なにかと話題のナッツアレルギー。
とくに現在進行形でクルミアレルギーが増加の一途を辿り、
ピーナッツアレルギーを追い抜いたことが、
アレルギー専門医の中で問題視されています。
ただ、ナッツアレルギーとひとくくりにすると、
“漠然とした怖さ”しかイメージされません。
ある程度整理して理解しておく必要があると思います。
たとえば、ピーナッツはナッツという名前がついていますが、
木の実ではなく豆に分類されるので、ナッツではありません。
また近年、ナッツのアレルゲン成分(コンポーネント)が詳しく分析されるようになり、
一つの食材に複数のアレルゲン・コンポーネントが含まれていることが知られるようになりました。
アレルゲン・コンポーネントにはアレルギー症状を起こしやすいモノ、起こしにくいモノなど、
様々なモノが存在します。
アレルゲン・コンポーネントのうちいくつかは、
保険診療で検査できるようになりました。
なので以前よりナッツアレルギーの検査が進歩したことになります。
それを反映した記事を紹介します。
▢ 木の実でアナフィラキシー、原因食物を確定する検査は?
(2023/06/19:ケアネット)より一部抜粋(下線は私が引きました);
【症例】2歳の男児。鶏卵アレルギーの既往があるが、現在は加熱卵4分の1個程度を摂取している。生まれて初めてクルミの入ったクッキーを食べ、15分後に口唇腫脹、顔から体幹に広がる紅斑、25分後に喘鳴と呼吸困難を生じたため救急外来を受診。アナフィラキシーとしてアドレナリン0.1mg筋肉注射、生食の点滴、抗ヒスタミン薬にて症状は消失し、念のために1泊入院した。
Q1.原因食物を確定するために有用な特異的IgE検査はどれか?
1.ω5-グリアジン
2.Ara h 2
3.Jug r 1
4.Ana o 3
A.正解は 3
小児における木の実類アレルギーは急増しており、幼児期のアナフィラキシー受診患者において、原因食物のトップを占めるまでに至っている。
本例は、クルミ初回摂取によるアナフィラキシーが強く疑われる。鶏卵、牛乳、小麦アレルギーがないことは問診で確認することを前提として、クルミ特異的IgE抗体が陽性であれば診断はほぼ確定的といえる。さらに、より特異度の高いコンポーネント検査として、Jug r 1特異的IgE抗体検査も併用しておきたい。
クルミ以外にも、ピーナッツのAra h 2、カシューナッツのAna o 3は、いずれも高い陽性的中率が得られるため、検査が陽性であればほぼ診断が確定したものと考えてよい。なお、ω5-グリアジンは小麦のアレルゲンコンポーネントである。
Q2.本患児に対する今後の指導について正しいのはどれか?
1.よりリスクの高いピーナッツも、念のため除去する
2.クルミに加えて、ペカンナッツも除去する
3.すべての木の実類を除去する
4.治療のため、このクッキーをごく少量から食べ続ける
A.正解は 2
ある木の実にアレルギーを持つ患者が、他の木の実にも反応する確率(交差反応性)は、約20〜40%と報告されている。したがって、特定の木の実にアレルギーがある患者に、一律にすべての木の実やピーナッツを除去させることは、診断上は正しくない。ただし、同じクルミ科に属するクルミとペカンナッツ、ウルシ科に属するカシューナッツとピスタチオは、ほぼ100%交差反応するため、この組み合わせだけは同時に除去する指導が必要である。
実臨床の中では、他の木の実類アレルギーの有無に関する鑑別診断、アドレナリン自己注射薬の処方も考慮した生活指導、保育所や学校給食における対応など、単に除去にとどまらないさまざまな指導が必要となる。また、医学的な診断を理解したうえで、子供が小さいうちはすべての木の実を食べないように教育する選択肢も考えられる。さらに一部の専門施設からは、リスク評価の経口負荷試験から経口免疫療法の有効性も報告されている。