「新型コロナは正しい知識を持って正しく怖がろう」とは何度も聞いた言葉です。
第五派が落ち着いて、オミクロン株による第六派前の狭間の現時点で、
「“やり過ぎ感染対策”を見直そう!」
という意見が散見されるようになりました。
新型コロナ対策の基本三原則は、
・マスク
・手洗い
・三密を避ける
です。
これらをしっかり守れば、感染拡大は抑えられます。
ただ、一般市民の間では「これくらいなら・・・」という気の緩みが散見されます。
先日行った床屋さんでのエピソード。
私が先客で、後から入ってきたお客さんが隣に座り、
マスクを外して(床屋ではひげを剃るのでマスクを外します)いきなりしゃべり始めたのです。
当然私もマスクはしていません。
一方で話の相手をしている定員さんはマスクをしています。
実はこのようなシチュエーションは以前にもあり、2回目でしたので、
私はクレーム発言を実行しました。
「しゃべるならマスクをするか、マスクをしないならしゃべらないでください!」
と。
すると、お客も店員もビックリした顔をして、
「ああ、すみません、すみません」
と私に謝り、全くしゃべらなくなりました。
この反応は、
「マスクなしでしゃべると感染の危険があることはわかっているけど、
このくらいならまあ許されるのではないか・・・」
という感覚と読みました。
逆に言えば、基本三原則以上のことをたくさんやっても積み上げ効果は期待できないということになります。
例えば、私が以前から気になっている「環境消毒」。
中国の街中全部消毒作戦に始まり、
クラスターが発生した病院も学校も、
PPEで身を固めたヒトが農薬みたいに消毒液を散布しています。
環境では一定時間が経てばウイルスは失活することがわかっていますし、
消毒液を散布しても100%カバーするのは不可能で、
消毒液が行き届かない部位が残りますので、効果は?です。
当然、たくさんの商品が出回っている「空間除菌」も完全な密閉空間でなければ無効です。
それからトイレの感染リスク。
便を調べるとPCR陽性、トイレ内部を拭った検体を調べてもPCR陽性、
だからトイレは危険極まりない!
と報道されてきましたが、
便の中のウイルスはすでに構造が壊れていて感染力はないというのが科学的な常識です。
しかしPCR検査は、ウイルスのカケラさえも捉えて陽性に出てしまうので、
検査結果の判定は慎重にすべきです。
さて、新型コロナで有名になった感染症の専門家である忽那先生が、
下記のような内容の小文を提示しています。
忽那賢志(感染症専門医)2021/12/12
新型コロナの流行が始まって2年が経とうとしています。
当初、よく分かっていなかったこの感染症も、この2年で多くのことが分かってきました。
新型コロナの感染経路が十分に分かってきた今、不必要な感染対策についても見直す時期に来ているのではないでしょうか。
◆ 新型コロナの感染経路は3つ
新型コロナの感染経路は3つです。
・接触感染:ウイルスで汚染した物、感染した人の手などに触れることで自分の手などにウイルスが付着し、その汚染した手で目や鼻など粘膜に触れる
・飛沫感染:会話などで発生する飛沫を浴びる
・エアロゾル感染:特に換気の悪い屋内では飛沫の飛ぶ距離(1-2M)を超えて感染が起こり得る
基本的にはこの3つの感染経路を意識した感染対策が重要です。
接触感染に対してはこまめな手洗い、飛沫感染やエアロゾル感染に対してはマスク着用と3密を避けることで感染を防ぐことができます。
◆ ビュッフェでの手袋は不要!
