徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

RSウイルスのお話

2011年10月19日 06時19分38秒 | 小児科診療
 昨夜TVを見ていたらRSウイルスのニュース(下記)が流れました。
 医師の私が聞いていても恐くなるような内容で、不安を煽りすぎ・・・まったくもう。
 ちなみに、当地域では大流行の気配は今のところ感じません。
 RSウイルス感染症に関しては「正確な知識を得て正しく怖がりましょう」と言いたいです。

ポイント
・1回罹ってお終いではなく、一生のうち何回も感染する。
・回数を重ねるごとに軽く済むようになる。
 ・・・大人はふつうの風邪と変わらないが、初めて罹る1歳未満の乳児は悪化しやすく、約30%はゼーゼーし(細気管支炎)、呼吸がつらくなって入院する例が約3%。1歳以降の重症化は少ない(ゼロではありません)。
・特効薬はない。


RSウイルス感染症 大流行か(10月18日 NHK)
 乳幼児に肺炎などを引き起こすRSウイルス感染症の患者が、都市部を中心に引き続き増え、国立感染症研究所は、これまでで最も大きな流行になるおそれがあるとして、特に赤ちゃんのいる家庭では手洗いなどの予防策を徹底するよう呼びかけています。
 RSウイルス感染症は、毎年、冬場にかけて主に乳幼児で流行する発熱やせきなどの症状が出る病気で、初めて感染した場合は、肺炎や脳症を引き起こして重症化することがあります。国立感染症研究所によりますと、今月9日までの1週間に全国およそ3000の小児科の医療機関から報告された患者の数は、28の道府県で前の週を上回って1969人となり、去年の同じ時期の2倍近くになっています。平成15年に調査を始めてから、この時期としては最も多く、研究所は今後、さらに患者が増え、これまでで最も大きな流行になるおそれがあるとしています。
 都道府県別にみると、大阪府が179人で最も多く、東京都が143人、愛知県が110人など、都市部を中心に全国的に広がりつつあります。
 国立感染症研究所の安井良則主任研究官は「ことしは特に1歳以下の患者が多く、全体の70%以上を占めている。特に赤ちゃんのいる家庭では、親や兄弟が感染していることに気付かずにうつしてしまうケースが多いと考えられるので、手洗いのほか、せきやくしゃみの飛まつを浴びせないなどの予防策を徹底してほしい」と呼びかけています。
 RSウイルス感染症は、主にくしゃみなどによる飛まつ感染や接触感染でうつり、発熱や鼻水、せきなど、かぜのような症状が出ます。年齢を問わず何度でも感染を繰り返し、大人は鼻かぜ程度の軽い症状で済みますが、乳幼児が初めて感染したときは、肺炎や脳症を引き起こして重症化する場合もあります。中でも、生後間もない赤ちゃんは、肺など呼吸器の発達が不十分なことから、無呼吸状態になって突然死につながるおそれがあり、特に注意が必要だとされています。生後6か月程度までは、はしかや風疹などの感染症に対しては、胎盤や母乳を通じて、母親から受け取った免疫の仕組みが働きますが、RSウイルスには無効で、生後すぐから感染するということです。このため、1歳未満の乳児の場合、RSウイルス感染症による10万人当たりの死亡率は、インフルエンザの2倍以上に上るとされています。


 実はRSウイルスの検査は今まで外来ではできませんでした(入院患者さんのみに保険診療で許可)。一部の医療施設が病院負担で検査を行ってきたデータが上記記事になっていますので、実際の患者数はもっとたくさんいるはずです。

 毎年、11~12月頃に保育園で咳・鼻の風邪が流行ります。その一部がRSウイルスで、あっという間に広まります。重症化するのはほんの一部であり、周囲の風邪症状のある乳幼児は全部同じなのですよ。感染力が強く、また症状が治まった後も数週間はウイルスを排泄(つまり他人に感染させる)するので、流行阻止は困難を極めます。完璧な感染対策をとろうとすれば、流行期に風邪症状が出た乳幼児は1ヶ月休んでもらわなくてはなりません。現実的ではないですね。

 さて、「10月17日から外来でもRSウイルスの検査が乳児に限って許可」されるという情報が飛び込んできたので、当院でも取り扱う準備を始めたところです。もうしばらくお待ちください。

 当院HPのRSウイルスの項目もご参照ください。
 http://www.takei-c.com/diary/common_cold.html
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インフルエンザ抗体入りトローチ?

