徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

身近な動物からでもSFTS感染の可能性あり

2017年08月03日 08時24分05秒 | 小児科診療
 ダニが媒介する感染症として近年有名になったSFTS(重症血性血小板減少症候群)。
 今回、ダニではなく野良猫から感染し死亡した事例が報告され、医療関係者はショックを受けています。
 記事の内容を抜粋しますと・・・

・SFTSはマダニによる感染症ではなく、マダニが媒介するSFTSウイルスによる感染症である。
・自然界ではシカやイノシシは中間宿主なので感染しても無症状。
・イヌやネコが感染すると症状が出て体調不良となる。
・それらの動物に噛まれて裏引っかかれたりしたエピソードのある患者はSFTSも疑うべきである。

 ということになりますか。

■ 野良猫に噛まれた女性、SFTSで死亡
2017/8/1 中西 奈美=日経メディカル
 厚生労働省はこのほど、西日本に住む50代女性が昨年夏に野良猫にかまれ、重症血性血小板減少症候群(SFTS)を発症し、死亡していたことを明らかにした。SFTSはSFTSウイルスを保有するマダニの刺咬によって感染することが知られていたが、今回のケースは身近な動物である猫に噛まれて感染した初めてのケースだ。
 これを受けて厚労省は7月24日、都道府県や日本医師会などに対して、SFTSを発症した猫や犬の体液等からヒトが感染することも否定できないことから、SFTS の疑いのある患者を診察した場合には、ダニの刺咬歴に加え、動物との接触歴についても確認するよう注意喚起した。
 50代女性が接触した野良猫はSFTSを発症しており、その猫との接触によって女性に感染したと考えられている。これまで、シカやイノシシ、犬、アライグマ、タヌキ、アナグマ、イタチ、ニホンザル、ウサギなどでSFTSウイルスに対する抗体が確認されていた。今回、わが国でも猫がSFTSを発症し、さらには人に感染させる可能性が示唆された。国立感染症研究所ウイルス第一部部長の西條政幸氏は、「健康な猫からSFTSウイルスが感染することはまずない。体調の悪い猫に、噛まれたり、引っかかれたりしたことを聴取した場合は、SFTSウイルスの感染の可能性も考えて」と話す。
 SFTSは、ウイルスを有するマダニ(フタトゲチマダニ、ヒゲナガマダニ、オオトゲチマダニ、キチマダニ、タカサゴキララマダニ)にかまれることで感染する。自然界では、シカやイノシシなどが中間宿主となり、ウイルスを保有するマダニを増やす。しかし、中間宿主の多くは症状を示さない不顕性感染である。「発熱や食欲消失など、体調が明らかに悪い猫や犬は、マダニにかまれたことが確認できない場合でもSFTSを疑う必要がある」と西條氏は話す。
 患者の主訴として発熱や嘔吐、下痢など、血清学的検査で血小板減少、白血球減少、AST・ALT・LDHの上昇を認めた場合、マダニにかまれた以外にも、具合の悪い猫の体液が触れるような関わりがなかったかを確認する。
 わが国でのSFTSの致命率(ある特定の病気にかかったと診断され、報告された患者のうち、一定の期間内に死亡した患者の割合)は約20%である。中国や韓国では患者血液との直接接触が原因と考えられるSFTSのヒト-ヒト感染の事例も報告されている。

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「労働時間」を考える・・・ドイツ vs 日本

2017年08月02日 06時54分42秒 | 日記
 昨年(2016年)の記事になりますが、読売新聞の「働き方改革、ドイツに学ぶべき点はここだ(在独ジャーナリスト:熊谷徹)、2016年10月11日」を読んでいろいろ考えさせられました。

 ドイツの特徴は「労働時間が短くかつ効率のよい労働」「有給休暇の取得率が高い」という、お手本のような内容です。このためドイツでは、長時間労働による自殺や過労死、鬱うつ病は日本ほど大きな社会問題になっていないそうです。

