徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

オミクロン株は“終わりの始まり”か。

2022年01月14日 08時45分51秒 | 小児科診療
日本全国を覆う勢いの新型コロナウイルス“オミクロン株”。
特徴は、
1.感染力が強い
2.重症化しにくい
に代表されます。

1は困った特徴ですが、
2は喜ぶべき変化です。

そして1+2は、新型コロナの“終わりの始まり”を予見させる変化なのです。

新型コロナ以前は“パンデミック”といえば新型インフルエンザを指していました。

1900年以降、
・スペイン風邪(1918-1919年)
・アジア風邪
・ソ連風邪
・香港風邪
・パンデミック2009(ブタインフルエンザ)
等々、世界を席巻して被害をもたらしました。

その後、これらの原因ウイルスはどうなったかご存じですか?
実は、変異しながら生き延びているのです。
“季節性インフルエンザ”と名前を変えて。

変化の特徴は“弱毒化”、つまり“重症化しにくい”こと。
すると、人類が脅威を感じる対象から外れて、“流行性感冒”のレベルに収まるようになります。
もっとも、いわゆる風邪=“普通感冒”とは区別される、やや重症化しやすい“流行性感冒”という位置づけですが。

ウイルス自身が生き延びるためには、
1.感染力が強い
性質は望ましいこと。
そして、感染対象(宿主)であるヒトを殺してしまっては感染拡大(≒生き残り)しにくいので、
2.重症化しにくい
ことも望ましい性質、ということになります。

ですから、新型コロナウイルスは、ふつうの風邪に似た位置にソフトランディングする準備を始めた、という見方もできるのです。


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奨学金という名の“借金”

2022年01月14日 06時58分45秒 | 小児科診療
私は大学生時代に奨学金を3つもらっていました。
日本育英会と、市町村と、もう一つ(詳細は忘れました)。
日本育英会以外の2つは、一定の基準を満たすと返済を免除される仕組みだったと記憶しています。
日本育英会の奨学金は借りた期間の倍くらいの期間をかけて返済したと思います。
親への仕送りもしていた私には結構な負担でした。

さて近年、奨学金の返済が社会問題として取り上げられることが増えました。
「日本の奨学金制度は“無利子の借金”に他ならない」と。
これは、外国の奨学金が返済不要であることとの比較です。
「大学まで授業料が無料」という国もありますね。

数年前に大学+大学院を卒業した知り合いのお子さんは、
なんと就職時に1000万円の借金を抱えていると聞きました。
ちょっと、それはなんでもひどいんじゃ・・・。

一方で、返済不要の奨学金は「返済不要の借金」と同じだから、
人間をダメにする・・・という意見も無きにしも非ず。

そこで最近の奨学金に関する記事を読んでみました。

「奨学金240万円」借りた女性が抱く父への葛藤〜兄にはポンと数百万円出したにもかかわらず…
千駄木 雄大 : 編集者/ライター(2021/12/29:東洋経済オンライン

ふつうに借りて、ふつうに返済している女性のエピソード。
特に返済に困難感はなく「ふつうに痛い」レベル。
「貧困にあえぐ学生時代ではなかったことに感謝」と、
現行の奨学金制度には肯定派。

「奨学金400万円」借りた男性に父が驚きの一言〜ダメ学生が真面目サラリーマンに成長するまで
千駄木 雄大 : 編集者/ライター(2022/01/12:東洋経済オンライン

ふつうに返済できている男性のエピソード。
「学歴社会のこの時代、借金(≒奨学金)をしてでも手に入れるべき」と、
前例洞様の肯定派。

奨学金の借金1100万円、早大生の貧困と苦悩〜通い続けるべきか、それとも中退して働くか
藤田 和恵 : ジャーナリスト(2017/09/23:東洋経済オンライン

奨学金をもらいながら大学に通う男性のエピソード。
肯定・否定というより、奨学金がないと大学生活が成り立たない経済状況に追い込まれており、かつ膨大な借金返済が待ち受ける未来に不安を抱いている・・・。

以上、3つのエピソードを読んでみました。

論点その1)要返済の奨学金について
1も2も3も“要返済”は論点になっておらず、“要返済ありき”という前庭で話が進んでいました。

論点その2)返済の苦労
1も2も無難に就職できて返済地獄に陥っているわけではなく、この論点も顕在化していませんでした。
3の例は、卒業時に1000万円超の借金を抱える身となり、返済地獄が待っていると思われます。

