櫻井 智志
第一章 東京新聞による選挙報道
さいしょに東京新聞の選挙結果報道を引用する。
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九日に投開票された知事選は、現職の上田清司氏(67)が新人四人を破って四選を果たした。上田氏は今回、自身の任期を三期までと定めた多選自粛条例を破って出馬した。その是非が争点の一つとなったが、有権者は上田県政の継続を支持する結果となった。条例破りを厳しく批判した元総務官僚塚田桂祐氏(58)と、安全保障関連法案の廃案を訴えた県労働組合連合会議長柴田泰彦氏(62)はともに支持を伸ばせなかった。投票率は26・63%で、過去最低だった前回を1・74ポイント上回った。 (知事選取材班)
朝霞市にある上田清司氏の事務所では、午後八時に投票が締め切られた直後に「当選確実」の速報がテレビで流れると、集まった支持者から大きな拍手と歓声が沸き起こった。上田氏は選挙戦で真っ黒に日焼けした顔で「早々と当確をいただき、感激感謝している。今回は市長会、町村会を中心に各団体から応援をいただき、支援の輪が大きく広がった」と語った。
今回は自身が定めた多選自粛条例を破って出馬し、強い批判も受けた。上田氏は「私自身は条例を守れなかったが、『公のために、日本のために、社会のために頑張る』という志を一度も曲げたことはない。選挙の審判を受けて一定程度の理解を得られた」との考えを示した。
街頭では三期十二年の実績として、県の外郭団体の業績改善や、県に本社を移転した企業の増加などを強調。四期目の公約には団塊世代が七十五歳以上になる二〇二五年を見据え、介護施設の増設や大学病院誘致など高齢化対策を中心に訴えてきた。
告示後は、支援を受けた民主党県連や維新の党の国会議員や地方議員だけでなく、自民党衆院議員の鳩山邦夫氏や平沢勝栄氏らも応援に駆けつけた。大沢正明・群馬県知事ら県外の首長も埼玉入りし、上田氏支持を表明。政界の幅広い人脈をアピールした。
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私見
よおく記事を読むと、当選した知事は、維新の党や民主党だけでなく、自民党本部肝いりの応援が入り、実質的には「維新・民主・自民本部」の合従連衡であったことがわかる。
自民党県連と自民党本部とが別々の候補を肩入れして、選挙を進めている。このような実態も知らずに、共産党は野党共闘しないと非難する意見がある。
まず実態をよく踏まえて批判すべきだ。
石川英行 上田きよし たけだのぶひろ 柴田やすひこ つかだ桂祐
49,884 891,822 32,364 228,404 322,455
順位 4 1 5 3 2
有効総得票 1524929票
上田きよし 58%
つかだ桂佑 21%
柴田やすひこ 15%
柴田やすひこ候補に寄せられた22万8404票は、当選はかなわなかったが、大切に育てれば次の脅威となろう。上田知事は公約をやぶっての次の出馬はないと思われる。つかだ候補が維新自公民で次回出るか。
柴田候補は自民県連の推すつかだ候補と堂々とした闘いだった。
第二章 得票率分析
以下に埼玉県内の三候補の得票率を掲示する。
得票率は小生の試算なので正確さはやや欠けるかも知れない。
全県
上田きよし 58% 柴田やすひこ 15% つかだ桂佑 21%
市部合計
上田きよし 58% 柴田やすひこ 15% つかだ桂佑 21%
町村部合計
上田きよし 65% 柴田やすひこ 13% つかだ桂佑 18%
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市部合計
上田きよし 58% 柴田やすひこ 15% つかだ桂佑 21%
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さいたま市合計
上田きよし 56% 柴田やすひこ 16% つかだ桂佑 23%
さいたま市西区
上田きよし 55% 柴田やすひこ 15% つかだ桂佑 24%
