小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

予防接種情報2024〜小児肺炎球菌ワクチンの混乱(PCV13 → 15 → 20への変遷)

2024年11月08日 13時40分23秒 | 予防接種
肺炎球菌ワクチンが定期接種になってから、
小児の重症髄膜炎が激減したことを小児科医は実感しています。

しかし肺炎球菌にはサブタイプ(血清型)がたくさんあり、
それらからセレクトしたワクチンを作っても、
それ以外の血清型が流行してイタチごっこ状態に陥りがち。

2024年4月より前は、プレベナー13®(PCV13)というワクチンが使用されていました。
13とは、含まれる血清型の数を表します。
ちなみに13の内容は… 1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F、25V

そして2024年に定期接種に採用された肺炎球菌ワクチンは二つあり、

1.バクニュバンス®(沈降15価肺炎球菌結合型ワクチン、MSD) → 「PCV15」と略
 …PCV13の血清型に22F、33Fが加わった。
 …皮下注あるいは筋注
 …2022年9月薬事承認(高齢者)
 …2023年6月小児に適応拡大(生後2ヶ月以上18歳未満)
 …2024年4月定期接種化
※ PCV13とPCV15との交互接種は可
 …安全性に関して、PCV13と差はない。

2.プレベナー20®水性懸濁注( → PCV20
 …PCV15の血清型に8、10A、11A、12F、15Bが加わった。
 …2024年10月1日から定期接種化(生後2ヶ月以上6歳未満)
 …それに伴いPCV13は販売中止
※ PCV20はPCV15との交互接種を原則行わない。

んん?…PCV13とPCV15は交互接種可、しかしPCV15とPCV20は交互接種不可!
つまり、PCV15ではじめた方は、最後までPCV15で通す必要があり、
途中でPCV20に変更はできないということです。

だれですか、こんなわかりにくいルールを作ったのは?

以上のように現在、15と20が並列販売されて混乱していますが、
今後はどうなっていくのでしょう?
 → どうやらPCV20が残ってPCV15は消えていくようです(短命でした…)。



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ワクチン情報2024〜五種混合ワクチン登場

2024年11月08日 08時03分45秒 | 予防接種
2024年4月に五種混合ワクチンが定期接種になりました。
これにより、ワクチンデビューする赤ちゃんの同時接種数が一つ減りました。

五種とは“五つのワクチンが入っている“という意味です。
何が入っているかを確認しましょう;
1.ジフテリア
2.百日咳
3.破傷風
4.ポリオ
6.ヒブ(インフルエンザ菌)

使用できる五種混合ワクチンは二種類あります。
1.ゴービック®:2023年3月薬事承認(阪大微研)
2.クイントバック®:2023年9月薬事承認(KMバイオロジクス)

使用上の違いは、
・ゴービック®は準備操作が必要なく接種可能(プレフィルド)、
・クイントバックは液体とワクチン成分を混合するひと手間が必要です。

両方のワクチンはともに、重篤な副反応は認められず、認可に至りました。

接種対象者;
・定期接種対象者:生後2ヶ月〜7.5歳まで
・接種間隔:
  初回接種:生後2ヶ月〜7ヶ月未満で開始、4〜8週間隔で3回
  追加接種:6〜13ヶ月未満の間隔で1回
 ※ 接種開始月齢によって、接種回数は変わらない
・接種方法:皮下注 あるいは 筋注
・長期療養特例:上限年齢は15歳未満

…あらたに「筋注」が加わったのが特徴です。
ワクチンが2種類存在すると、合計4回接種の中で二つが混ざっても(交互接種)いいの?
という素朴な疑問が発生します。その答えは…

・原則として同一ワクチンを使用

とのことです。
ただ、以前のワクチン(日本脳炎など)は当初交互接種はダメだったけれど、
知見が澄んで問題ないことが判明後は許可された歴史もありますので、
この点は今後変わるかもしれません。

なお、ヒブ+四種混合(DPT/IPV)で開始したら基本的に五種へ変更できません。
しかし転居による自治体変更など、どうしてもの場合は可能、
との注意書きが添えられています。

細かいことですが、
開始が生後7ヶ月を過ぎたらどうなるのか?
という問題もあります。

五種混合登場以前の規定では、
・四種混合は開始時期にかかわらず4回接種。
・ヒブワクチンは開始年齢にリンクして接種回数が異なる。
でした。

では五種混合は? …答えは、
 → 五種混合ワクチンでは生後7ヶ月を過ぎても接種回数を減らす必要はありません。
と、四種混合のルールに従うことになります。

ややこしや〜。

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レプリコンワクチンの免疫は1年もつ?