2011年10月18日 06時09分14秒 | 小児科診療
 こんなニュースが目にとまりました;

「食べる抗体」でインフル予防=卵黄から作製、世界初
(2011年10月17日:時事通信社)

 インフルエンザ感染を抑制する抗体を卵黄から作製することに、バイオベンチャー企業ファーマフーズ(京都市)と京都府立医科大の研究グループが成功した。同社とミヤリサン製薬(東京)は抗体入りのトローチを開発し、販売を始めた。ファーマフーズによると、ニワトリに作らせた抗体を食べてインフルエンザを予防する方法は、世界で初めて。
 トローチはなめ終わった後も1、2時間は効果が持続する。ファーマフーズは「通勤・通学の人混みの中で特に有効。手軽に摂取できるので、感染予防に役立つ」としている。
 研究グループは、ニワトリに季節性インフルエンザAソ連型と、2009年に流行した新型インフルエンザの2種類のウイルスを無毒化して注射。卵黄の中に、これらのウイルスに対する抗体を作った
 インフルエンザ感染実験で一般的に使われる細胞にウイルスを加えると約1分で感染したが、抗体入りの卵黄を粉末化して同時に入れると、ウイルスは約30秒で感染力を失った。唾液の成分で感染抑制効果が失われることもなかった。
 

 ニワトリにできた抗体は卵に移行することを利用した医薬品(?)です。舐めるだけで飲むわけではないので、免疫をつけるというより、口の中に抗体をばらまいて感染をしにくくなる程度と思われます。
 そのうち、感染させたニワトリそのものを食べて予防する、という考えも出てきそう・・・大丈夫なのかな。

<追加>
 より詳しいニュースを見つけたので、こちらもどうぞ;

インフル予防にトローチ開発 京都のバイオ企業
(2011.10.19:朝日新聞)

 インフルエンザ感染を抑える抗体入りのトローチを、バイオベンチャー企業ファーマフーズ(京都市)とミヤリサン製薬(東京)が共同開発し、健康食品として販売を始める。「通勤・通学など人が混み合う所へ行く前になめれば、感染予防に役立つ」(ファーマフーズ開発部)という。
 ファーマフーズは、ニワトリの卵を使って抗体を作り出す技術をもつ。京都府立医科大と共同で、ニワトリにインフルエンザウイルスを注射し、卵黄からウイルスに対する抗体をつくったところ、30秒以内にウイルスが死滅する効果を確認。唾液(だえき)で効果が失われることもなかったという。
 トローチの商品名は「バリフル」(1箱18錠入り)。季節性と新型のインフルエンザウイルスのほか、弱毒性の高病原性鳥インフルエンザウイルスの抗体も含む「万能型」で、子どもがなめても大丈夫という。今月中にも薬局・薬店の店頭に並ぶ予定。

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神奈川県がポリオ不活化ワクチンを独自輸入

2011年10月17日 06時12分53秒 | 小児科診療
 定期接種で行われているポリオ生ワクチンの危険性(100万接種に一人の確率で感染者)が報道されて依頼、接種を控える家族が増え、逆に海外から不活化ワクチンを独自に輸入して接種する医療施設が増えてきました。
 ここで、神奈川県が県単位で輸入することを発表しました;

ポリオ不活化ワクチン、神奈川県が独自接種へ
(2011年10月15日 読売新聞)

 神奈川県は、ポリオ(急性灰白髄炎)の予防接種で、生ワクチンより安全性が高いとされる「不活化ワクチン」を独自に輸入し、希望する県民に接種する方針を固めた。
 年内にも実施する。
 厚生労働省は不活化ワクチンの来年度中の承認を目指しており、承認まで生ワクチンの接種を控える動きが広がっている。
 県では直接輸入できないため、医療機関に協力を求め、個人輸入の形でフランスやスイスのメーカーから不活化ワクチンを輸入し、県の保健福祉事務所で接種する方針。国内では未承認のため、事故が起きた場合に県が責任を負わない旨の同意を取り、接種費用は自己負担してもらう
 黒岩祐治知事は「ポリオに感染する危険性のあるワクチンをそのまま使っているのはおかしい。国の対応は遅すぎる」と話している。


