徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

新型コロナ(オミクロン株)の後遺症

2022年12月22日 08時16分35秒 | 小児科診療
ワクチン接種を検討する際に、
自然感染の症状が重いか軽いかを判断材料のメインにしますが、
後遺症の有無と程度も問題になります。

新型コロナはオミクロン株以前は「味覚・嗅覚障害」「ブレイン・フォグ」
という、特異な後遺症が注目されてきました。

オミクロン株以降は、咳嗽や全身倦怠感など、
非特異的な症状が目立つ印象があります。

当院は小児科ですが、
新型コロナ感染後、咽頭痛と頭痛、倦怠感が半年経っても消えなくてつらい、
という患者さんも経験しており、
やはり「ふつうの風邪とは言えないなあ」
という印象を持っています。

日本人の新型コロナ後遺症をまとめた忽那Dr.の記事を紹介します。
オミクロン株流行が中心のデータです。
ポイントは、

・自宅療養終了時(10日間)に47.7%の患者さんに症状が残っていた。
・何らかの症状が1つでも残っている人は、発症から1ヶ月の時点で5.2%、2ヶ月で3.7%、100日で2.5%。
・感染後1ヶ月時点で日常生活に支障がある症状が残っていたのは1.7%。
・後遺症の主なものは、「倦怠感」「日常生活に支障」「脱毛」「咳」。
・頻度は1%未満だが「もの忘れ」「集中力低下」「不安感」なども。
・新型コロナの急性期に重症だった人は、軽症だった人と比べて5倍ほど後遺症を経験しやすい。
・女性の方が後遺症になりやすい傾向、ワクチン接種回数が多いほど後遺症を経験しにくい傾向あり。

この記事を読むと、
「死亡率が低くなってきたからふつうの風邪と変わらない」
とは言い切れない気がしますね。


忽那賢志 感染症専門医
(Yahooニュース:2022/12/17)より抜粋;
12月14日に豊中市から、新型コロナに感染した4000人についての後遺症のデータが発表されました。


◇ 新型コロナ後遺症とは?
コロナ後遺症で頻度が高いのは、図に示したように「倦怠感」「息苦しさ」「嗅覚異常」「脱毛」「集中力低下」などです。
報道などでは「コロナ後遺症」という言葉がよく使われますが、厚生労働省は「罹患後症状」と呼び、診療の手引きを作成しています。海外では「LONG COVID」「Post COVID-19 condition」などと呼ばれています。
定義は様々ですが「発症から少なくとも4週以上経過してからも続いている症状」を指すことが多く、この中には咳など発症時からある症状もあれば、脱毛など回復してから新たに出るものもあります。
コロナ後遺症がなぜ起こるのかについては、まだ十分分かっていませんが、単一の原因ではなく、
・ウイルスの持続感染
・ウイルスによる組織障害
・自己免疫反応
・常在細菌叢の多様性の低下
・集中治療後症候群(PICS)
などが複合的に起こっていると考えられています。

◇ 豊中市から新型コロナ後遺症の報告
・・・豊中市でこれまでに新型コロナに感染した人を対象に、VOICEというモバイルアプリまたは紙アンケートで新型コロナ後遺症に関する調査を行い、新型コロナ後遺症の実態について調べたものです。本研究には4000人以上の方が参加していただきました。
参加者の背景としては、
・4047名(男性45.5%、女性54.5%)が参加
・平均年齢は44.3歳
・基礎疾患ありの方が42.8%
・感染時期から推測される変異株の種類は、オミクロンが77.3%、デルタが9.7%、アルファが7.4%、武漢株が5.6%
・78%が2回以上ワクチン接種済み
・急性期の重症度は中等症2が3.4%、重症が1.0%
というものでした。
以下に主な結果についてご紹介します。

◇ 自宅療養後も47.7%の人が何らかの症状が残っていた
新型コロナに感染すると・・・症状は概ね1週間程度続きますが「自宅療養や隔離期間が解除になった後も何らかの症状が残っていた」という方が47.7%いらっしゃいました。
研究が行われた時点では、自宅療養は10日間となっていましたが、その期間を過ぎても倦怠感や咳などが残っており、自宅療養期間を過ぎてもなかなかすぐに元通りというわけにはいかない、ということが分かります。

◇ 発症から1ヶ月後時点で日常生活に支障をきたしていた人が1.6%

発症から1ヶ月経っても続いていた症状の中で、最も多かったのは「倦怠感」「日常生活に支障」「脱毛」「咳」でした。
「日常生活に支障」というのは、職場復帰ができない、元通りの生活ができない、といったことを指します。
また、「もの忘れ」「集中力低下」「不安感」といった症状が残っている人もみられました。
これらの頻度は、日本で行われた過去の報告と比べると、かなり少なくなっています。
その理由としては、参加者の多くが軽症者であったこと、オミクロン株の時期の参加者が多く後遺症の頻度が減っていること、などが考えられます。
それでも、オミクロン株になってから感染者数が2300万人にも増えていることを考えると、この頻度は決して楽観視できません。
なお、何らかの症状が1つでも残っている人は、発症から1ヶ月の時点で5.2%、2ヶ月で3.7%、100日で2.5%となっており、基本的にほとんどの人が時間経過によって症状が改善していくことが分かります。

◇ どのような人が後遺症になりやすい?
豊中市の調査では、新型コロナの急性期に重症だった人は、軽症だった人と比べて5倍ほど後遺症を経験しやすいことが分かりました。
また統計学的に有意ではないものの、女性の方が後遺症になりやすい傾向、ワクチン接種回数が多いほど後遺症を経験しにくい傾向が観察されました。
これらの結果はいずれも海外の報告の結果と一致しています。

オミクロン株での感染者が大多数を占める中でも、発症から1ヶ月経っても約20人に1人がなんらかの症状が続いているという結果は、これまでの報告よりも頻度は低くなっているものの、やはり軽視できるものではないでしょう。
感染者の規模はオミクロン株になってから圧倒的に大きくなっていることから、頻度は減っていても、後遺症に悩む人の数は増えていると考えられます。
オミクロン株になってからは、感染したときの重症化リスクは低くなっていると言われていますが、後遺症のことを考えると、やはり感染しないに越したことはありません。
またワクチン接種により後遺症のリスクが下がるという海外の知見も合わせて考えると、基本的な感染対策はしっかりと行いつつ、ワクチン接種により感染リスク、重症化リスク、そして後遺症のリスクを下げることが重要です。


<参考>
別ブログに long-covid の漢方治療についてまとめました;
long-covid(新型コロナ感染後遺症)の漢方治療について調べてみました;
咳・呼吸困難
嗅覚障害・味覚障害
倦怠感・ブレインフォグ

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