2024年11月07日 17時59分47秒 | 予防接種
何かと話題のレプリコンワクチン。

私のようにSF好きな人は、
映画「ブレードランナー」に登場する「レプリカント」を連想してしまいます。

国が安全性と効果を認めて認可した薬ですから、
問題なく接種できるはずです。
「生物兵器」と非難する国会議員がいらっしゃいますが、
国の決めたことに反対する立場なんでしょうか?

ワクチン反対派やワクチン反対書籍で金儲けしている人たちには、
恰好のターゲットなのかのしれません…
まあ、勝手に騒いでいてください。

さて、医学的話題に戻りますが、
レプリコンワクチンの効果は如何に?

…従来のmRNAワクチンより効果が長持ちするようです。

▢ レプリコンワクチンvs.従来のmRNAワクチン、接種1年後の免疫原性を比較
ケアネット:2024/10/25)より一部抜粋(下線は私が引きました);
  
 追加接種としての新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する次世代mRNAワクチン(レプリコンワクチン)ARCT-154は、従来のmRNAワクチンであるBNT162b2と比較して優れた初期免疫応答を示し、接種後12ヵ月まで持続することが、50歳以上を含む日本人成人において確認された。The Lancet Infectious Diseases誌オンライン版2024年10月7日号CORRESPONDENCEに掲載の報告より。
 日本の11臨床施設において、少なくとも3回のmRNAワクチン接種歴のある成人(最後の接種は3ヵ月以上前)825人が登録され、ARCT-154群(417人)またはBNT16b2群(408人)に無作為に割り付けられた。接種前のベースライン、および接種後1、3、6、12ヵ月時点で、すべての適格参加者から血清サンプルを採取し、武漢株(Wuhan-Hu-1)およびオミクロン株BA.4/5に対する中和抗体価を測定した。また、ベースラインからその後すべての時点でSARS-CoV-2陰性であった各群30人によるサブセットにおいて、デルタ株、オミクロン株BA.2、BA.2.86、およびXBB.1.5.6に対する中和抗体価が測定された。参加者は18~49歳(<50歳)と50歳以上(≧50歳)の2つの年齢グループに層別化された。
 結果は、中和抗体価の幾何平均(GMT)と両群間のGMT比、ベースラインの中和抗体価(定量下限未満の場合は定量下限の1/2)から4倍以上の上昇を示した割合で定義される中和抗体応答率で表された。
 主な結果は以下のとおり。

・既報のとおり、接種1ヵ月後までに、どちらのワクチンも両株に対して年齢によらず中和抗体価を上昇させた。
接種後1ヵ月時点におけるARCT-154群の武漢株およびオミクロン株BA.4/5に対する反応はBNT162b2群よりも高く、<50歳ではGMT比が1.45(95%信頼区間[CI]:1.22~1.71、武漢株)および1.31(1.01~1.71、オミクロン株BA.4/5)、≧50歳では1.42(1.18~1.72)および1.29(0.96~1.73)であった
GMTは時間の経過とともに両群で低下したが、12ヵ月の追跡期間中に両群間の差は拡大し、<50歳ではGMT比がそれぞれ1.79(95%CI:1.41~2.29、武漢株)、1.68(1.15~2.45、オミクロン株BA.4/5)、≧50歳では2.06(1.55~2.75)、2.14(1.40~3.27)であった。
・ARCT-154のBNT162b2に対する優越性は、両年齢層における中和抗体応答率の一貫した正の差によって裏付けられた。
・4つの変異株に対しても、BNT162b2群と比較してARCT-154群で優れた反応と持続性が確認され、GMT、GMT比、血清中和抗体応答率について同様の傾向がみられた。
・BNT162b2接種後12ヵ月時点で、デルタ株、オミクロン株BA.2、およびXBB.1.5.6に対するGMTはベースラインと同等であったが、ARCT-154群ではデルタ株およびオミクロン株BA.2に対するGMTはベースラインよりも高いままで、オミクロン株XBB.1.5.6に対するGMTもベースラインよりわずかに高かった(152[95%CI:83〜281]vs.106[52〜215])。