 県が主導して認可されていないワクチンを接種するのは初の事例です。
 画期的という評価がある一方で、赤字で示した問題点もあります。
 県は輸入するけど、何かあっても責任は取りません、すべて自己責任でやってください、というスタンス。
 これはあんまりです。
 不活化ワクチンにもアナフィラキシーなどの重篤な副反応が希ながら存在します。「安心して接種できる環境を提供する」ことが目的なら、有事の際の補償はあって然るべきだと考えます。

 ポリオ問題も大切ですが、子どもの命を守るためには水痘やおたふくかぜワクチンの費用補助を行うことが優先されるべきである、と多くの小児科医は考えています。
 「話題になっているから対応」するのは政治家の点数稼ぎのニオイがするのは私だけでしょうか。

<追加>
 その後、神奈川県知事と厚労省大臣が批判の応酬を繰り広げています;

ポリオ予防接種めぐり国と神奈川県が対立
(2011.10.20:FNN)

 ポリオ(小児まひ)の予防接種で、国と神奈川県が、「1年半」の時間をめぐり、対立姿勢を強めている。現在使われている生ワクチンは、ごくまれにポリオへの感染リスクがあることから、神奈川県は、日本で未承認の「不活化ワクチン」の導入を独自に決定した。全国で、2012年度中の導入を目指す小宮山 洋子厚労相は、これを批判している。
 小宮山厚労相は「『国はもっと早くやれ』と言われてもですね、こちらもやってる中で、そういうことなので」と述べた。
 神奈川県の黒岩祐治知事は「もうとにかくですね、不活化ワクチン早く認めた方がいいですよ。国がやらないんだったら、神奈川、先にやりますから。これを見習って、国は早くやってください!」と述べた。
 国と神奈川県との間で勃発した「ワクチン騒動」。
 現在、ポリオ、いわゆる小児まひの予防接種で、国が承認している生ワクチンは、ほぼ無料で接種されているが、厚生労働省によると、100万人に1.4人の割合で、手足にまひを発症する副作用がある。
 一方、神奈川県が独自導入を決めたのが、まひのおそれがない不活化ワクチン。
 神奈川・川崎市にある「北浜こどもクリニック」では、独自に不活化ワクチンを輸入し、希望者に接種している。国の承認がないため、1回5,000~6,000円する接種費用は、自己負担となってしまう。
 神奈川県は、不活化ワクチンの接種を県内5カ所の保健所で、希望者に実施する。母親は「例えば、割合的には低くても、この子がその1になってしまったら、危険には変わらないので、よりリスクの低い方を選びたいなと思って。自費ではあるんですけど」と話した。
 厚生労働省は現在、国内メーカーが開発中などとして、不活化ワクチンの導入は2012年度中になる見通しとしている。
 しかし、保護者の間では、不活化ワクチンが承認されるまで、予防接種を控える動きが広がっている。
 屋代惠朗さんは、生後7カ月の時に、生ワクチンを介し、ポリオに感染した。右足のかかとが地面につかず、特注の靴が欠かせない毎日を送っている。惠朗さんは「重心がどうしても、こっちに傾いてしまうので...」と話した。
 屋代さん親子は、神奈川県の不活化ワクチン導入については、喜びの声を上げる。惠朗さんは「初めて、そういう地方で動いてくれるっていうのは、すごくうれしいと思いましたね。『ありがたい』の一言でしかないですね」と話した。母・君枝さんは「いい意味で、飛び火してくれれば、全国に広がりますよね」と話した。
しかし、大きな課題もある。
 小児科医は「補償がないとか、方法とかに関しては、いろいろと疑問に思うことはいくつかあるので、手放しでは喜べないなと」と話した。
 不活化ワクチンは未承認であるため、万が一、健康被害があっても、国の救済制度が適用されず、補償はない。神奈川県の黒岩知事は「万万万が一のことがあって、確かに今、補償制度はありませんよ。ご理解いただいたならば、接種しますということ。これがまあ、今、ぎりぎりのところですね」と述べた。
 小宮山厚労相は「ぜひ、生ワクチンの方を受けていただきたいと申し上げているということです」と述べた。
国と神奈川県の溝は、深まるばかりとなっている。
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電子カルテ・ユーザーの会

