱したことについて接種医はなんと言っているんですか?」
と聞くと、
「熱が出たら小児科へ行って、と言われました」
との返答。

無責任・・・呆れてしまいました。

美容外科系の意志がすべてこんな感じではないと思いますが、
レベルの低い情報ばかりが入ってきます。


▢ 高須克弥院長が警告発動!献体写真公開で謝罪の院長に「いい加減にしないとアメリカで…」
2024/12/24:日刊スポーツ)より一部抜粋(下線は私が引きました);
 高須クリニックの高須克弥院長(79)が24日、X(旧ツイッター)を更新。東京美容外科の統括院長を務める麻生泰氏が同院の女性外科医・黒田あいみ氏への処遇を説明した謝罪文に対し、異議を唱えた。 
 麻生氏はこの日、黒田氏の処遇についてXで言及し謝罪。「動機は善で、彼女に他意はありません」などとした上で、解雇することはできないと明言していた。その経緯説明の投稿に対し、「コミュニティーノート」が発動。誤解を招く可能性がある投稿に対して、ユーザーが協力して背景情報を提供できる機能で「あたかも米国ではご遺体の写真撮影やSNSアップが問題ないかのような誤解があります」などと注意喚起がなされていた。  高須氏は麻生氏の投稿を引用した上で「警告します。コミュニティノートを読みなさい。いい加減にしないとアメリカでみな処罰されるよ」と記述。そして「間違った情報を拡散するな!」と訴えた。
 高須氏は前日にも麻生氏や黒田氏に対し辛辣(しんらつ)な投稿を続けていた。「南無阿弥陀仏。 馬鹿医者め! クズ」「馬鹿医者ども(怒)」「怒」などと記述。さらに「僕の時代の医学部解剖実習での作法は、献体してくださった方に黙祷のあとお顔をしっかりと観察して記憶することでした」と書き出した上で「解剖学の中村為吉教授は『この方が君たちに人体を教えてくださる師匠だと記憶せよ』と諭されました。今になっても師匠が夢の中に出てきます」とつづった。 
 続けて麻生氏の「アメリカで解剖している事ですので、日本ともルールが異なります」との主張に対し「アメリカのルールは厳しいよ。医学生がSNSでこんなことやったら即退学だ」と反論していた。  

▽麻生氏のX投稿全文 
 黒田医師への処遇について  様々な方々から、大学の先生を含め、黒田医師を解雇するように助言がございました。 
 確かに不適切な投稿はございましたが、黒田医師は東京美容外科の方針に従って、より患者さんに対して安全な治療を学ぶためにグアム解剖に参加されました。 
 昨今の美容外科では、顎下脂肪吸引など、死亡事故が頻発し、私共も解剖の必要性を痛感し、このような機会を設けました。 
 黒田先生は、学生時代のホルマリン固定標本とは異なる、精度の高いfresh cadaverを初めて目にした感動をなんとか伝えようと、あのような投稿になってしまいました。ピースサインをして撮っていた事は当然不適切であると考えます。 
 もちろん一般の方々とはかけ離れた行動で、日本では、常軌を逸しているとお思いの方が大多数であることは良くわかります。 
 ですが、動機は善で、彼女に他意はありません。 
 一般の方々からのご批判は、当然受け止め、反省は致しますが、同業医師でありながら不勉強でfresh cadaverという言葉すら知らない医師に批判されたまま、炎上でトカゲの尻尾切りのように解雇する事はできないと判断しました。 
 もし自分が手術を受けるなら、医師になってからも更に研鑽を詰み、解剖を熟知した医師に施術して貰いたいと考えます。 
 現に私は自分のフェイスリフトは私が何度か開催した解剖セミナーで講師をしてくださった解剖を熟知したドクターにお任せしました。  このような不祥事で我々が患者様から選ばれる事は、もうないかもしれませんが、解剖セミナーを実施した事やこれから勉強しようとしている先生達を守る事がより良い未来に繋がると考えています。 
 この騒動で我々のクリニックを去る専門医の先生もいらっしゃいますし、それは考え方の違いであるし、仕方の無い事だと理解しています。 
 あの投稿のせいで献体を躊躇ったりやめる人がいるとのご指摘ですが、お金儲けの美容医療のために献体はしたくないという人達が大多数であるという事もわかります。 
 今回の事で、国内の施設で我々が、解剖する事は今後絶望的となってしまいましたし、他の美容医療に携わる方にも大変迷惑をかけてしまいました。 
 医学会全体を巻き込む事態にもなってしまいました。 
 ですが、死者への尊厳ももちろん大切ですが、今生きている人の命や安全も大切なんじゃないでしょうか? それが解剖セミナーの趣旨ですし、どんな言い訳や神妙な態度をとったところでご遺体を損壊する事実に変わりありません
  故人に感謝しながらも、その知見を今後の患者さんに活かしたいと思います。 
 海外のfresh cadaverのセミナーでは割とフランクに記念撮影もしますし、セミナーの様子もネット上に出てきます。 
 日本と海外のルールの違いはあるかと思いますが、日本の医療の進歩を妨げているのはどちらの方なのか今一度考えて頂きたく思います。 
 今回は私の指導力不足と管理監督不足で世間をお騒がせして大変申し訳ありませんでした。