というわけで、私が問題視した論点を微妙に外しているエピソードばかりであり、単なる経験談で終わっている残念な記事でした。


<参考>
■ 【国立大学・公立大学・私立大学】1975年~2021年「大学授業料の推移」


■ 独自集計!全大学「奨学金延滞率」ランキング〜平均は1.3%、延滞率5%以上の学校は7校

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HPVワクチン、なう。

2022年01月10日 05時38分05秒 | 小児科診療
2021年末に「HPVワクチン接種勧奨一次停止の解除」が決まり、
2022年4月から定期接種として対象者に通知が行くようになりました。
さらに、接種勧奨停止中に通知が行かないため接種の機会を逃した女性に、
3年間の救済措置が取られることになりました。

医療者から見ると、
マスコミの扇動により不安になった接種対象者が接種を控えることにより、
子宮頸がんを罹患し命を落とすことは“犯罪”に思えてきます。
この辺の検証をしない限り、これからも同じことが繰り返されるでしょう。

それから、日本政府が「若年女性の健康を守る」という矜持が希薄すぎることも問題です。
これは外国の学者も指摘しているところです。

そして、ワクチン反対論者の根底には、
日本政府への不信感がくすぶっています。

確かに、薬害でありながら責任回避を続けた水俣病、
安全神話で国民をだまし続けている原発問題などを考えれば、
無理のないことかもしれません。

しかし我々は、この環境下でも、
正しい情報を集めて正しい判断をすべく日々努力するしかありません。
他人のせいにしているだけでは幸福は遠のきます。

さて、英国から「HPVワクチンで子宮頸がんが根絶できる可能性」を示唆した報告が入ってきました。

HPVワクチン、イングランドで子宮頸がんをほぼ根絶か/Lancet
 イングランドでは、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの全国的な接種プログラムの導入により、子宮頸がんおよび前がん病変とされるGrade3の子宮頸部上皮内腫瘍(CIN3)の発生が大幅に減少し、とくに12~13歳時に接種を受けた女性で顕著な抑制効果が認められ、1995年9月1日以降に出生した女性ではHPV関連子宮頸がんの根絶にほぼ成功した可能性があることが、英国・キングス・カレッジ・ロンドンのMilena Falcaro氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、Lancet誌2021年12月4日号で報告された。
◆ イングランドの2価ワクチンの観察研究
 研究グループは、イングランドの住民ベースのがん登録データを用いて、2価HPVワクチンを用いた予防接種プログラムが子宮頸がんおよびCIN3の発生に及ぼした、早期の影響の定量化を目的に観察研究を行った(Cancer Research UKの助成を受けた)。
 イングランドでは、2008年9月1日、12~13歳の女児に2価HPVワクチン接種プログラムが導入され、2008~10年にかけて14~18歳の女子に対し、年齢差による遅れを取り戻すためのプログラムが提供された。
 本研究では、年齢-時代-コホート(APC)ポワソンモデルの拡張版を用いて、HPVワクチン接種の対象とならなかったコホートとの比較で、ワクチン接種コホートにおける子宮頸がんの相対リスクが推定された。ワクチン接種コホートは、接種時の学年と全国的な接種の普及状況を考慮して、3つのコホート(ワクチン接種時の学年が12~13年生、10~11年生、8年生のコホートで、24.5歳時に最初のがんスクリーニングへの参加を勧められた女性)で解析が行われた。
 2021年1月26日に、住民ベースのがん登録からデータが抽出され、イングランドに居住する20~64歳の女性の、2006年1月1日~2019年6月30日の期間における子宮頸がんおよびCIN3の診断について評価が行われた。また、交絡因子に対してさまざまな補正を行った3つのモデルを用いて解析が行われ、結果が比較された。
◆ 接種年齢12~13歳の25歳時の低下率:がん87%、CIN3 97%
 調査期間中に2万7,946例が子宮頸がんと、31万8,058例がCIN3と診断された。ワクチン接種を受けた20~30歳未満の女性の総追跡期間1,370万年のデータが解析に含まれた。
 ワクチン非接種コホートと比較した接種年齢別の子宮頸がん発生率の推定相対低下率は、16~18歳(12~13年生)のコホートが34%(95%信頼区間[CI]:25~41)、14~16歳(10~11年生)が62%(52~71)、12~13歳(8年生)は87%(72~94)であり、接種年齢が低いほど低下率が大きかった。
 また、CIN3のリスク低下率も、接種年齢16~18歳のコホートが39%(95%CI:36~41)、同14~16歳が75%(72~77)、同12~13歳は97%(96~98)と、接種年齢が低いほど低下率が大きかった。これらの結果は、すべてのモデルでほぼ同様だった。
 一方、2019年6月30日の時点で、イングランドのワクチン接種コホートにおける発生件数は、子宮頸がんが予測よりも448件(95%CI:339~556)少なく、CIN3は予測に比べ1万7,235件(1万5,919~1万8,552)減少していた。
 著者は、「これらの結果は、2価HPVワクチンによる子宮頸がん予防に関する初めての直接的なエビデンスであり、英国のプログラム全体の効果を評価するには時期尚早であるが、HPVワクチン接種の利点に関する理解と認識を深めることに貢献するだろう」とまとめ、「12~13歳の女児への広範なHPVワクチン接種により、25歳(観察データの範囲)までに子宮頸がんと前がん病変がほぼ根絶されることが示された。HPVワクチン接種の対象となる女性には、より若い世代に利益をもたらし続けるために、何歳であっても(理想的には最初に接種を勧められた時に)接種を受けるよう推奨すべきである」と指摘している。