2011年10月16日 23時37分43秒 | 小児科診療
 当院では小児科医が開発しMacで稼働するワイン・スタイルという電子カルテを採用しています。
 Mac派の私は、Windowsの下品な(失礼)インターフェイスになじめず、仕事で使うのだったら断然Macと6年前の開業時に選択したのでした。
 全国に散らばるユーザーは総勢150人程度と、どちらかというとマイナーです。

 ただし、大企業の電子カルテと違ってフットワークがよいのが特徴です。
 「あそこが困る」「こうなるともっと便利」と要望すると、開発者の目にかなえばどんどん改善していくのです。

 この週末はその電子カルテの「第一回ユーザー会」へ参加してきました。
 集まったのは北は北海道、南は九州から約50人。
 
 「今後の開発路線」を紹介するレクチャーでは、様々な意見・要望が出ました。
 全部に対応できるわけでもなく、開発者は困った表情を時々覗かせていましたね。

 ユーザーの有志が自分の使い方を紹介するコーナーもありました。
 あ、こんな便利な機能があったのか、とか自分の診療に生かせるヒントをたくさんもらいました。

 懇親会ではMacや診療の裏話で盛り上がった楽しいひとときを過ごせました。
 総じて云えることは「皆さん、Macが大好きなんだな」という当たり前の結論でした(笑)。
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小児医療無料化に対する、国の「いやがらせ」

2011年10月14日 06時40分51秒 | 小児科診療
 群馬県では中学生まで医療無料化を実現しています。子どもの健康を守り、安心して子育てするにはよい政策だと思います。
 費用は県と自治体で折半して負担しています(つまり税金)。
 ここで驚くべき事実が判明。国もそれをサポートしているかと思いきや、実は邪魔しているのです。
 下記ニュースをお読みください。皆さんはどう思われますか?

中学卒業まで医療無料「安易な受診助長」 国が補助削減 群馬(2011.10.6:朝日新聞)
 中学卒業まで子どもの医療費を無料とする群馬県の独自制度について、厚生労働省が「安易な受診を助長する」として、過去5年間で国庫負担分の43億円を削減していたことがわかった。5日の県議会決算特別委員会で明らかになった。
 自営業者らが加入する国民健康保険の場合、医療費の個人負担は1~3割。残りの医療費のうち34%は国が、残りは市町村が負担する。
 県は2009年10月から、中学校卒業までの子どもに対して、所得に関係なく、入通院とも個人負担分を市町村と折半している。
 国は、個人が医療費を立て替えるのでなく、受診時の窓口で無料にする自治体に対しては、「安易な受診につながる」として補助金の国庫負担金の一部を減額。減額分は、県と市町村が補填(ほてん)することになる。
 県内で、子ども医療費助成の対象者のうち国保での受診者は約3割。09年度は、9億4800万円が国庫負担金から減額された。県は、これを「ペナルティー」と表現する。

 県によると、09年4~9月に、国保を使った時間外受診の件数は1万152件だったのに対し、無料化後の10年同時期には9406件に減った。「救急医療への過度の依存は見られない」とする。
 一方で、慢性化しやすいぜんそくやアトピー性皮膚炎での受診者は増えた。小学校高学年から中学生までのぜんそくでの受診者は、09年5月は724件だったが、10年5月は872件。アトピー性皮膚炎も638件が741件に増えていた。
 萩原利通・国保援護課長は「慢性化、重症化を防ぐのに、効果が上がっているのではないか」と話す。
 県では、国庫負担金の削減をやめるよう厚労省に要望しており、今年も要望書を提出した。


 確かに「タダだから・・・」と安易に夜間の救急外来を受診する患者さんはいますね。困り果てた病院は近年、救急外来を受診した患者さんが「軽症」と判断された場合には、一定の料金を徴収するようになってきています。
 お金の流れで受診を誘導する方法はちょっと寂しい。

 もっと根本的な「健康教育」に力を入れることに目が向かないのでしょうか。
 風邪のほとんどはウイルス性なので抗生物質は無効だとか、発熱への対処法だとか、予防接種の必要性とか・・・そこを充実すれば、不安が軽減されて救急外来への不適切受診が減ると思うのですが・・・。
 日々、現場でこれらの基本的なことを説明する作業に小児科医は疲れています。
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来年のスギ花粉は少ない?