ちなみに、日本の美容医学会の重鎮(?)である高須医師は、
病気なのはほんの一部の真性包茎(包皮口が狭くて亀頭が露出できない)で、
包皮反転して亀頭が露出できる「仮性包茎」は日本人の8割を占め、
“ふつう”ですから心配ありません。
ミケランジェロの彫刻“ダビデ像“も包茎ですよ。

・・・話が脱線しました。

さて、上記麻生氏のX投稿について別の医師がコメントした記事も紹介します。

▢ 46歳医師兼小説家「被害者のように本気で思っている、恐ろしい」献体公開で謝罪の院長をバッサリ
2024/12/24:日刊スポーツ)より一部抜粋(下線は私が引きました);
 小説家で医師の知念実希人氏(46)が24日、自身のX(旧ツイッター)を更新。東京美容外科の統括院長を務める麻生泰氏が同院の女性外科医・黒田あいみ氏への処遇を説明した謝罪文に対し、疑問を呈した。 
 黒田氏はグアムでの解剖研修の写真を公開し「いざ Fresh cadaver(新鮮なご遺体)解剖しに行きます!」「頭部がたくさんあるよ」などとSNSに投稿。献体された死体の一部にはモザイクがかかっていなかった。ネット上の騒動を受け、女性外科医は当該投稿を23日までに削除し、自身のブログに謝罪文を掲載した。 
 麻生氏はこの日、黒田氏の処遇についてXで言及。「動機は善で、彼女に他意はありません」とした上で、解雇することはできないと明言していた。 
 知念氏は「未だに何が問題だったのかを全く理解できていないで、あたかも自分たちが理不尽な批判を受けている被害者のように本気で思っていることが本当に恐ろしい……」と書き出し、麻生氏の謝罪文についてそれぞれ自身の見解を示した。 
 麻生氏が記した「死者への尊厳も大切ですが、今生きている人の命や安全も大切なんじゃないでしょうか?」に対し「死者への尊厳と、生きている方への命や安全はトレードオフするものではありません。患者さんに還元するから、亡くなった方への尊厳を毀損していいわけがありません」と指摘した。  
 「海外のセミナーでは割とフランクに記念写真もしますし、セミナーの様子もネット上に出ています」の一文には「あげている記念写真は解剖室で撮っているというだけで、遺体がある状態で撮ったものではありません。また、他の写真は真剣に参加者が解剖している様子をオフィシャルに撮影したものです。ご遺体を個人のSNSに上げ、インスタ映えの道具に使ったり、ご遺体を前にピースサインをして集合写真を撮るなどの、言語道断の行為とは根本的に異なります」とつづった。 
 さらに「日本の医療の進歩を妨げているのはどちらの方なのか今一度考えて頂きたく思います」には「どう考えても、医療倫理に反するあまりにも非常識な行動をとった貴方がたです。なぜ、自分たちが非難されているか分からないなら、医療をする資格がありません」と締めくくった。 
・・・
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生肉は危険!…をちょっと詳しく。

