ようやく読み終わりました。このところ思わせぶりに書いておりましたのは、「マリア様がみてる」新刊「未来の白地図」、ではありません。これはもちろん既に読み終わって、更に3回くらい読み返しておりますので、いずれ近い内に感想は書きますけど、今回読むのに手間取っていた本というのは、瀬名秀明著「ハル」(文春文庫)のことです。お話の主題はロボット。2001年から2030年まで、架空のロボットが普及した世界を、それぞれ少しずつリンクした5つのお話で紡いであります。更にその幕間に人類が滅亡したはるか未来を舞台にした、ロボットの少年の物語が断片的に語られます。もちろんこの作家らしく、背景をなすロボット工学関係の科学技術設定は骨太そのもの。リアリティ溢れる人物(大半が研究者というのがまたこのヒトらしい)が次々と登場、現実の世界と架空のお話とを違和感無く融合して、めくるめくドラマを繰り広げつつ、間近な将来に迫るヒトと機械との関係性についてきっちりと語られていきます。最新刊でも人工知能を題材にした話を書いているとのことなので、この分野は前々作「ブレイン・ヴァレー」からこっち、数年来のライフワークになっているのかも知れません。
この作者の魅力は、その分野の論文・著書を渉猟し、最前線に立つ研究者達とのインタビューと言う名の討論を通じて、がちがちの科学ドキュメンタリーも手がけるほどの理解をベースに物語を組み上げるところです。しかも単なる科学オタクがやらかすような知識のひけらかしをするわけでなく、適度な露出と驚くべき飛躍を無理なくつなぎ、ちゃんとしたエンターテイメントとして見せてくれるところが、最大の魅力です。それは時にハードに、時にハートフルに、まるでクラークとアシモフとハインラインを化合してその精髄を高純度に精製・結晶化したような輝きを持ちながら、決して過去の作家達の焼き直しではない作者独自の言霊を駆使して、創作世界を披露してくれます。もっとも科学苦手な文系にはハードルが高かったりするところがあるのかも知れませんが、この「ハル」においては、そんな金気臭いところが比較的少なく、理系でなくても存分にその世界を味わうことができる造りになっています(多分)。円熟味を増した作者の持ち味が存分に堪能できる豪華で贅沢極まりない一冊と言えると思います。ホントいつかは私もこんなレヴェルで己が調べを語ることができるようになりたいものです。そんな羨望を抱きつつ、私はこの作家と同世代であることの幸運を、心から感謝します。何故なら、お互いが普通に生きていれば、私は生涯この作家のつむぎ出す新たな物語を、リアルタイムに味あうことができるのですから。私は本気で、瀬名秀明と同年同月同日に生まれずとも、同年同月同日に死ぬことになりますようにと願わずにはいられません。・・・イヤ、絶筆が死後出版されたりしたら思い切り悔しいので、ちょっぴり私の方が長生きしたいかも(笑)。
この作者の魅力は、その分野の論文・著書を渉猟し、最前線に立つ研究者達とのインタビューと言う名の討論を通じて、がちがちの科学ドキュメンタリーも手がけるほどの理解をベースに物語を組み上げるところです。しかも単なる科学オタクがやらかすような知識のひけらかしをするわけでなく、適度な露出と驚くべき飛躍を無理なくつなぎ、ちゃんとしたエンターテイメントとして見せてくれるところが、最大の魅力です。それは時にハードに、時にハートフルに、まるでクラークとアシモフとハインラインを化合してその精髄を高純度に精製・結晶化したような輝きを持ちながら、決して過去の作家達の焼き直しではない作者独自の言霊を駆使して、創作世界を披露してくれます。もっとも科学苦手な文系にはハードルが高かったりするところがあるのかも知れませんが、この「ハル」においては、そんな金気臭いところが比較的少なく、理系でなくても存分にその世界を味わうことができる造りになっています(多分)。円熟味を増した作者の持ち味が存分に堪能できる豪華で贅沢極まりない一冊と言えると思います。ホントいつかは私もこんなレヴェルで己が調べを語ることができるようになりたいものです。そんな羨望を抱きつつ、私はこの作家と同世代であることの幸運を、心から感謝します。何故なら、お互いが普通に生きていれば、私は生涯この作家のつむぎ出す新たな物語を、リアルタイムに味あうことができるのですから。私は本気で、瀬名秀明と同年同月同日に生まれずとも、同年同月同日に死ぬことになりますようにと願わずにはいられません。・・・イヤ、絶筆が死後出版されたりしたら思い切り悔しいので、ちょっぴり私の方が長生きしたいかも(笑)。