<原著論文>






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オミクロン株の特徴と対策

2022年01月07日 07時48分45秒 | 小児科診療
2021年12月から世界中に広がった新型コロナウイルスのオミクロン株。
感染力が最強?
重症化はしない?
等々、噂が先行して不安がかき立てられましたが、
徐々にその特徴が明らかになってきました。

敵を正しく理解して、正しく怖がりましょう。
読売新聞が日本の研究チーム(G2P-Japan)やCDCなどが公表したデータを紹介しています;

感染力:デルタ株の3-5倍
潜伏期間:約3日(デルタ株の約4日、従来株の5日以上より短い)
重症化リスク:デルタ株に比べ肺のウイルス量と炎症は減る
・免疫への作用:中和抗体の働きを弱めるが免疫細胞(T細胞)は有効

 沖縄県では、2022年1月2日までの1週間に判明した感染者のうち、オミクロン株と疑われる人の割合は73%に上った。東京都(34%)や大阪府(60%)と比べ、デルタ株からの置き換わりが進んでいるとされる。
 厚生労働省の専門家組織に提出された資料では、沖縄県で療養中の感染者計675人(4日時点)の重症度が示された。それによると、
・無症状か軽症:92.3%
・中等症:7.7%
・重症(人工呼吸器などを装着)0%
2021年7月18日時点では、
・無症状・軽症:72.8%
・中等症:26.2%
で、オミクロン株の「軽症傾向」が浮かぶ。

(沖縄県での1/1までのオミクロン株陽性者50人のデータより)
症状
72%:37.5℃以上の発熱
58%:咳
50%:倦怠感
44%:のどの痛み
 ・
 ・
 ・
6%:呼吸困難
2%:嗅覚・味覚障害

WHOは「オミクロン株のターゲットは肺よりも鼻やのど」と公表しています。
従来株は鼻やのどより肺への親和性が高いため、風邪症状が乏しいけど肺の奥で炎症が進んで“知らないうちに重症化”や“ happy hypoxia ”(呼吸困難感が乏しいけど酸素飽和度が下がる)ことが特徴とされてきましたが、オミクロン株は“ふつうの風邪”に近い性質に変化してきた、ということになります。

すると、ますますふつうの風邪と区別が難しい・・・症状だけでは誰にもわからないという元々の性質に磨きがかかりました。
かつ、のどや鼻にたくさんウイルスが居るので、マスクなし会話での感染力がより一層強まったことになります。

このような特徴を踏まえ、政府は対策を練り直して変更しました。

昨年末までは
・オミクロン株感染者は入院
・濃厚接触者は宿泊施設で待機
が原則でしたが、急速な患者数激増による医療逼迫の可能性を考慮し、
・自治体判断で症状に応じて宿泊、自宅療養
に変わりそうです。
さらに、今後の行動制限再開もやむなし、という雰囲気になっていますね。

我々一般人はどうすべきでしょうか?