<原著論文>
・Oda Y, et al. Lancet Infect Dis. 2024 Oct 7. [Epub ahead of print]

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鼻水止めとけいれんとの関係〜アップデート2024〜

2024年11月06日 12時54分13秒 | 予防接種
風邪の時に処方される鼻水止め(第一世代抗ヒスタミン薬)はけいれんを起こしやすくする、
とされています。
そして近年、鼻水止めを処方する小児科医・耳鼻科医が減少してきました。

ではなぜ、政府・厚生労働省は「鼻水止めを乳幼児に使ってはいけない」と警告を出さないのでしょうか?
鼻水止めの代表格であるペリアクチン(シプロヘプタジン)の添付文書を確認してみましょう。
小児に関係ありそうな項目を抜粋してみますと・・・

【禁忌】
2.5 気管支喘息の急性発作時の患者
2.6 新生児・低出生体重児
【要注意】
9. 特定の背景を有する患者に関する注意
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 気管支喘息(急性発作時を除く)又はその既往歴のある患者抗コリン作用により、喀痰の粘稠化・去痰困難を起こすことがあり、喘息の悪化又は再発を起こすおそれがある。
・・・
9.7 小児等
9.7.1 新生児又は低出生体重児
投与しないこと。新生児・低出生体重児を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。新生児へ投与し、無呼吸、チアノーゼ、呼吸困難を起こしたとの報告がある。
9.7.2 乳児又は幼児
年齢及び体重を十分考慮し、用量を調節するなど慎重に投与すること。過量投与により副作用が強くあらわれるおそれがある。抗 ヒスタミン剤の過量投与により、特に乳・幼児において、幻覚、 中枢神経抑制、痙攣、呼吸停止、心停止を起こし、死に至ることがある。

以上がすべてです。
“痙攣”に関する記述は、「乳児又は幼児」という年齢層において、「過量投与」の際に起こすことがある、とあるのみです。
逆に言うと、通常量では乳幼児であっても安全、ということになりますね。

政府が使用を禁止していない、添付文書が変更されていないということは、
巷で「抗ヒスタミン薬は危険だ!」騒いでいても、
安全性を覆すエビデンスがまだないということなのでしょう。

政府が許可されている薬なので、
小児科専門医である私は、鼻水止めを処方しています。

ただし、効果が今ひとつなのです。
垂れてくる鼻水は減らしてくれるけど効果不十分、
青っ洟や、鼻の奥に溜まって鼻づまり状態では無効です。

そのため鼻水・鼻づまりがつらそうなこどもには漢方薬を提案しています。

漢方薬は鼻水の状態によりくすりを使い分けます。
水っぱなに効く漢方薬、
鼻づまりに効く漢方薬、
あおっ洟に効く漢方薬、
・・・すべて異なるのです。

鼻水止めと痙攣に関して、
以下の記事が目に留まりましたので紹介します。

けいれん発作(診断名はてんかん、てんかん重積、けいれん)に及ぼす抗ヒスタミン薬内服のリスクを評価した報告です。
一つ確認しておきますが、一般の方が心配する「熱性けいれん」がこの中に含まれているのかどうか不明です。そして日本の小児科医は「てんかん」と診断されている患者さんに抗ヒスタミン薬を処方することはありません。
上記より、この報告をどう読んでどう評価すべきか、ちょっと迷います。

結論は、以下の通り;
・発作が起きた1〜15日前に処方された抗ヒスタミン薬はけいれんのリスクを1.22倍高くする(統計学的に有意差あり)。
・生後6ヶ月〜24ヶ月児に抗ヒスタミン薬を投与すると痙攣リスクが約1.5倍高くなる(統計学的に有意差あり)。
・生後25ヶ月〜6歳児では約1.1倍(統計学的に有意差なし)。
・生後7歳以上では約1.1倍(統計学的に有意差なし)。

つまり、
小児に鼻水止めを飲ませると、飲んでいない時より痙攣のリスクが約1.2倍になり、
特に生後2歳未満の乳幼児では約1.5倍になる(それ以上の年齢では差はない)。
ということになります。

効かなくて痙攣のリスクを上げる抗ヒスタミン薬を処方するより、
効いて痙攣のリスクを上げない漢方薬の方がいいですね。


▢ 第一世代抗ヒスタミン薬は児のけいれん発作リスクを高める
「JAMA Network Open」より一部抜粋(下線は私が引きました);