さいたま市北区
上田きよし 55% 柴田やすひこ 15% つかだ桂佑 24%
さいたま市大宮区
上田きよし 57% 柴田やすひこ 14% つかだ桂佑 23%
さいたま市見沼区
上田きよし 56% 柴田やすひこ 17% つかだ桂佑 22%
さいたま市中央区
上田きよし 56% 柴田やすひこ 16% つかだ桂佑 22%
さいたま市桜区
上田きよし 56% 柴田やすひこ 16% つかだ桂佑 23%
さいたま市浦和区
上田きよし 56% 柴田やすひこ 16% つかだ桂佑 22%
さいたま市南区
上田きよし 55% 柴田やすひこ 16% つかだ桂佑 24%
さいたま市緑区
上田きよし 56% 柴田やすひこ 16% つかだ桂佑 17%
さいたま市岩槻区
上田きよし 56% 柴田やすひこ 14% つかだ桂佑 24%
川越市
上田きよし 58% 柴田やすひこ 16% つかだ桂佑 21%
熊谷市
上田きよし 64% 柴田やすひこ 12% つかだ桂佑 19%
川口市
上田きよし 52% 柴田やすひこ 17% つかだ桂佑 25%
行田市
上田きよし 59% 柴田やすひこ 13% つかだ桂佑 25%
秩父市
上田きよし 50% 柴田やすひこ 14% つかだ桂佑 20%
所沢市
上田きよし 51% 柴田やすひこ 22% つかだ桂佑 24%
飯能市
上田きよし 55% 柴田やすひこ 15% つかだ桂佑 23%
仮須市
上田きよし 58% 柴田やすひこ 10% つかだ桂佑 26%
本庄市
上田きよし 61% 柴田やすひこ 12% つかだ桂佑 20%
東松山市
上田きよし 64% 柴田やすひこ 14% つかだ桂佑 17%
春日部市
上田きよし 57% 柴田やすひこ 16% つかだ桂佑 21%
狭山市
上田きよし 57% 柴田やすひこ 15% つかだ桂佑 24%
羽生市
上田きよし 65% 柴田やすひこ 10% つかだ桂佑 2o%
鴻巣市
上田きよし 64% 柴田やすひこ 12% つかだ桂佑 20%
深谷市
上田きよし 61% 柴田やすひこ 13% つかだ桂佑 21%
上尾市
上田きよし 61% 柴田やすひこ 15% つかだ桂佑 18%
草加市
上田きよし 58% 柴田やすひこ 15% つかだ桂佑 19%
越谷市
上田きよし 59% 柴田やすひこ 14% つかだ桂佑 21%
蕨市
上田きよし 53% 柴田やすひこ 17% つかだ桂佑 24%
戸田市
上田きよし 60% 柴田やすひこ 19% つかだ桂佑 19%
入間市
上田きよし 56% 柴田やすひこ 16% つかだ桂佑 21%
朝霞市
上田きよし 65% 柴田やすひこ 12% つかだ桂佑 18%
志木市
上田きよし 71% 柴田やすひこ 12% つかだ桂佑 14%
和光市
上田きよし 60% 柴田やすひこ 14% つかだ桂佑 21%
新座市
上田きよし 58% 柴田やすひこ 20% つかだ桂佑 17%
桶川市
上田きよし 65% 柴田やすひこ 13% つかだ桂佑 18%
久喜市
上田きよし 59% 柴田やすひこ 13% つかだ桂佑 21%
北本市
上田きよし 64% 柴田やすひこ 13% つかだ桂佑 19%
八潮市
上田きよし 58% 柴田やすひこ 14% つかだ桂佑 21%
富士見市
上田きよし 58% 柴田やすひこ 17% つかだ桂佑 21%
三郷市
上田きよし 59% 柴田やすひこ 16% つかだ桂佑 19%
蓮田市
上田きよし 56% 柴田やすひこ 15% つかだ桂佑 24%
坂戸市
上田きよし 57% 柴田やすひこ 15% つかだ桂佑 21%
幸手市
上田きよし 62% 柴田やすひこ 16% つかだ桂佑 20%
鶴ヶ島市
上田きよし 58% 柴田やすひこ 15% つかだ桂佑 20%
日高市
上田きよし 57% 柴田やすひこ 16% つかだ桂佑 21%
吉川市
上田きよし 59% 柴田やすひこ 13% つかだ桂佑 21%
ふじみ野市
上田きよし 54% 柴田やすひこ 20.45% つかだ桂佑 20.42%
白岡市