ホテルの朝食でビュッフェに行くと「食事を取るときはビニール手袋をつけてください」と言われることが多いと思います。
トングとかにいろんな人が触るからだと思いますが、結局ビニール手袋をつけたとしても、ビニール手袋であちこち触ればビニール手袋そのものが汚染してしまい、汚染したビニール手袋でトングを触ればトングも汚染し、何がなんだか分からなくなります。
なんとなく「ビニール手袋は汚染しないんだ」という謎の信頼感があるのかもしれませんが、ビニール手袋にもウイルスや細菌は付着しますし、ウイルスが付着したビニール手袋であちこち触ればウイルスは広がっていきます。
ということで、大事なのは食事を取る前にアルコールなどで手を洗うこと、そして取り終わった後にも手を洗うことです。
どうしてもビニール手袋を使いたいという場合は、毎回食事を取りに行く際に使い回さずに毎回捨てるようにしましょう。
同様に、スーパーのレジの店員さんもずっと同じ手袋をつけて接客をされているのを見かけることがありますが、あれも「手袋はウイルスに汚染されない神話」によるものではないかと思います。
前述の通り手袋も普通に汚染されますので、手袋で触った商品もお釣りを渡したお客さんの手も汚染されていきます。
これを避けるためには、こまめに手を洗うか、手袋を使う場合は毎回換える必要があります。
現実的には、スーパーに入るときと出るときにお客さんが手を洗う、そしてレジの店員さんも定期的に手を洗う、というのが良いのではないかと思います。
あとエレベーターのボタンなどのいわゆる高頻度接触面に謎の抗菌シートを貼っているのを見かけることもありますが・・・どこのメーカーのシートなのか、どういった原理で抗ウイルス効果を発揮しているのか、どうやってそれを検証しているのか、など疑問が無限に湧いてきてしまい、安心してペタペタと触る気にはなりません。
こうした高頻度接触面を触ったときは、これらの謎のシートが貼ってあったとしても、その後に手を洗うようにしましょう。
ようするにこまめな手洗いが最強ということです。
◆ ハンドドライヤーは普通に使ってもいい
未だにトイレのハンドドライヤーが使用禁止になっているところを見かけます。
特に飛沫やエアロゾルに関しては流行初期から過剰とも思える感染対策が散見されました。
私も新型コロナの流行初期にいろんな人に「ハンドドライヤーはウイルスが舞って危険だからYahooに書いてくれ!」と言われて全部無視していましたが(基本薄情な人間なのです)、私のスルーも虚しく日本全国でハンドドライヤーは使用禁止になっています。
このハンドドライヤーももうそろそろいい加減普通に使っていいのではないでしょうか。
ハンドドライヤーは手を洗った後に使用するものですので基本的にきれいな手を乾燥させるために使用するものであり、そこに新型コロナウイルスがいて、エアロゾルが舞って感染するなんてことは極めて稀であり、そんなことを気にするよりはマスク着用と手洗いという基本的な感染対策を徹底することが重要です。
日本経団連のホームページにも、
オフィスや製造事業場といった、基本的に有症者がいない管理された場所のトイレでのハンドドライヤーの利用での感染リスクは限定されること、また、ハンドドライヤーの利用で発生する水滴、マイクロ飛沫による感染リスクが極めて小さいことが、複数の実験と数値流体シミュレーションを組合せて確認できたことから、ハンドドライヤーの利用停止を削除する。
と記載があり、経団連もこう言っていることですし、そろそろハンドドライヤーも普通に使いませんか?
最後に「トイレのフタ問題」についても言及したいと思います。
「新型コロナの感染対策としてトイレの水はフタを閉めて流してください」という張り紙を見かけることがありますが、これも流行初期にトイレの水を流すことでウイルスが舞い上がるのではないかというモデル上の仮説があったり、便から発生したエアロゾルがトイレの配管を通して感染に関与したのではないかという都市伝説的な症例報告があり、「トイレは危険だ!」ということになったのではないかと思いますが、もしトイレを介した感染が起こるとしても極めて稀な感染経路であり、フタをするしないで感染リスクが「ほぼゼロ」から「ほぼほぼゼロ」になるくらいのものでしょう。
まあ別にトイレのフタを閉めて流しても誰かが損をするわけではないので、別にいいんですけどね・・・。
◆ 感染対策はシンプルに
全く未知の感染症であった新型コロナも、この2年間で様々なことが分かってきました。
当初はとにかく感染リスクを下げるために何でもやる、ということで行っていた対策の中には、現在では「ここまではやらなくてもいいんじゃないの?」と思えるものも出てきました。
マスク着用、こまめな手洗い、3密を避ける、といった基本的な感染対策を継続していくためには不要な対策はできるだけなくしシンプルにしていくことが大事です。
今一度、ご自身の周りの感染対策を見直してみてはいかがでしょうか。