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徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

イヌを飼うと乳児のアレルギーを予防できる? ~キーワードは「腸内細菌叢」

2014年01月10日 06時20分59秒 | 小児科診療
 しばらく前からアレルギー学会では「衛生仮説」「乳児期のペット飼育はアレルギー罹患率を減少させる可能性がある」などの説が話題になっています。
 ”清潔すぎない生活環境の方が、アレルギー予防対策になるかも知れない”という、逆説的な考え方です。
 その関連報告を。

イヌが乳児を喘息やアレルギーから守る?
(Healthday News:2014/01/09)
 イヌを飼う家庭で育った乳幼児は喘息やアレルギーを発症しにくく、その理由が「Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)」オンライン版で12月16日報告された。
 米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)とミシガン大学の研究グループのマウスを使った研究で、イヌを飼っている家から出たハウスダストに曝露すると、腸に生息する微生物群に変化が生じ、よくみられるアレルゲンに対する免疫系の反応が減少することが判明した。さらに、呼吸器感染症の原因となるアレルゲンやウイルスから気道を保護するうえで不可欠な特定の腸内細菌種を突き止めたことも報告されている。
 この知見はマウスで認められたものだが、研究グループは、これにより出生時からイヌがいる家庭で育った小児がアレルギーや喘息を発症しにくい理由を説明できる可能性が高いとしている。また今回の結果は、腸内の細菌群(微生物叢)の変化が体内の他の場所での免疫機能に影響を及ぼすことを示唆するものでもあると、研究共著者の1人であるUCSF胃腸科准教授のSusan Lynch氏は述べている。同氏らは現在、大規模多施設共同研究でヒト検体を用いてこの機序について検討しているという。
 Lynch氏によると、有益腸内細菌種を用いることでヒトの腸内微生物叢を再構築し、アレルギーや喘息の発症を予防し、さらにはすでに発症した症例を治療できる可能性があるという。「腸内微生物叢を操作することは、肺感染症やアレルギー性気道疾患から人々を保護する有望な新しい治療戦略となるものである」と、同氏は述べている。研究チームはこれまでに、イヌを屋内に出入りさせている家庭のハウスダストに含まれる細菌は多様性が高く、ヒトの消化管にみられるものと同じ細菌種が多いことを明らかにしている。
 ただし、乳幼児をもつ親が急いでイヌを買いに行くべきだということではない。今回の研究ではイヌとマウスの消化管の健康状態との間に関連が認められたが、因果関係は明らかにされていない。また、動物を用いた研究の結果は必ずしもヒトで再現できるとは限らない。
(原著)Fujimura KE, et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 2013 Dec 16. [Epub ahead of print]


 腸内細菌叢をターゲットにした医療を「プロバイオティクス」と呼びます。
 その腸内細菌叢を変化させることは決して難しいことではないという報告を;

腸内細菌叢は食事により1日で変化
(Healthday News:2014/01/06)
 ベジタリアンから肉食へ、あるいはその逆へ切り替えることにより、腸内細菌の組成が大きく変化する可能性を米デューク大学ゲノム科学・政策研究所助教授のLawrence David氏らが示唆した。David氏によると、食事の変更から1日以内に細菌の数や種類だけでなく、細菌が発現する遺伝子の種類やその活動にも変化がみられたという。
 ヒトの腸には何兆もの細菌が棲息しており、消化、免疫のほか、体重にも関与していると考えられている。今回の研究は、この細菌群とその遺伝子(微生物群ゲノムと呼ばれる)が非常に高い順応性をもち、やって来るものに対して素早く反応できることを示した。David氏は、「腸内微生物群ゲノムはわれわれが食べるものに対して非常に敏感であると考えられ、その時間尺度はこれまで考えられていた以上に短い」と述べる一方、それがヒトの健康にどのような意味をもつのかを正確に知ることは難しいとしている。
 今回の研究では、男性6人、女性4人(年齢は21~33歳)を対象とした。被験者は最初の数日間は通常の食事をし、その後5日間は、植物性食品または動物性食品のいずれかのみの食事に切り替え、その後は元の食事に戻った。動物性の食事では腸内細菌に最も大きな変化がみられ、22種の細菌の増殖が促進されたのに対し、植物性の食事では3種の細菌が増加するにとどまった。この変化が何を意味するのかは完全にはわかっていないが、動物性食品によって増殖したいくつかの細菌は脂肪の分解を助ける胆汁酸への耐性に優れたものだった。また、植物性食品により増加がみられたある種の細菌は、食物繊維の取り込みに敏感であると考えられている。被験者が実験食の摂取を中止した後、約1日で腸内細菌が元に戻ることも判明した。
 米テキサスA&M健康科学センター医学部教授のJeffrey Cirillo氏は、「食生活の著しい変化が腸内細菌叢に大きな影響を及ぼす可能性を示す確固たるエビデンスを得られたことは有益である」と述べるとともに、微生物叢が元に戻る速さも興味深いと指摘している。
 研究グループは、このような細菌の変化から、脂肪性の食事とクローン病や潰瘍性大腸炎に関連がみられる理由を説明できる可能性があるという考えを示しているが、確かな知見を得るにはさらに研究を重ねる必要がある。研究論文は、「Nature」オンライン版に12月11日掲載された。
(原著論文)David LA, et al. Nature. 2013 Dec 11. [Epub ahead of print]
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