まずはワクチン接種。
そして“感染対策の基本を守る”ことに尽きます。

・ワクチン接種
・マスク着用
・手洗いあるいは手指消毒
・三密を避ける

<参考>
オミクロン株「会食でマスク外せば、ほぼ全員感染」…予防策は従来と変わらず
(2022年1月9日:読売新聞)
 変異株「オミクロン株」が広がり、感染が急拡大している。予防策など注意点は何か。広島大の坂口剛正教授(ウイルス学)に聞いた。
 急拡大の背景には、オミクロン株の特徴がある。鼻から喉までの気道上部でウイルスが増殖し、くしゃみなどで広範囲に広がり、短期間で発症するので、爆発的に感染する可能性がある。「デルタ株の約6倍の感染力を持つ」と指摘する論文もある。
 医療従事者が、マスクなど対策をしながら感染した事例もある。会食などでマスクを外した場合は、ほぼ全員が感染してしまう。
 一方、肺の奥で増えるウイルスは少なく、重症化しにくい。ハムスターを使った実験でも、肺炎が起きにくいことが確認されている。
 ワクチンの効果について、英国の研究が報告されている。2回目接種の5か月後だと、オミクロン株の感染を防ぐ効果は5%を切るが、3回目接種の直後なら8割に高まる。入院率も9割近く下がるデータが出ており、重症化を防ぐ効果もある。
 予防策は従来と変わらず、会食などを控え、マスク着用や手洗いを励行することだ。過度に恐れたり、混乱したりせず、冷静に日頃の対策を徹底し、積極的にワクチン接種を受けてほしい。
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“やり過ぎ感染対策”を見直そう。

2022年01月03日 14時04分11秒 | 小児科診療
「新型コロナは正しい知識を持って正しく怖がろう」とは何度も聞いた言葉です。
第五派が落ち着いて、オミクロン株による第六派前の狭間の現時点で、
「“やり過ぎ感染対策”を見直そう!」
という意見が散見されるようになりました。

新型コロナ対策の基本三原則は、
・マスク
・手洗い
・三密を避ける
です。
これらをしっかり守れば、感染拡大は抑えられます。

ただ、一般市民の間では「これくらいなら・・・」という気の緩みが散見されます。

先日行った床屋さんでのエピソード。
私が先客で、後から入ってきたお客さんが隣に座り、
マスクを外して(床屋ではひげを剃るのでマスクを外します)いきなりしゃべり始めたのです。
当然私もマスクはしていません。
一方で話の相手をしている定員さんはマスクをしています。

実はこのようなシチュエーションは以前にもあり、2回目でしたので、
私はクレーム発言を実行しました。
「しゃべるならマスクをするか、マスクをしないならしゃべらないでください!」
と。
すると、お客も店員もビックリした顔をして、
「ああ、すみません、すみません」
と私に謝り、全くしゃべらなくなりました。

この反応は、
「マスクなしでしゃべると感染の危険があることはわかっているけど、
このくらいならまあ許されるのではないか・・・」
という感覚と読みました。

逆に言えば、基本三原則以上のことをたくさんやっても積み上げ効果は期待できないということになります。

例えば、私が以前から気になっている「環境消毒」。
中国の街中全部消毒作戦に始まり、
クラスターが発生した病院も学校も、
PPEで身を固めたヒトが農薬みたいに消毒液を散布しています。

環境では一定時間が経てばウイルスは失活することがわかっていますし、
消毒液を散布しても100%カバーするのは不可能で、
消毒液が行き届かない部位が残りますので、効果は?です。

当然、たくさんの商品が出回っている「空間除菌」も完全な密閉空間でなければ無効です。

それからトイレの感染リスク。
便を調べるとPCR陽性、トイレ内部を拭った検体を調べてもPCR陽性、
だからトイレは危険極まりない!
と報道されてきましたが、
便の中のウイルスはすでに構造が壊れていて感染力はないというのが科学的な常識です。
しかしPCR検査は、ウイルスのカケラさえも捉えて陽性に出てしまうので、
検査結果の判定は慎重にすべきです。

さて、新型コロナで有名になった感染症の専門家である忽那先生が、
下記のような内容の小文を提示しています。


忽那賢志(感染症専門医)2021/12/12

新型コロナの流行が始まって2年が経とうとしています。
当初、よく分かっていなかったこの感染症も、この2年で多くのことが分かってきました。
新型コロナの感染経路が十分に分かってきた今、不必要な感染対策についても見直す時期に来ているのではないでしょうか。

新型コロナの感染経路は3つ

新型コロナの感染経路は3つです。
・接触感染:ウイルスで汚染した物、感染した人の手などに触れることで自分の手などにウイルスが付着し、その汚染した手で目や鼻など粘膜に触れる
・飛沫感染:会話などで発生する飛沫を浴びる
・エアロゾル感染:特に換気の悪い屋内では飛沫の飛ぶ距離(1-2M)を超えて感染が起こり得る
基本的にはこの3つの感染経路を意識した感染対策が重要です。
接触感染に対してはこまめな手洗い、飛沫感染やエアロゾル感染に対してはマスク着用と3密を避けることで感染を防ぐことができます。

◆ ビュッフェでの手袋は不要!