2024年12月15日 07時18分20秒 | 小児科診療
「生肉は食中毒の可能性があるから危険!」とTVでよく耳にします。
それが生肉全部なのか、動物の種類による一部なのか、
あまり記憶に残りません。

わたし的には、生で食べる習慣のない豚肉はおそらくリスクが高いのではないか、
レア(半生)で食べることもある、馬(馬刺し)と牛(レアのステーキ)
はリスクが低いのかな?となんとなく思っています。
鶏肉はどうなんだろう?
鳥刺しという言葉はあるけど、あまり一般的ではありませんね(食べたことがありません)。

この辺の事情を解説した記事が目に留まりましたので紹介します。

<ポイント>
・肉の生食が危険なのは、鮮度だけの問題ではなく、ウイルスや細菌、寄生虫に汚染されていることが多く、健康に重大な影響を与えるリスクが高いから。例えば、肉類はE型肝炎ウイルス、腸管出血性大腸菌、除去することが難しい寄生虫やカンピロバクターに汚染されている。
豚肉は、寄生虫やE型肝炎ウイルスに汚染されていることが広く知られているので、生食できないのは常識。生での提供が想定されていないため、法律でも禁止されてもいない。
馬肉はO157などの腸管出血性大腸菌による汚染がほとんどないため、獣肉としては例外的に生レバーの販売が許可されている。調理器具の加熱消毒や肉表面のトリミング、寄生虫であるサルコシスティス・フェアリーを死滅させるための-20℃以下で48時間以上の凍結などの厳しい基準をクリアしたものだけが生食用として販売可能。
牛肉には腸管出血性大腸菌などの病原性大腸菌が常在菌として存在するため、生レバーを食べることはできない。一方で寄生虫のリスクは低いため、衛生的な処理をした生食用牛肉は冷凍せずに食べることが可能。ただし、衛生的な処理をした生食用の牛肉であっても、食中毒の危険性があるので、小さな子どもや高齢者には食べさせない。
鶏肉はカンピロバクターという細菌に汚染されていることが多いもの。近年、鶏の生食による食中毒が増加したことにより、厚生労働省は注意を呼びかけている。鶏の内臓肉は、どの産地のものであろうとも生で食べないように。
猪肉鹿肉熊肉などのジビエ等は、さまざまな寄生虫やE型肝炎ウイルス、腸管出血性大腸菌などに汚染されている確率が高いので、どの部位でも絶対に生食しないように。
・基本的に肉は生で食べるものではない。火の通った肉は、刺し身のような透明感のある状態にはならない。肉による食中毒を防ぐためには、一部の「生食用」以外の肉はしっかり加熱することが何より重要。

うん、やはり豚肉は危険なのですね。
鶏肉はグレーゾーン…
まあ、どんな肉でも生で食べるのはゼロリスクではないので、食べないのが無難。


▢ なぜ生肉の食中毒が後を絶たないのか…管理栄養士が教える「絶対生はダメな肉vs.低リスクな肉と店」の特徴ゼロリスクはないが低リスクなものならある
成田 崇信:管理栄養士、健康科学修士
PRESIDENT Online:2024.12.13)より一部抜粋(下線は私が引きました);