2011年10月12日 07時17分08秒 | 小児科診療
 スギ花粉症患者でもある私にはうれしいニュースです。TVでニュースを読み上げるアナウンサーの表情も明るく感じました(おそらく彼女も患者さん)。
 昨年の猛暑から一転し、この夏の暑さは程ほどで終わりホッとしました。
 「暑くない夏=花粉が少ない」ことは常識ですが、その通りの予想が発表されました。
  いい塩梅ですねえ。

来春のスギ花粉、今春よりは7割減(2011.10.11:朝日新聞)
 民間気象会社「ウェザーニューズ」(東京都港区)は11日、来春のスギ、ヒノキ(北海道はシラカバ)花粉の飛散予測をまとめた。全国的に記録的な飛散量だった今年の3割にとどまる見込みだ。しかし、同社は「前年に比べれば少ないというだけ。早めの対策を」と呼びかけている。
 飛散量は多い年(表年)と少ない年(裏年)が交互に繰り返される傾向がある。来春は裏年にあたるが、東北・北陸・関東地方では、裏年としては多めの量になりそうだという。
 花粉は、前年の夏がよく晴れて暑いほど多くなる傾向がある。光合成が盛んになり、雄花の数が増えるためと見られている。今春は、昨夏の猛暑の影響で記録的な飛散量だった。今夏の暑さは昨夏ほどではなかったが、日照の多かった地域などでは、ここ数年の平均値程度の飛散量はあるとみられている。


 一方で、スギ花粉は秋にも飛んでいるというニュース。私の妻は重度のスギ花粉症ですが、最近鼻汁/鼻閉が辛そうで「この症状はスギだと思う」と申しております。

秋にも花粉症 原因物質避けるのが大切(2011.10.4:産経新聞)
 花粉症といえば春のスギ花粉症を想像しがちだが、秋にも花粉症になることがあり、注意したい。春と異なり、秋の原因はキク科のブタクサやヨモギが中心。予防のためには、花粉になるべく接触しないよう気をつけることが大切だ。

◇ 近年はスギ花粉も
 花粉の飛散状況を観察・測定し、ホームページで情報公開などをしている「花粉情報協会」(千葉県習志野市)の事務局長で、東邦大学理学部の佐橋紀男・訪問教授によると、秋の花粉症の原因となるのは、キク科のブタクサやヨモギのほか、牧草などのイネ科植物がある。
 近年の特徴として、秋にスギ花粉が観測されることもある。秋でも気温が高い日があると、狂い咲きのような形で花を咲かせてしまうことが考えられるという。佐橋教授は「ここ何年か前からは、秋にもスギ花粉症についても注意するよう呼びかけている」と説明する
 ブタクサやヨモギは春の花粉症の原因となるスギ花粉やヒノキ花粉に比べ、飛散量は少なく、飛散範囲も狭い。このため、患者数は多くないとされている。今年の飛散状況も「例年とそれほど変わりはない」(佐橋教授)。とはいえ、ブタクサやヨモギはスギやヒノキに比べ、道端や荒れ地など身近な環境にある。過ごしやすい秋にスポーツや行楽を楽しむためには注意が必要だ。

◇ 風邪は黄色い鼻水
 秋の花粉症の症状としては、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみなど春と違いはない。飛散量が少ないため、重症化する人は春に比べて少ない。
 季節の変わり目の時期の花粉症であるため、風邪と見分けがつかない人もいるだろう。日本医科大学耳鼻咽喉科の大久保公裕教授に風邪との違いを聞くと、「風邪では鼻水が黄色くなりますが、花粉症ではなりません」と話す。このほか、目の症状は花粉症では出るが風邪では出ず、逆に熱は花粉症では出ないなどの違いがあるという。
 秋の花粉症から身を守るため、普段から気をつけたい点として、大久保教授は「基本的に秋は草の花粉症なので、遠くまで花粉は飛びません。草木の多いところを避けて生活することが必要で、通勤、通学路に自然が豊富な公園があったり、川沿いに住んでいたりする場合は注意してほしい」とアドバイスしている。

 花粉情報協会のデータや佐橋教授の論文などをもとにしたホームページ「花粉症Learning」(http://www.mnc.toho-u.ac.jp/v-lab/kafun/)では、家庭でできる花粉症対策として、花粉を家の中に入れないための工夫、外出時の注意などを紹介している。こうした方法を試し、花粉を防いで快適に秋を過ごしたい。
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夢追い人、スティーブ・ジョブズ氏死去

2011年10月06日 21時22分14秒 | 日記
 アップルの創業者にて元CEO、スティーブ・ジョブズ氏の訃報が今日届きました。
 ご存じMacを造った人で、近年はiTunes、iPodやiPhoneを世に送り出したことの方が有名かな。
 Pixerのアニメにも関わっていたことを知ってました?