上田きよし 68% 柴田やすひこ 10% つかだ桂佑 18%
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町村部合計
上田きよし 65% 柴田やすひこ 13% つかだ桂佑 18%
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北足立郡 伊奈町
上田きよし 62% 柴田やすひこ 15% つかだ桂佑 19%
入間郡 三芳町・毛呂山町・越生町
上田きよし 59% 柴田やすひこ 15% つかだ桂佑 22%
比企郡 滑川町・嵐山町・菅野町・小川町・川島町・吉見町・鳩山町・ときがわ町
上田きよし 66% 柴田やすひこ 15% つかだ桂佑 17%
秩父郡 横瀬町・皆野町・長瀞町・小鹿野町・東秩父町
上田きよし 65% 柴田やすひこ 13% つかだ桂佑 17%
児玉郡 美里町・神川町・上里町
上田きよし 65% 柴田やすひこ 11% つかだ桂佑 18%
大里郡 寄居町
上田きよし 61% 柴田やすひこ 16% つかだ桂佑 17%
南埼玉郡 宮代町
上田きよし 63% 柴田やすひこ 12% つかだ桂佑 20%
北葛飾郡 杉戸町・松伏町
上田きよし 66% 柴田やすひこ 11% つかだ桂佑 16%
以上の作業を経て、柴田候補が自民党のつかだ候補を、新座市とふじみ野市で逆転していることがわかった。
新座市 柴田候補6967票 つかだ候補5656票
ふじみ野市 柴田候補4715票 つかだ候補4711票
これらの具体的なデータをもとに最終作業として執筆予定の考察を次の章に回したい。
第三章 考察
俗説に、県知事選挙に国会の安保法制を公約にするのは異なる、という異見がある。しかし、それは間違っている。柴田候補が「戦争法案廃案と憲法擁護」とを掲げたのは、ずばり的を射ている。柴田陣営の公約と選挙闘争によって、なんと自民党候補と接戦を演じ、県内の新座市とふじみ野市とでは、自民党を破り、上田知事に迫った。もしも柴田候補がそのような明快な戦略をたてなければ、上田、塚田よりも他の二人に近い泡沫候補なみになったかも知れない。
私の知る限りでは、国会議員をつとめた吉川春子さんが県知事選挙に出馬、その時は24%近い得票率と思う。しかし候補者数によって、時期によって数値は変わる。柴田候補の15%の得票率は、前回の候補を得票数、得票率をも上回る。23万票に近く15%の成果は、県知事選挙の土壌を耕す熱心な営みとその成果だった。
2期で引退し3期目には出馬しないと選挙公約として、公約を平然と破った上田知事は、選挙公約も当選するためにはなんでも言うという方便としての公約という印象を残した。そのことは史上2番目という低投票率となり、埼玉県の議会制民主主義を破壊する暴挙である。当選しさえすればなんでもするという上田知事は実は自民党本部と連絡をとりあい、自民党県連とは異なる水面下の動きをとった。東京新聞では、自民党二階派の二階氏が上田氏に連絡をとり、県とは異なっていた。
柴田候補は、誠実に県内各地を回り、有権者に語りかけた。草の根からの対話を重視した。さらにインターネット、SNS、ツイッター、フェイスプックなどでたえず綿密な情報戦を闘いぬいた。ひとつ言えば、会のブログも県委員会のブログも、いま以上に県民からの声をトップページに明瞭にして相互のコミュニケーションをとりいれたらどうか。アドレスやよびかけは明示されているが、もう一歩前進させてもよいと考える。
現役の国会議員も北関東ブロックの塩川鉄也さん、梅村さえこさん、中央の小池晃さん、市田忠義さん、県内のリーダー伊藤岳さんなど選挙運動と党中央とが有機的な結合を働かせていた。
今回の闘争を積み重ねれば、次回の県知事選挙の飛躍も期待しうる。県委員会と県民の会とが有機的で機敏な取り組みをおこなっていた。群馬、埼玉と二つの県は学校教職員から出ていた。両県とも当選には届かなかったけれど、その勇猛果敢な実践は充分に県内世論を高めた。次の参院選など次を大いに期待したい。