 第一世代抗ヒスタミン薬(以下、抗ヒスタミン薬)は児のけいれん発作リスクの上昇と関連し、特に生後6〜24カ月の児ではリスク上昇が顕著であるとする研究結果が、「JAMA Network Open」に8月28日掲載された。
 慶熙医療院(韓国)のJu Hee Kim氏らは、韓国国民健康保険公団データベースのデータを用いて、第一世代抗ヒスタミン薬の処方と児のけいれん発作リスクとの関連を評価した。対象は、2002年1月1日から2005年12月31日の間に出生し、追跡期間中(2019年12月31日まで)にけいれん発作イベント(ICD-10による診断が、てんかん、てんかん重積、またはけいれん)のため救急外来を受診した児1万1,729人。条件付きロジスティック回帰モデルを用いて、危険期間(index date;発作イベントが初めて生じた日の1〜15日前)における抗ヒスタミン薬の処方が発作イベントの発生に与える影響を、対照期間1(index dateの31〜45日前)および対照期間2(index dateの61〜75日前)と比較し、オッズ比として推定した。加えて、index date時点における年齢層(「生後6〜24カ月」「生後25カ月〜6歳」「7歳以上」)、性別、居住地などで層別化した解析も行った。
 対象者のうち3,178人(男児55.9%)が危険期間、対照期間1、対照期間2のいずれかで抗ヒスタミン薬を処方されていた。

発作イベントの発生は、
 生後6〜24カ月:985例、31.0%
 生後25カ月〜6歳:1,445例、45.5%
 7歳以上:748例、23.5%
第一世代抗ヒスタミン薬の処方を受けた児は、
 危険期間:1,476人(46.4%)
 対照期間1(1,239人、39.0%)
 対照期間2(1,278人、40.2%)
と危険期間が対称期間1・2よりも多かった。

 年齢、性別、居住地などの交絡因子を調整すると、
危険期間における抗ヒスタミン薬の処方は発作イベントのリスク増加と有意に関連していた(調整オッズ比〔aOR〕1.22、95%信頼区間〔CI〕1.13〜1.31)。
 次に年齢層別、男女別、居住地などでそれぞれ層別化して抗ヒスタミン薬の処方と発作イベントリスクとの関連を見たところ、年齢層の影響の大きさに違いが見られ(交互作用のP=0.04)、特に生後6〜24カ月の児ではaORが1.49(95%CI 1.31〜1.70)と有意なリスク増加が認められた。これに対し、生後25カ月〜6歳でのaORは1.11(同1.00〜1.24)、7歳以上の児のaORは1.10(同0.94〜1.28)と有意でなかった。男女別など他の因子別の解析では、有意な結果は得られなかった。
 著者らは、「6〜24カ月の児などけいれんリスクが高い者に対する第一世代抗ヒスタミン薬の処方は、慎重に行うべきであろう。今後、抗ヒスタミン薬とけいれん発作との関連を解明するため、さらなる研究が必要だ」と述べている。(HealthDay News 2024年9月4日)

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鉄不足の現代人

2024年11月06日 05時34分13秒 | 予防接種
近年、何かと話題の“貧血”。
いろいろな病気との関連が言及されています。

小児科領域でも“夜なき”など意外な病態と関連しているとか。
さらに数字的にはヘモグロビンが減少していないけど鉄やフェリチンが減少している“かくれ貧血”も治療対象と暗黙の了解で認められつつあります。

以前私が読んだ本には「人類は鉄を利用してきたが、それが過剰では健康を損ねる、ギリギリ足りるくらいがちょうどよい」と書かれていました。

さて、人類は鉄とどのようなスタンスでつき合っていけばよいのでしょう?

<ポイント>
・鉄が不足している人は、疲労感、息切れ、めまい、頭痛といった症状、さらには心臓病などを経験する。
・鉄分の不足は、貧血の原因として最も一般的だ。厚生労働省の令和元(2019)年国民健康・栄養調査によれば、日本では男性の10.8%、女性の13.5%が貧血の基準に当てはまる。
・鉄不足は短期的にも長期的にも、健康にさまざまな悪影響を及ぼす可能性があり、リスクのある人は鉄分レベルの変化を確認すべき。
・月経のある女性は男性より鉄分が多めに必要で、1日の推奨量は15~64歳で10.5~11ミリグラム(18歳以上の男性の場合、1日の推奨量は7~7.5ミリグラム)だ。しかし、国民健康・栄養調査によれば、日本の女性は平均値でその6割ほどしか摂取していない。
・鉄の欠乏は、脳に変化を生じさせ、集中力の欠如や記憶障害など精神衛生上の問題を引き起こす可能性がある。
・糖尿病、高コレステロール、高血圧といった併存する病気と組み合わされた場合、鉄分不足は慢性疾患を発症するリスクをさらに高める。
・鉄分不足に似た症状、たとえば活力や運動・作業能力の低下は、心臓病の進行を示す目立った兆候の例でもある。貧血の有無にかかわらず、心不全患者の鉄分不足を治療すると、生活の質と再入院率の両方が改善される。