生肉による食中毒が相次いでいる。どうしたら安全に食べられるのだろうか。管理栄養士の成田崇信さんは「基本的に肉は生で食べるものではないが、比較的安全だといえるものもいくつかはある」という――。
・・・
▶ 肉の生食による食中毒事件
2011年、ある焼肉チェーン店において、牛の生肉の「ユッケ」などを食べた人やその家族に腸管出血性大腸菌による食中毒が発生したのを覚えているでしょうか。富山、福井、石川、神奈川の4県6店舗で合計181人が食中毒を発症するという大規模な事件で、残念なことに5人もの方が亡くなりました。・・・
この事件をきっかけに「食品衛生法」が改正され、牛レバーや生食に適さない牛肉の生のままでの提供が禁止されました。しかし、いまだに一部の飲食店では、生または加熱不十分な牛レバーが提供されていたり、たびたび牛の生肉による食中毒が報告されています。
今年8月には千葉県のハンバーグ店で、加熱不十分な「飲めるハンバーグ」を食べた人のうち34人が腸管出血性大腸菌が原因の食中毒になりました。最近では、提供自体には罰則のない鶏肉の刺身やレバーによる食中毒のニュースもよく見かけます。これまで何度も危険性が指摘されているにもかかわらず、どうして生肉による食中毒はなくならないのでしょうか。

▶ 鮮度のいい肉でも生食は危険
昔、日本には牛や鶏などの獣肉を生食する習慣はありませんでした。ところが、低温流通や冷凍技術の向上によって鮮度のよい肉が手に入りやすくなったことで、魚の刺身と同じように肉を生で提供する「ユッケ」や「レバ刺し」などの料理が出されるようになったのだろうと思います。
しかし、肉の生食は基本的にはおすすめできません。肉の生食が危険なのは、鮮度だけの問題ではなく、ウイルスや細菌、寄生虫に汚染されていることが多く、健康に重大な影響を与えるリスクが高いからです。例えば、肉類はE型肝炎ウイルス、腸管出血性大腸菌、除去することが難しい寄生虫やカンピロバクターに汚染されていることがわかっています。
特に豚肉は、寄生虫やE型肝炎ウイルスに汚染されていることが広く知られているので、生食できないのは常識です。生での提供が想定されていないため、法律でも禁止されてもいません。そのため牛の生レバーが禁止されると、代替品として豚の生レバーが提供されて問題になったこともありました。
これは肉の生食が急速に広まったこと、新鮮な肉であれば生で食べても大丈夫という根拠のない思い込みが招いた事例といえるでしょう。特にE型肝炎や腸管出血性大腸菌については、感染した人の糞便や嘔吐物を介し、他の人へも感染を広げることもあり、自己責任だけでは済まないという側面もあります。

▶ 比較的安全に食べられる生肉とは
では、生肉はどれも危険なのでしょうか。じつは、ある程度は安全に食べられるだろう生肉もあります。ただし、100%安全ということではありません。提供する側がルールを守っていれば、一般の消費者が食べてもまあ大丈夫だろうというレベルです。

生食用食肉の衛生基準を満たした馬肉および馬レバー
馬肉はO157などの腸管出血性大腸菌による汚染がほとんどないため、獣肉としては例外的に生レバーの販売が許可されています。
調理器具の加熱消毒や肉表面のトリミング、寄生虫であるサルコシスティス・フェアリーを死滅させるための-20℃以下で48時間以上の凍結などの厳しい基準をクリアしたものだけが生食用として販売可能です。ただし、冷凍処理を怠った肉が提供され、寄生虫による食中毒が発症した事例があります。きちんと冷凍処理がされていることを確認しましょう。

生食用食肉(牛肉)の規格基準を満たした牛肉
牛肉には腸管出血性大腸菌などの病原性大腸菌が常在菌として存在するため、生レバーを食べることはできません。一方で寄生虫のリスクは低いため、衛生的な処理をした生食用牛肉は冷凍せずに食べることが可能です。
ただし、衛生的な処理をした生食用の牛肉であっても、食中毒の危険性があるので、小さな子どもや高齢者には食べさせないようにしましょう。また、飲食店で提供する場合には店舗内のわかりやすい場所に食中毒のリスクがあることを表示する義務があります。国が安全だとお墨付きを与えているわけではないという理解が大切だといえます。

