私は5年以上前から炭水化物制限(いわゆる“ロカボ”)・糖質制限食を続けています。
それまでは1年に1kgずつ増えてメタボ体格が進行していたのですが、
開始後は標準体重に戻り、維持できていますので、効果は実感しています。
病院で受ける血液検査でも、コレステロールや中性脂肪の値は正常です。
でも、
「脂肪はいくらでも食べていいの?」
という素朴な疑問を持ち続けてきました。
関連書籍を読むと、
「油・脂をたくさん食べても便で排泄されるので問題ない」
「体脂肪になるのは炭水化物・糖質の取り過ぎがメイン」
「コレステロールの値が気になる場合は脂質の種類に気をつけるべし」
という記述であり、ホントかなあ?と納得しきれずにいました。
今回紹介する記事は、糖尿病治療の一環としての食事指導の中で、
糖質と脂質の摂取方法に言及した内容です。
従来の「栄養バランスに気を付けて、カロリー制限をしましょう」から一歩も二歩も進み、
データとコンピュータを駆使して解析し、
数字を提示して食事指導を行う、新しい手法です。
結論を抜粋すると、
・減量に成功するには、糖質と脂質のどちらでもいいから減らす(総エネルギー量を減らす)とよいという人もいれば、・・・摂取する総エネルギー量を減らすだけでは減量が達成できず、糖質、あるいは脂質をしっかりと減らさないといけない人がいる。
ということで、ケースバイケースという玉虫色の結論に至っていますね。
ちょっと期待外れ・・・。
▢ 糖質を減らすべきか脂質を減らすべきか、それが問題だ個別化が進む糖尿病診療
(2024/02/06:日経メディカル)より一部抜粋(下線は私が引きました);
あなたは脂質摂取量を2割減らしたならば、糖質は制限しなくても5~7%の減量を達成できますよ──。そんな食事療法のアドバイスができる日が近づいてきた。
国立病院機構京都医療センター予防医学研究室長の坂根直樹氏らは、PwCコンサルティンググループが開発した、人体の生理機能をコンピューター上に再現する「Bodylogical」を活用し、糖尿病予備軍にどんな食事療法が減量・血糖改善に向いているかを、個人別に予測できる技術の開発を進めている。坂根氏に話を聞いた。
国立病院機構京都医療センター予防医学研究室長の坂根直樹氏らは、PwCコンサルティンググループが開発した、人体の生理機能をコンピューター上に再現する「Bodylogical」を活用し、糖尿病予備軍にどんな食事療法が減量・血糖改善に向いているかを、個人別に予測できる技術の開発を進めている。坂根氏に話を聞いた。
これまで糖尿病予備軍の方々への食事指導は、「栄養バランスに気を付けて、カロリー制限をしましょう」という一般的なアドバイスにとどまっていました。だから、糖尿病になりたくないからと、炭水化物を一切とらない極端な食事制限をしてしまう人もいます。今回の研究で、例えば「あなたは、脂質の摂取量を減らせられるのであれば、糖質はそれほど制限しなくても減量できますよ」といった、個々の体質に適したアドバイスができるようになるのです。
今回の検討は、コンサルティング会社であるPwCコンサルティングが開発したBodylogicalという技術を活用しています。簡単に言えば、人間の体をコンピューター上に再現するもので、業界用語ではデジタルツインといいます。このBodylogicalの機能の一部は論文で報告されていますが、体内の代謝系のプロセスを再現しています。長年、世界中の多くの研究者によって糖や脂肪がどう吸収されるか、吸収された後、どのように細胞に取り込まれるか、インスリンはどう作用するのか、血糖上昇の結果としてHbA1c値はどう変動するのか、といった代謝の因果関係が明らかになっています。これらの因果関係は数式化できるので、体重や空腹時血糖値、インスリン量などを入力すると、血液と筋肉の間で糖や遊離脂肪酸がどれくらい取り込まれるか/放出されるかを、シミュレーションできるようにしたのがBodylogicalです(関連記事:「『仮想の私』で将来の私の病状を予測できる」)。