ほとんど常識的な内容ですが、新たな知識として最後の3項目が挙げられます。
鉄の欠乏は脳機能に影響を及ぼすこと、
生活習慣病に鉄不足が加わるとさらなる慢性疾患の発症リスクを高めること。
心臓の機能にも鉄の補充はよい影響を与えること。

これらの知見を元に、将来ガイドラインが書き換えられることでしょう。


▢ 鉄分不足は世界で20億人以上、心臓病など深刻な悪影響も
日本女性の摂取量は推奨量の6割、貧血のほか慢性疾患やメンタルヘルスにも影響
2024.11.05:National Geographic)より一部抜粋(下線は私が引きました);
・・・
 世界では20億人以上の人々が鉄分不足に悩まされている。鉄分はいくつかの重要な体の機能にとって欠かせないミネラルであり、不足している人は、疲労感、息切れ、めまい、頭痛といった症状、さらには心臓病などを経験することが少なくない。
 鉄分不足はあらゆる年齢の男女がなりうるが、妊婦など特に影響を受けやすい人々もいる。鉄分不足を放置すると、貧血、つまり健康な赤血球の不足へ容易に進行する。鉄分の不足は、貧血の原因として最も一般的だ。厚生労働省の令和元(2019)年国民健康・栄養調査によれば、日本では男性の10.8%、女性の13.5%が貧血の基準に当てはまる
 こうした状態は、短期的にも長期的にも、健康にさまざまな悪影響を及ぼす可能性があり、リスクのある人は鉄分レベルの変化を確認すべきだと語るのは、米スタンフォード大学の母体・胎児医学の講師であり、女性の生殖に関する健康を専門とするイログエ・イグビノーサ氏だ。
「通常、人が貧血になる場合、すでにしばらくの間、鉄分不足が続いてきたことを意味しています」と氏は言う。