▶ 安全性グレーゾーンの「鳥刺し」
では、九州地方で伝統的に食べられている「鳥刺し」はどうでしょうか。じつは鶏肉はカンピロバクターという細菌に汚染されていることが多いもの。近年、鶏の生食による食中毒が増加したことにより、厚生労働省は注意を呼びかけています。安全とはいえないまでも比較的低リスクで食べられる鶏肉は、以下の基準を満たしたものだけだと私は考えます。
鹿児島県独自の衛生基準を遵守した鶏肉
鹿児島県では、屠畜から調理加工まで独自の厳しい基準を満たしたものだけを「生食用」として提供・販売することができるという取り組みを行っています。この独自の基準が、実際に食中毒予防に有効であるかどうかを評価するためには、鹿児島県内で発生した食中毒事例を確認する必要があります。厚生労働省の食中毒統計を調べたところ、過去10年間、生の鶏肉を食べたことによる食中毒の事例は一件も報告されていませんでした。鹿児島県の基準を満たした鶏肉については、安全とはいえないまでも、根拠なく危険と非難されるものでもないと筆者は考えています。しかし、同じく鶏の生食文化のある隣の宮崎県の食中毒統計を調べたところ、鶏の生食による食中毒事故は、2017年以降に5件の報告があり、安全とはいえない状況です。
独自基準を設定している鹿児島県でも、砂肝やレバーなどの生食は許可されていません。鶏の内臓肉は、どの産地のものであろうとも生で食べないようにしてください。
また、この他の猪肉や鹿肉、熊肉などのジビエ等は、さまざまな寄生虫やE型肝炎ウイルス、腸管出血性大腸菌などに汚染されている確率が高いので、どの部位でも絶対に生食しないようにしましょう。

▶ 生のような見た目や食感に要注意
最近では、調理の工夫によって、なるべく生のような食感や風味を再現しようとする取り組みもありますが、ここにも思わぬ落とし穴があります。
例えば、生に近い食感を残すため、十分な加熱がなされていないものを「低温調理肉」として提供している事例もあるので注意が必要です。鶏肉であれば、低温調理でも十分な加熱が行われた肉の断面はピンクがかった肉色は残ったとしても、透き通るような色合いやゼリーのような弾力ある食感は残りません。また、鰹のたたきのように加熱部分と生部分の明確な境目があるものは加熱が不十分である可能性が高いでしょう。他の種類でも同じですが、しっかり火の通った肉は、刺し身のような透明感のある状態にはならないのです。ニュースで話題になっている鰹のタタキのような断面の「レアチャーシュー」は明らかに危険です。
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最近、食肉加工業者が低温調理品として販売していた肉やレバーが、十分な加熱条件を満たしていなかったという報道がありました。これも生に近い食感を訴求するため行われていたものと考えられます。生のような見た目、食感でないかどうか十分な注意が必要です。

▶ 生食用以外はしっかりと加熱を
肉による食中毒を防ぐためには、一部の「生食用」以外の肉はしっかり加熱することが何より重要です。牛のかたまり肉でも、外側はしっかり焼くようにしましょう。また、細菌が入り込みやすい挽き肉は、よく焼く必要があります。
ただし、肉は70℃以上の熱が加わると、結合組織が収縮し、細胞内に含まれていた水分が旨味とともに流れ出し、そのまま熱を加え続けると食感もパサついてしまいがちです。低温でじっくり焼いたほうがジューシーに仕上がるでしょう。低温調理器具を使うという方法もありますが、先に述べたように中まで火が通っていないと危険なので気をつけてください。飲食店で提供された料理の肉が生焼けだったり、透明感のあるピンク色が残っている場合には、焼き直しをお願いするのがいいでしょう。
最後に、基本的に肉は生で食べるものではありません。生で食べる場合は、より品質の保持に気を配る必要があり、外側を大きくカットするなどの余分な手間やコストがかかるため、通常よりも高い値段で提供されて当然です。安価で販売されていたり、店内に認証などの表示がなかったりする場合は危険だと考えてください。また、いずれにしても生肉を食べる以上、食中毒のリスクはあるということを知っておきましょう。


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