 さてその秘密はどこに・・・ポイントは「労働に対する考え方の違い」でしょうか。
 日本では「仕事・労働は自己実現の場」と捉える傾向がありますが、キリスト教のドイツでは「アダムとイブが禁断の実を食べたために、神の怒りに触れてエデンの園から追放され、労働によって日々の糧を得なくてはならなくなった」できればやりたくないもの、という捉え方が根底にあるようです。
 現実的には「サービス」は日本の方が上ですね。それを犠牲にする覚悟がなければ「働き方改革」は進まないでしょう。



・ドイツでは、1日10時間を超える労働は法律で禁止されている。1日10時間以内に仕事を終えなくてはならないので、時間と労力ばかりかかって見返りが少ないと思われるような業務は、初めから手をつけない。

・ドイツ企業では「短い時間内で大きな成果を上げる」社員が最も評価される。成果が出ないのに残業をする社員は、全く評価されない。

・ドイツ人は「ワーク・ライフ・バランス」を重視している。このため、企業は優秀な人材を確保するためにも、労働条件が悪いという評判が立たないように神経を使う。

・ドイツ企業で働く人の大半は、毎年30日間の有給休暇を全て使う(企業は、法律によって最低24日間の有給休暇を社員に取らせるよう義務づけられている)。
 多くのドイツ人は「気分転換のためには、休暇を最低2週間まとめて取る必要がある」と話している。彼らは「最初の1週間は仕事のことが頭に残っているが、2週間目に入るとようやく忘れられる」と言う。

・誰もが休暇を取るのは当然の権利だと理解しており、やましい気持ちは全くない。日曜日や祝日の労働は禁止されているほか、土曜日にオフィスで働く際には上司の許可が必要だ。

・ドイツでは物を売る側と買う側がほぼ対等の立場にある。日本のように「お客様は神様」として顧客を絶対視する意識はない。したがって、顧客を満足させるために、長時間残業を行うようなことはない。

・日独の間には大きな労働観の違いが横たわっている。キリスト教の精神が浸透している国には、「労働はなるべく少なくするに越したことはない」という世界観がある。
 ドイツに多いプロテスタント信者の間には、「労働において成功した者を、神は天国に行かせる」という考え方もある。しかし、「労働によって自分を実現する」とまで考える人は、日本ほど多くない。

・仕事が「企業に付く」ドイツ
 ドイツでは、仕事は人に付くのではなく、企業に付く。例えば、顧客が問い合わせの電話をかけた時に、担当者が長期休暇を取って不在であっても、気分を害することはない。同僚が問い合わせにきちんと答えてくれさえすれば、それでいいのである。ある業務が「特定の人でなければ務まらない」という考え方は、ドイツ企業では希薄だ。
 日本はドイツに比べてサービスの水準がはるかに高い。その背景には「この業務は私でなければ務まらない」という意識がある。顧客は担当者が2週間も休暇を取っていると聞いたら、怒り出すだろう。

・ドイツの労働条件の良さは、労働組合が1970年代から政府や経営側と粘り強く交渉することによって勝ち取った成果である。ドイツの労働組合は、日本とは比べものにならないほどの影響力と自主性を持っており、今でも航空会社や鉄道会社、郵便局などがストライキを行うことがある。
 何十年もストライキをやっていないような日本の労働組合に、そこまでの影響力を期待することはできない。

・ドイツ語に「頑張る」という言葉はない。

・日本がすべき改革;
①「仕事は人ではなく、企業に付く」という考え方を社会全体に浸透させる。
②「残業が多い社員は、会社への忠誠心がある」という考え方は過去のものにすべき。社員を査定する時は、「長時間残業して成果を上げた社員」よりも、「残業をせずに成果を上げた社員」を高く評価するようにする。
③休む時は思い切り休んで気分転換し、働く時は集中して働く。
④労働監督機関には法律の厳格な運用を強く求め、政府は企業に対して、最低限の有給休暇の日数を社員に取らせることを法律によって義務づけるべき。


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