▶ 鉄分不足や貧血に悩まされるのはどんな人たちか
 鉄分不足を抱えて生活すると、体に多大な負担をかける。鉄分は、赤血球が体内に酸素を運ぶために必要なタンパク質であるヘモグロビンを作るのに欠かせない。そのため、鉄分の量が少ないと、臓器、筋肉、組織が酸素を十分に受け取れず、最大の力を発揮できなくなる。
 多くの人は食物から十分な鉄分を吸収しているが、食事での摂取だけでは鉄分が足りない人もいる。それだけで死につながることはまれだが、鉄分不足は腎臓病や肝臓病といった慢性疾患を悪化させたり、感染症やけがからの回復を遅らせたりすることが知られている。なぜなら、そうした状態の修復には酸素が必要だからだ。・・・
 厚労省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によれば、月経のある女性は男性より鉄分が多めに必要で、1日の推奨量は15~64歳で10.5~11ミリグラムだ。しかし、国民健康・栄養調査によれば、日本の女性は平均値でその6割ほどしか摂取していない。妊娠の中・後期はさらに9.5ミリグラム、妊娠初期と授乳中は2.5ミリグラムを加える必要がある。18歳以上の男性の場合、1日の推奨量は7~7.5ミリグラムだ。
 鉄欠乏性貧血は通常、徐々に進行するが、女性の方が男性よりもなりやすい。これは、月経周期によって悪化するためだとイグビノーサ氏は言う。出血量が多かったり、月経の期間が長かったりする場合には、もともと限られた鉄分の蓄えがさらに減ってしまう。
・・・
 体にとってこれほど重要な栄養素の欠乏は、脳に変化を生じさせ、集中力の欠如や記憶障害など精神衛生上の問題を引き起こす可能性がある。これらの不調は、場合によってはストレスやその他の生活要因が原因だと誤解されるかもしれない。
・・・
▶ 鉄分不足と心臓の健康
 体が弱っている気がする、やけにだるい感じがするというだけでは、医師に診てもらうまでもないと思うかもしれないが、この問題を放置しておくと、後になって不必要な苦痛を味わうことになる。
 こうした兆候を注意深く観察するのは極めて重要だと、米ベイラー医科大学教授のビケム・ボズカート氏は述べている。
 糖尿病、高コレステロール、高血圧といった併存する病気と組み合わされた場合、鉄分不足は慢性疾患を発症するリスクをさらに高める。また、鉄分不足に似た症状、たとえば活力や運動・作業能力の低下は、心臓病の進行を示す目立った兆候の例でもある
 「心臓はポンプとして血液を全身に送り出すだけでなく、心臓自体の筋肉にも血液を供給します」とボズカート氏は言う。「たとえば、血管に詰まりがある人が鉄分不足や貧血に陥ると、心筋への血液の供給が困難になります」
 一般に、心血管系の健康状態を評価する際、医師は患者の最高酸素摂取量(ピークVO2)を測定する。ピークVO2とは、激しい運動時に体が利用できる酸素量のことだ。
 体の中で使える鉄分の量は、その人が持つヘモグロビンの量に影響を与える。ヘモグロビンが多いほど、酸素はより効率的に体内に運ばれる。鉄欠乏性貧血はヘモグロビンの生成を妨げるため、ピークVO2の低下につながる可能性がある。
 これらの数値はまた、将来的な心臓病の発症リスクを予測するうえでも役立つ。入院患者のピークVO2は、どのような種類の治療を受けたらよいかを評価する際に重要な役割を果たし、たとえば心臓移植などの高度な救命措置を受けられるかどうかの判断にも関わってくる。
 ボズカート氏によると、貧血の有無にかかわらず、心不全患者の鉄分不足を治療すると、生活の質と再入院率の両方が改善される証拠が示されているという。
 一方、現在自宅で軽度の鉄欠乏性貧血の症状に対処している人の場合、治療のプロセスははるかに単純だ。専門家は、鉄分のサプリメントを摂取するか、鉄分を豊富に含む食事を取れば、全体的な健康状態を改善できるとしている。ただし、薬を飲む必要があるかどうかを判断するうえでは、かかりつけ医と相談し、自分に合ったプランを決めるのが最善だろう。
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小児夜尿症診療アップデート2024

2024年11月01日 07時36分35秒 | 小児医療
先日、小児夜尿症に関するWEBセミナーを視聴しました。
基本的な内容、アップデートされた内容をメモしておきます。

気になったこと。

…ガイドラインでは治療の第一選択が明示されていません。
 薬物療法(ミニリンメルト®)とアラーム療法が併記されています。
 以前は、尿を濃くして量を減らすホルモン剤(ミニリンメルト®)を使用する際は、
 尿の濃さ(比重、浸透圧)を調べて「薄い尿」を確認する必要がありました。
 そのような時代に育った小児科医である私には、
 現在の診療ガイドラインは頷けないところがあります。

▢ 夜尿症を治療すべき理由
・夜尿があると自尊心や自己評価に悪影響が生じる。
・宿泊行事(キャンプや修学旅行など)に対応する必要がある。
・治療した方が早く治る傾向がある。
・他の病気がないかどうか検査する必要がある。
・発達症(ADHDやASD)を発券する契機になる。

▢ 受診した際の診療・検査
・尿検査
・昼間の尿漏れ、再発例、診察で問題が発見された場合は病院で詳しい検査(血液・超音波・画像検査)

▢ 夜尿で注意すべき症状と疑われる病気
・昼間の尿漏れ → 糖尿病、尿崩症、脊髄疾患など
・体重減少、成長障害、嘔気 → 慢性腎臓病
・異常な喉の渇き、夜間多飲 → 糖尿病、尿崩症
・急に再発した夜尿症 → 糖尿病、心身症、他
・ひどいイビキ、睡眠時無呼吸 → 睡眠障害
・排尿困難 → 泌尿器科的疾患

▢ 夜尿患者さんの治療フローチャート夜尿症診療ガイドライン2021より)

▢ 夜尿症のみ(単一症候性夜尿症)の治療の進め方
▶ Aコース
・夜間多尿があり、膀胱容量正常 → デスモプレシン
・夜間尿量正常、低膀胱容量 → アラーム療法
・夜間多尿+低膀胱容量 → デスモプレシン+アラーム療法
▶ Bコース
・デスモプレシンとアラーム療法のメリット・デメリットを説明し、
 患者・家族に選択させる。