ホテルの朝食でビュッフェに行くと「食事を取るときはビニール手袋をつけてください」と言われることが多いと思います。
トングとかにいろんな人が触るからだと思いますが、結局ビニール手袋をつけたとしても、ビニール手袋であちこち触ればビニール手袋そのものが汚染してしまい、汚染したビニール手袋でトングを触ればトングも汚染し、何がなんだか分からなくなります。
なんとなく「ビニール手袋は汚染しないんだ」という謎の信頼感があるのかもしれませんが、ビニール手袋にもウイルスや細菌は付着しますし、ウイルスが付着したビニール手袋であちこち触ればウイルスは広がっていきます。
ということで、大事なのは食事を取る前にアルコールなどで手を洗うこと、そして取り終わった後にも手を洗うことです。
どうしてもビニール手袋を使いたいという場合は、毎回食事を取りに行く際に使い回さずに毎回捨てるようにしましょう。

同様に、スーパーのレジの店員さんもずっと同じ手袋をつけて接客をされているのを見かけることがありますが、あれも「手袋はウイルスに汚染されない神話」によるものではないかと思います。
前述の通り手袋も普通に汚染されますので、手袋で触った商品もお釣りを渡したお客さんの手も汚染されていきます。
これを避けるためには、こまめに手を洗うか、手袋を使う場合は毎回換える必要があります。
現実的には、スーパーに入るときと出るときにお客さんが手を洗う、そしてレジの店員さんも定期的に手を洗う、というのが良いのではないかと思います。

あとエレベーターのボタンなどのいわゆる高頻度接触面に謎の抗菌シートを貼っているのを見かけることもありますが・・・どこのメーカーのシートなのか、どういった原理で抗ウイルス効果を発揮しているのか、どうやってそれを検証しているのか、など疑問が無限に湧いてきてしまい、安心してペタペタと触る気にはなりません。
こうした高頻度接触面を触ったときは、これらの謎のシートが貼ってあったとしても、その後に手を洗うようにしましょう。
ようするにこまめな手洗いが最強ということです。


◆ ハンドドライヤーは普通に使ってもいい

未だにトイレのハンドドライヤーが使用禁止になっているところを見かけます。
特に飛沫やエアロゾルに関しては流行初期から過剰とも思える感染対策が散見されました。
私も新型コロナの流行初期にいろんな人に「ハンドドライヤーはウイルスが舞って危険だからYahooに書いてくれ!」と言われて全部無視していましたが(基本薄情な人間なのです)、私のスルーも虚しく日本全国でハンドドライヤーは使用禁止になっています。
このハンドドライヤーももうそろそろいい加減普通に使っていいのではないでしょうか。
ハンドドライヤーは手を洗った後に使用するものですので基本的にきれいな手を乾燥させるために使用するものであり、そこに新型コロナウイルスがいて、エアロゾルが舞って感染するなんてことは極めて稀であり、そんなことを気にするよりはマスク着用と手洗いという基本的な感染対策を徹底することが重要です。
日本経団連のホームページにも、
オフィスや製造事業場といった、基本的に有症者がいない管理された場所のトイレでのハンドドライヤーの利用での感染リスクは限定されること、また、ハンドドライヤーの利用で発生する水滴、マイクロ飛沫による感染リスクが極めて小さいことが、複数の実験と数値流体シミュレーションを組合せて確認できたことから、ハンドドライヤーの利用停止を削除する。
と記載があり、経団連もこう言っていることですし、そろそろハンドドライヤーも普通に使いませんか?

最後に「トイレのフタ問題」についても言及したいと思います。
「新型コロナの感染対策としてトイレの水はフタを閉めて流してください」という張り紙を見かけることがありますが、これも流行初期にトイレの水を流すことでウイルスが舞い上がるのではないかというモデル上の仮説があったり、便から発生したエアロゾルがトイレの配管を通して感染に関与したのではないかという都市伝説的な症例報告があり、「トイレは危険だ!」ということになったのではないかと思いますが、もしトイレを介した感染が起こるとしても極めて稀な感染経路であり、フタをするしないで感染リスクが「ほぼゼロ」から「ほぼほぼゼロ」になるくらいのものでしょう。
まあ別にトイレのフタを閉めて流しても誰かが損をするわけではないので、別にいいんですけどね・・・。

◆ 感染対策はシンプルに

全く未知の感染症であった新型コロナも、この2年間で様々なことが分かってきました。
当初はとにかく感染リスクを下げるために何でもやる、ということで行っていた対策の中には、現在では「ここまではやらなくてもいいんじゃないの?」と思えるものも出てきました。
マスク着用、こまめな手洗い、3密を避ける、といった基本的な感染対策を継続していくためには不要な対策はできるだけなくしシンプルにしていくことが大事です。
今一度、ご自身の周りの感染対策を見直してみてはいかがでしょうか。


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