・・・日本では、健康診断で糖尿病予備軍とされた人を対象に、生活習慣の改善による糖尿病発症抑制を検証した臨床試験であるJ-DOIT1試験が実施されました。この試験には、血糖値や血圧、脂質値のほか、体重や食事の様子など様々なデータがあります。しかもそれは5.5年間フォローしているので、経時的な変化を追えるデータです。そこで、電話による生活習慣介入を1年間行う介入群から非常に良好な結果が得られた「Best responder」29人、効果が得られなかった「Worst responder」30人、体重計と歩数計を貸与するのみの非介入群から背景をマッチさせた53人をピックアップしました。
そして、まず53人の非介入群のデータを使って、体重を維持するために必要な炭水化物や脂質の量、日本人のHbA1c値の取り得る範囲、インスリンシグナルにおける遊離脂肪酸の阻害効果、糖毒性や脂質毒性、炎症により膵β細胞にどれだけダメージが起こるか、などについて日本人用に調整をしました。その上で、介入群の計59人のデジタルツインを作成しました。
こうして見いだしたデジタルツインを使って、生活習慣への介入によって体重とHbA1cが4年間でどう変化するかについて、シミュレーションで得られた予測値と実際の測定値を比較したところ、体重は平均で1.0±1.2kg、HbA1c値は平均で0.14±0.18%の誤差の範囲で予測可能なことが確認できました。つまり被験者それぞれのデジタルツインはおよそその人の代謝を再現できるものと考えられる結果です。
今回の検討は、コンサルティング会社であるPwCコンサルティングが開発したBodylogicalという技術を活用しています。簡単に言えば、人間の体をコンピューター上に再現するもので、業界用語ではデジタルツインといいます。このBodylogicalの機能の一部は論文で報告されていますが、体内の代謝系のプロセスを再現しています。長年、世界中の多くの研究者によって糖や脂肪がどう吸収されるか、吸収された後、どのように細胞に取り込まれるか、インスリンはどう作用するのか、血糖上昇の結果としてHbA1c値はどう変動するのか、といった代謝の因果関係が明らかになっています。これらの因果関係は数式化できるので、体重や空腹時血糖値、インスリン量などを入力すると、血液と筋肉の間で糖や遊離脂肪酸がどれくらい取り込まれるか/放出されるかを、シミュレーションできるようにしたのがBodylogicalです(関連記事:「『仮想の私』で将来の私の病状を予測できる」)。
・・・日本では、健康診断で糖尿病予備軍とされた人を対象に、生活習慣の改善による糖尿病発症抑制を検証した臨床試験であるJ-DOIT1試験が実施されました。この試験には、血糖値や血圧、脂質値のほか、体重や食事の様子など様々なデータがあります。しかもそれは5.5年間フォローしているので、経時的な変化を追えるデータです。そこで、電話による生活習慣介入を1年間行う介入群から非常に良好な結果が得られた「Best responder」29人、効果が得られなかった「Worst responder」30人、体重計と歩数計を貸与するのみの非介入群から背景をマッチさせた53人をピックアップしました。
そして、まず53人の非介入群のデータを使って、体重を維持するために必要な炭水化物や脂質の量、日本人のHbA1c値の取り得る範囲、インスリンシグナルにおける遊離脂肪酸の阻害効果、糖毒性や脂質毒性、炎症により膵β細胞にどれだけダメージが起こるか、などについて日本人用に調整をしました。その上で、介入群の計59人のデジタルツインを作成しました。
こうして見いだしたデジタルツインを使って、生活習慣への介入によって体重とHbA1cが4年間でどう変化するかについて、シミュレーションで得られた予測値と実際の測定値を比較したところ、体重は平均で1.0±1.2kg、HbA1c値は平均で0.14±0.18%の誤差の範囲で予測可能なことが確認できました。つまり被験者それぞれのデジタルツインはおよそその人の代謝を再現できるものと考えられる結果です。
その上で、減量に成功した(体重5~7%減)ある被験者のデジタルツインを使って検討したところ、減量に成功するためには、炭水化物の摂取量を10%減らしたときは脂質を10%ぐらい減らす必要があるし、炭水化物を20%減らしたならば、脂質摂取量はあまり変えなくても減量に成功するというシミュレーション結果が得られました。つまり、この方は炭水化物を大きく減らすことができたら、脂質摂取量を増やしても減らしても体重減少に対する効果はあまり変わらないと予想されるということです。