…Aコースが古典的な方針、
 Bコースは最近の潮流、でしょうか。

▢ 治療開始後、効果不十分な場合の対応
・患者・保護者の治療意欲の再確認
・生活指導遵守の再確認
・デスモプレシン服用方法の再確認
・アラーム療法使用方法の再確認

▢ 生活指導の工夫
・夕食後の水分摂取 → 喉が渇いたら氷を舐めるなどの工夫
・トイレに行かずに寝てしまう → 声がけを徹底する
・ふとんに入っても起きている時間が長い → もう一度、排尿してから入眠
・排尿が雑 → 寝る前は座って足代を設置して。30秒以上は排尿に時間をかける
・就寝前にはブルーライト(スマホ・タブレット)に暴露しない

▢ 定時排尿(昼間尿失禁がある場合)
・ある程度決まった時間間隔で排尿する
(タイマーの使用、学校の休み時間、家族の声がけ)
例)1日7回排尿、睡眠8時間 → 日中は約2時間毎

▢ 適切な排尿姿勢とは?
・足代の設置(空き段ボールで代用可)
・足の裏で踏ん張り、背筋を伸ばす
・最低でも排尿にかける時間は30〜60秒

▢ デスモプレシン(ミニリンメルト®)の効果が不十分なときの確認事項・工夫
・水分制限の徹底。夕食後はコップ1杯の水分まで(副作用対策)
・他疾患(アレルギーなど)に必要な薬剤もできるだけOD錠へ変更
・一度開封した薬剤は(湿気の吸着により)薬効が下がる恐れがあるため使用しない
・必ず「舌下」で溶かす(飲み込まない!)
・歯磨きを終えてから服用
・個々の患者さんに対し、効果的な服用のタイミングを探す
(就寝30分前〜就寝直前、と服用のタイミングにより多少の効果の差がある)
・夕食と就寝時間が近いと薬効が得られにくい
 → 2時間以上間隔を開ける
(帰宅が遅くなり夕食後にすぐに就寝してしまっている、など)
・薬の投与量が少ない可能性
 → 120μgで効果が乏しい場合は、早期(1〜2週間後)には240μgまで増量してみる。
 たとえ夜尿日数が減らなくても夜尿量(オムツの重さ)が軽くなっていれば、
 一定の効果はありと判断する
★ 保護者には240μgが本来の薬用量であることをあらかじめ伝えておくと、
 120μgから増量した際に余計な不安を与えずに済む。

▢ アラーム療法の効果が効果的な患者・不向きな患者
(効果的)
・治療意欲が高い、高学年(宿泊行事を控えている)
・家族の協力が得られる
・夜尿日数が多く、ほぼ連日アラームが鳴る(トレーニング効果が出やすい)
(不向き)
・治療意欲が低い
・家族の協力が得られない(小さい兄弟や病気療養者がいる)
・そもそも夜尿日数が少ない(トレーニング効果が得られにくい)
・屋内のペットが驚いてしまう
・費用負担がまかなえない(保険適用外)

▢ (小括)エキスパートが考える夜尿症診療の原則〜初期治療〜
・患者・保護者に治療意欲がある場合には積極的治療を提案
・初期治療では尿検査実施(必須)
・気になる全身症状や既往歴がある場合は精査を提案
・治療開始前に生活指導を実施、しかし生活指導だけで漫然と経過観察しない
・生活指導は夜尿治療が終了するまで継続
・治療法は患者の生活背景に配慮して選択する
・デスモプレシンの効果的な服用方法を細かく説明する
・アラーム療法の適切な使い方を細かく指導する

▢ 併存疾患の治療〜便秘
・夜尿症児は便秘の併存が比較的多い
・便秘は夜尿の病態に関与し治療効果にも影響する
・聞き取りは親だけではなく患者本人にも確認する

▢ 併存疾患の治療〜神経発達症(特にADHD)
・神経発達症児では排尿障害の頻度が高い
・ADHDの約20%に夜尿症を認める
(夜尿症のみ:17.6〜20.7%、夜尿症+下部尿路症状:23.1%)
・保護者には治療開始前に「難治性夜尿症児には発達面の問題も関連している場合がある」と事前に伝えておく

