徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

不妊治療の”影”の部分

2011年12月26日 07時02分49秒 | 小児科診療
 妊娠・出産に関係する記事をいくつか拾い読み。

 不育症の補助が厚くなるというニュースが流れました;

不育症:自己注射薬の保険適用を中医協が承認(2011.12.21:毎日新聞)
 血栓症の治療や予防に使われる抗血液凝固薬「へパリンカルシウム製剤」について、厚生労働省中央社会保険医療協議会は21日、在宅自己注射の保険適用を承認した。へパリンは流産や死産を繰り返す不育症の患者に広く使われている。自己注射は負担が大きいとして患者団体と学会が保険適用を求めており、朗報となりそうだ。
 不育症の発症者は年約3万人と推定される。胎盤や子宮に血栓ができると胎児に栄養が届きにくくなり、同省研究班の報告によると、血栓ができやすい体質が原因とみられる不育症患者は全体の約25%を占める。
 不育症予防のヘパリンは1日2回の注射が必要。毎日の通院は困難で、自宅で打つのが一般的だ。自己注射は保険適用外で月5万円程度かかり、妊娠中投与を続ける人も多い。
 ヘパリンは出血などの恐れがあるが、同省は研究班の患者調査などから「大きな副作用はみられない」と判断、治療の有益性が危険を上回ると判断した場合のみ、投与を認めた。


 一方で、人工受精・妊娠・出産の”影”の部分も。

体外受精児を追跡調査へ 人工操作加えるほど体重増(2011.12.24:朝日新聞)


<生殖医療で加えた操作と体重>

 体外受精で生まれた赤ちゃんの体重は、凍結保存など人工的な操作を加えるほど重くなることが、厚生労働省研究班の調査でわかった。遺伝子の働きを調整する仕組みに異常が出ている可能性もあり、将来、がんなどのリスクが高くならないか、15年間、数千人を対象に健康影響を調べていくことにしている。
 研究班(主任研究者=吉村泰典・慶応大教授)は2007~08年度に、体外受精により正常な週数で生まれた赤ちゃん約2万7千人の出生時の体重を調べた。
 その結果、受精卵をそのまま子宮に戻した場合は平均3003グラムだったが、受精卵を胚盤胞(はいばんほう)という段階まで体外で培養すると3025グラム、凍結保存すると3070グラム、体外で培養し、凍結保存した後に戻した場合は3108グラムと、受精卵に操作を加えるほど重くなっていた。凍結保存した場合は、正常な週数で生まれた平均体重3060グラムよりも重く、いずれも統計的に有意な差があった。これらの操作は、妊娠率を高めるために行われるようになった。


 いのちを扱う『神』の領域を操作し始めた人類・・・やはりすべてが思い通りには行かないようです。

三つ子の比率、40年前の6倍に 体外受精の普及などで(2011年3月3日:朝日新聞)


<多胎児の出生割合>

 三つ子の国内での出生比率は約40年前の約6倍、双子は約2倍とそれぞれ大幅に高まっていることが、南山大学の尾崎俊治教授(信頼性工学)らの研究でわかった。体外受精や排卵誘発剤など生殖補助医療による妊娠が増えたためと考えられるという。
 尾崎教授によると、1968年では出生数全体に対する双子の割合は1.09%、三つ子は0.0106%。ところが2005年になると、双子が2.21%と約2倍、三つ子は0.061%で約6倍に増えていた。
 双子などの出生比率については、19世紀の欧州の統計を元に計算した「ヘリンの法則」があり、それによると、双子の割合は89分の1(1.12%)、三つ子の割合はそのさらに89分の1(0.0126%)。1968年はほぼこの通りだった。
 体外受精では複数の受精卵を子宮に移植することがある。排卵誘発剤を使うと複数の排卵が起きやすく、いずれも双子や三つ子などの多胎児になりやすい。
 国内では83年に初めて体外受精に成功。それ以降、体外受精による出生数は1998年に9224人(129人に1人)、06年には1万9578人(55人に1人)と増えている。多胎妊娠は早産などのリスクが増すため、日本産科婦人科学会は2008年、子宮に戻す受精卵を原則一つとする指針を決めた。
 尾崎教授は「多胎児出生率はここ数年わずかに減少しているが、今後も不妊治療を受ける患者が増え続けることから、多胎児の出生率の高さはしばらく続くだろう」とみている。


 新生児医療に関わっていた当時、多胎分娩の多さに驚く日々でした。必ずしもみんなが幸せになれないことも実感していました。

男女産み分け目指しタイへ 日本人急増、年に約30組(2011.9.25:朝日新聞)


<男女の産み分け方法>

 子どもを望む日本人夫婦がタイに渡り、受精卵の染色体を調べて、男女産み分けをするケースが増えている。朝日新聞の取材で、この1年間で少なくとも30組の夫婦が利用していたことが分かった。受精卵の診断は「命の選別につながる」として、日本では重い遺伝病などに限られており、倫理的な課題が多い。
 受精卵診断はもともと遺伝病の有無を調べるために行う。体外受精卵が4~8個の細胞に分裂した段階で、1~2個の細胞を取って、遺伝子や染色体の異常がないか調べて、子宮に戻す。遺伝病だけでなく、性別も判定できるため、男女の産み分けにも使える。
 タイでは近年、医療技術が向上し、海外の患者にも人気の医療先進国になりつつある。受精卵診断も約15の医療機関が実施している。朝日新聞が、日本人が多く行く2施設に取材したところ、2~3年前から日本人が増え、この1年で計約30組が男女産み分けで受精卵診断を受けたと回答した。診断には体外受精が必要なため、不妊でない夫婦でも体外受精をしている。不妊夫婦が卵子提供を受け、男女の産み分けをする例もあるという。


 日本人以外では圧倒的に男の子を希望、日本人には女の子希望者がいることが特徴との報道を記憶しています。
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