 私がMacを初めて購入したのは15年前。それ以前はWindows以前のMS-DOSを使っていました。
 Macの画面の美しさとセンスに魅了され、それからずっと機種を変えながら使い続けてきました。多分、15台くらい購入したはず。

 現在医院で使用中の電子カルテもMacで稼働するものを選びました。Windowsのあの画面のごちゃごちゃさを見ると、どうしても「仕方なく仕事をしている」というイメージが拭えませんが、Macなら楽しんでできると思ったからです。

 ジョブズ氏は人が考えないような夢やアイディアをたくさん持ち、それをどん欲に実現していった天才と云われています。
 常に革新的なものを追い求めたという点では、没後20年に当たるジャズ界の帝王、マイルス・デイビスと共通するところがありますね(こちらも大ファン)。

 たくさんの夢をありがとう。
 ご冥福をお祈りします。

★ 追加

 BS放送で見たABCニュースでは、ジョブズ氏の生い立ちについて言及していました。彼は両親に見捨てられた過去を背負っていました。大学生の母と高校生の父は育児をあきらめて養子に出したそうです。その後、妹を介して母親とは再会しましたが、父親とは生涯顔を合わせることはありませんでした。

 10月13日のNHK「クローズアップ現代」では、10年前に同番組に出演したときの元気な映像や、癌発病後のタイミングで行ったスタンフォード大学卒業式での演説を見ることができました。
 「どん欲に夢を持ち、それを実現する熱意が大切だ。成功する人としない人の違いは途中であきらめるかどうかにかかっている。
 「自分の夢に向かって邁進すべし。人生は短く、他のことは人生でそう大切ではない。
 記憶に残る珠玉の言葉が散りばめられていました。
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日本脳炎ワクチンの取り扱いを停止します

2011年10月06日 08時10分51秒 | 小児科診療
 最初に申し上げておきますが「ワクチン接種環境に問題があり接種ミスを誘発しやすい」という理由です。「日本脳炎ワクチンの副反応が危険」という話ではありません。

 最近、日本全国で日本脳炎ワクチンの過量接種事故(3歳未満に倍量接種)が後を絶ちません。

女児にワクチン誤接種 日本脳炎で適正量の2倍(2011年6月1日:福島民友ニュース)
誤接種:日本脳炎、1人に2倍の濃度 発熱などの可能性-八百津/岐阜(2011年7月3日)
2児にワクチン2倍接種(宮崎県)(2011年2月19日:毎日新聞)
2歳10カ月男児にワクチンを誤接種 群馬(2010年9月10日:産経新聞)


 なぜ繰り返されるのか、私なりに考えてみました。
 結論から申しますとミスが発生しやすい要因が複数存在することに気づきました。
 「予診表の不備」と「患者家族の勘違い」と「医療機関のチェックミス」の3つです。
 これらが組み合わさることにより発生した事故と認識するに至りました。

予診表の不備
 ご存じと思われますが、推奨される標準接種年齢は3歳以上となっています。これはあくまでも「標準」であり、実は生後6ヶ月から接種可能です。
 ただし、3歳未満では接種量が半分に減量されます。この知識は親御さん達には浸透していません。小児科医は知っていますが、希ながらそのルールを知らない医師も接種に当たっているようです(上記の岐阜県例)。
 しかし予診表の接種量の欄には「0.5ml」としか書かれていません。もし、この予診表を使うなら、3歳前に接種しないような工夫(3歳の誕生日に配布するとか)が必要です。
 ここが間違いやすいポイントであり、ミスを誘発する予診表の記載を改善していただきたいと思います。