▢ ADHD児が治療困難な理由〜治療コンプライアンスの低下
1.不注意
・寝る前にトイレに行き忘れる
・トイレに行くよう声がけされても聞いていない
・薬を飲み忘れる
2.多動
・排尿の際に座っていられない、足をブラブラする
・30〜60秒間の排尿時間が待てない
・トイレに行っても雑な排尿で終わらせる
3.衝動性
・夕食後の飲水制限を守れない
・アラームが鳴ったら目覚めるというルールが守れない

▢ ADHD児への生活指導の工夫
・視覚へ訴える…張り紙、イラスト化、複数箇所に掲示
・言葉を極力けずる
例)座って、足台を使って、30秒間かけてていねいにオシッコしてね
 → 寝る前、排尿!
・ある程度の割り切り…たとえ1回だけでも寝る前にトイレを意識できればいい
 → 褒める!自身を持たせる!報酬を設定する!

▢ (小括)エキスパートが考える夜尿症診療の原則〜ADHD併存例
(保護者への対応)
・ADHDがあると治療期間が長引く可能性を最初の外来で伝える
・メッセージはシンプルにし、情報過多にならないよう心がける
・患者向け冊子を活用するなど、文字や言葉よりも絵やマンガで説明する
(小児神経専門医への紹介)
・高学年(小学5〜6年生以降)でADHDを併存
・生活指導が守れず、デスモプレシンやアラームがまったく無効
・保護者から小児神経専門医の受診希望がある

▢ 単一項目選択症候性夜尿症に対して、デスモプレシン+アラーム併用でも改善がない場合
(夜尿症診療ガイドライン2021より)
・抗コリン薬、三環系抗うつ薬の併用を考慮
★ 抗コリン薬は夜尿症に対する保険適用はない

▢ 夜尿症治療における抗コリン薬の位置づけ(ガイドラインより)
・非単一症候性夜尿症に伴う昼間尿失禁、尿意切迫間、頻尿に対して有効
・単一症候性夜尿症に対しては第一選択薬として推奨されないが、
 デスモプレシンとの併用療法としては検討してもよい

▢ 夜尿に対する抗コリン薬の副作用と問題点
・便秘によるデスモプレシンの効果の減弱・残尿量増加による尿路感染症の発症
・使用前に適切な排便・排尿週間の確率を優先させる

▢ 夜尿に対する三環系抗うつ薬の位置づけ(ガイドラインより)
・三環系抗うつ薬は50年以上前から夜尿症の治療に使用され保険収載もされているものもある
・現在の国内外のガイドラインでは、デスモプレシン、アラームに次ぐ第三選択の位置づけ
・心毒性などの重篤な副作用、思わぬ服用(オーバードーズ)などに注意
・使用に際しては夜尿症専門医に依頼可

▢ エキスパートが考える夜尿症診療の原則
〜デスモプレシンやアラーム療法でよくならない場合〜
・再度、治療意欲の確認、併存症の有無をルールアウト
・ガイドラインの診療アルゴリズムに従い、抗コリン薬や三環系抗うつ薬の併用を検討
・さらなる追加治療や精密検査に不安がある場合は夜尿症専門医師へ紹介を検討

▢ 夜尿症専門医・外来への紹介のタイミング
・併用療法にても治療効果が乏しい場合

▢ 泌尿器科へ紹介を考えるとき
・昼間の下部尿路症状(LUTS)が目立つ患者や泌尿器科的問題が疑われる患者
★ LUTS
1.覚醒時の尿失禁
2.尿意切迫感(急に起こる、ガマンすることが困難な強い尿意)
3.排尿困難(尿線微弱、遷延性排尿、腹圧をかけての排尿)
4.排尿回数の過少(1日3回以下)または過多(1日8回以上)
5.断続尿線
6.尿がまん姿勢
7.残尿感
8.排尿後のちびり
8.外性器や下部尿路の疼痛

▢ 幼児で下部尿路症状を疑うエピソード・しぐさ
・下着が湿っている、下着に尿のシミがある
・足をクロスさせてモジモジする
・モジモジ体をくねらせながら夢中でゲームやYoutubeをやっている
・陰茎をつまんで排尿をガマンしている
・しゃがみ込んでかかとで会陰部を圧迫する
・トイレに駆け込んで慌ててオシッコする
・さっきまで平気だったのに急に「まま。おしっこ!」と言うことが多い
・便座の周りや便器カバーに尿が飛び散っている(男児)




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