伝染性紅斑は、ヒトパルボウイルスB19を病原体とする、小児中心の流行性発疹性疾患だ。頬に蝶翼状の紅斑が出現してリンゴのように赤くなることから「リンゴ病」とも呼ばれる。頬以外にも手足や胸腹背部に発疹が表れることもある。1週間前後でこれらの発疹は消失するが、症状が長期化したり、一度消えた発疹が短期間のうちに再発したりするケースが見られる。成人の場合は頬の発疹症状は少ない一方で、関節痛をはじめとする全身痛を訴えるのが特徴だ。
主な感染経路は飛沫感染や接触感染で、頬の発疹が出現する7〜10日ほど前に微熱や感冒様症状などの前駆症状が見られ、この時期にウイルスの排泄量が最も多くなる。一方で、成人が伝染性紅斑にかかったときは症状による判断が難しいため、伝染性紅斑患者との接触の有無や職業などの問診に加え、血中のIgG(保険未収載)、IgMの測定により感染を判定する。日本産婦人科感染症学会の文書では、IgMが陽性の妊婦の場合、最近初めて感染した可能性があるため、抗体検査や超音波検査を受けることを勧めている。
また同学会は文書で、日本人妊婦におけるヒトパルボウイルスB19の抗体保有率は20〜50%であり、妊婦が初めて感染した場合、6%で流死産や子宮内胎児死亡を、4%で胎児貧血や胎児水腫を引き起こす可能性があると説明。妊娠後期よりも妊娠初期の感染が、これらのリスクを高めることから、こまめな手洗いやうがい、マスクの使用などで感染を防ぐよう呼びかけている。
厚生労働省も12月6日に医療機関や自治体に向けて、伝染性紅斑の増加に注意喚起に関する事務連絡を公開している。
【参考】
・妊婦さんはパルボウイルスB19によるリンゴ病(伝染性紅斑)に注意しましょう(日本産婦人科感染症学会)
・パルボウイルスB19によるリンゴ病(伝染性紅斑)はお腹の赤ちゃんに影響することがあります(日本産科婦人科学会)
・伝染性紅斑の増加に伴う注意喚起について(厚労省)