患者家族の勘違い
 日本脳炎ワクチンは3歳になったタイミングでを予約するのが一般的です。
 もし3歳未満で接種希望の場合は、予約する際に「3歳前だけど海外で生活することになったので早めに接種したい」等と事情を添えて申告していただければ誤接種はまず起こりません。
 しかし、患者さん家族の勘違いで、例えば「どうせなら兄弟一緒に」と下の子の年齢を意識せずに申し込みされると、チェックをすり抜けてしまう可能性があります。

医療機関のチェック・ミス
 医院のチェックミスはあってはならないことです。当院では「予防接種・間違い防止の手引き」等を参考にふだんから十分注意してチェック体制を構築しているつもりですが、限られた時間の中で複数のワクチンを扱う現場では人間の能力に限界があり、スタッフは疲弊しています。

 次に過量接種してしまった場合の問題点を挙げます。

過量接種の問題点
副反応
 実際に倍量を接種しても局所の腫れと発熱の頻度が高くなることはありますが、重篤な副反応は報告されていませんので、過度の心配は無用です(メーカーに確認済み)。

補償
 過量接種してしまった場合の問題は「定期接種として扱われなくなる」ことです。つまり市町村の補助が無くなり任意接種扱い(実費)になります。
 そして何よりも問題なのは「保険での補償がなくなる」ことです。
 重篤な副反応の可能性はごく希だとしても、もし発生した場合は100%医院の責任にされてしまうのです。現場では神経をすり減らして接種に当たっているのに、ミスしたらフォローしてくれるどころかはしごを外されてしまう印象さえあります。本当に発生したら医院は潰れてしまいかねません。

 この事実を知ってから、私は日本脳炎ワクチンを扱うのが怖くなりました。
 以下の条件が整い、事故の可能性が低くなるまでは接種を控えることにしました。

接種間違い対策
・患者さん家族が「日本脳炎ワクチンを3歳未満で行う際は減量接種となるが、間違い接種が起こりやすい、そしてその場合は副反応が起きても補償されない」と認識すること。これは医院受診前に自治体が担当すべき啓蒙・教育です。
・予診表の記載が改善されること。例として「3歳以上は0.5ml、3歳未満は0.25ml」とわかりやすく記載されること等。予診表は各自治体が作成していますので、統一した見やすい記載に改善していただきたいと思います。


 ご迷惑をおかけしますが、開業医は零細企業故、過大なリスクを負うことができないことをご理解ください。
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ロタウイルス・ワクチンの効果

2011年10月05日 07時20分56秒 | 小児科診療
 冬に流行する嘔吐下痢の原因は前半:ノロウイルス、後半:ロタウイルスがメインです。
 以前からロタウイルスのワクチンは開発されており、「ワクチン後進国日本」でもようやく導入されるという話が持ち上がっています。
 すでに2006年から導入されているアメリカのデータが発表されましたので紹介します:

ロタウイルスワクチン導入後、5歳未満児の入院、医療コストが激減
(2011/10/05:ケアネット)

 米国で2006年から開始された、乳児への5価ロタウイルスワクチン(RV5;2、4、6ヵ月齢に経口投与が標準)の直接的、間接的ベネフィットについて、米国疾病管理予防センター(CDC)のJennifer E. Cortes氏らが調査を行った結果、導入後3年間で入院が推定で約6万5千件減少、医療コストは2億7,800万ドル削減と、いずれも激減したことが報告された。ワクチン導入時は、年間の下痢関連受診が約40万人、救急外来受診20万人、入院は5万5千件で、年間20~60人の5歳未満児が死亡しており、医療コストは年間3億ドルを要していたという。NEJM誌2011年9月22日号掲載より。


 素晴らしい効果です。
 ただし、導入に際しては日本に特有な問題があります。
 それは「同時接種嫌い」。
 ロタウイルス・ワクチンは生ワクチンであり、かつ生後6ヶ月までに2~3回接種(ポリオと同じく飲むワクチン)するのが標準スケジュールです。
 ご存じのように、生ワクチン接種後は次のワクチンまで4週間開けなければなりません。
 生後6ヶ月までに推奨されるワクチンはBCG、DPT(3回)、ヒブ(3回)、肺炎球菌(3回)・・・個別接種にこだわると、スケジュールを組むのははっきり言って無理です!

 以前の記事(ブログ)も御参照ください。
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