一方、別の被験者のデジタルツインでは、炭水化物を10%減らしたとき、脂質も20%近く減らさないと減量に成功しないというシミュレーション結果が得られました。逆に言うと、脂質摂取量を減らしたならば炭水化物の摂取量は減らしても減らさなくても減量成功にはあまり影響しないと推測されます。つまり、この方は5~7%の体重減少を達成するために脂肪を積極的に減らせばよいとアドバイスできることになります。
減量に成功するには、糖質と脂質のどちらでもいいから減らす(総エネルギー量を減らす)とよいという人もいれば、・・・摂取する総エネルギー量を減らすだけでは減量が達成できず、糖質、あるいは脂質をしっかりと減らさないといけない人がいるということなのです。
・・・現在の食事療法でよくあるケースとして、炭水化物量をほぼゼロにするといった極端な糖質制限をしてしまうことがあります。・・・「痩せましょう」という指導をすると、「炭水化物をゼロにしなきゃ」「食べる量を大きく減らさなきゃ」と極端な制限をしてしまう人が少なからずいます。ときにそれは健康を害するものにもなりかねません。しかし、こうしたデジタルツインが活用できれば、体内の代謝メカニズムに個人差を加味した「仮想の私」を参考に、一歩踏み込んだアドバイスができるようになるのです。
近年、医療において重要視されているEBMは、いわば平均値の話です。そのため、実際にやってみると、うまくいく人といかない人が当然出てきます。治療や指導に対する反応性が一人ひとり違うからです。デジタルツインがあれば、その人に最適な治療・指導ができるようになります。今回使用したデジタルツインは、シミュレーションするための根拠は全て数式化されており、結果の根拠が明らかなのが興味深いところだと思っています。
今回は糖尿病予備軍の方を対象とした研究でしたが、予備軍の方々は代謝的に均一な集団です。ところが、患者になると、血糖値がすごく高くなる人、血圧がすごく高い人、など、様々な病態の人がいて、多様な集団になります。そうした多様な集団でも同じようにシミュレーションできるか、検討していきたいと思っています。また、今後、薬物に関するデータを組み込んでいければ一人ひとりの糖尿病患者の治療の最適化に役立つと期待しています。
減量に成功するには、糖質と脂質のどちらでもいいから減らす(総エネルギー量を減らす)とよいという人もいれば、・・・摂取する総エネルギー量を減らすだけでは減量が達成できず、糖質、あるいは脂質をしっかりと減らさないといけない人がいるということなのです。
・・・現在の食事療法でよくあるケースとして、炭水化物量をほぼゼロにするといった極端な糖質制限をしてしまうことがあります。・・・「痩せましょう」という指導をすると、「炭水化物をゼロにしなきゃ」「食べる量を大きく減らさなきゃ」と極端な制限をしてしまう人が少なからずいます。ときにそれは健康を害するものにもなりかねません。しかし、こうしたデジタルツインが活用できれば、体内の代謝メカニズムに個人差を加味した「仮想の私」を参考に、一歩踏み込んだアドバイスができるようになるのです。
近年、医療において重要視されているEBMは、いわば平均値の話です。そのため、実際にやってみると、うまくいく人といかない人が当然出てきます。治療や指導に対する反応性が一人ひとり違うからです。デジタルツインがあれば、その人に最適な治療・指導ができるようになります。今回使用したデジタルツインは、シミュレーションするための根拠は全て数式化されており、結果の根拠が明らかなのが興味深いところだと思っています。
今回は糖尿病予備軍の方を対象とした研究でしたが、予備軍の方々は代謝的に均一な集団です。ところが、患者になると、血糖値がすごく高くなる人、血圧がすごく高い人、など、様々な病態の人がいて、多様な集団になります。そうした多様な集団でも同じようにシミュレーションできるか、検討していきたいと思っています。また、今後、薬物に関するデータを組み込んでいければ一人ひとりの糖尿病患者の治療の最適化に役立つと期待しています。