http://digital.asahi.com/articles/DA3S11831609.html2015年6月29日05時00分
◇がんを知ろう
国立がん研究センターが4月に公表した「胃がん検診ガイドライン」(2014年度版)で、内視鏡検査が初めて「推奨」とされた。独自に公的負担を導入した地域では、がんの発見率が高まるなど成果も出ている。ただ、広く普及するには専門医の確保や自治体の負担増など課題もある。
■発見率、X線の3倍超 公費負担の新潟市
「力を抜いて、目を開けて遠くを見てください」。11日午前、新潟市の診療所「吉村医院」の検査室。横になった男性(79)に吉村朗院長(45)が語りかけた。慣れた手つきで、口から内視鏡を入れていく。
先端部の小型カメラから映し出されたモニターを見ながら、「つばをできるだけのみ込まないで」などと助言しつつ、奥の十二指腸から胃、食道と診て、撮影をしていく。4分程度で内視鏡は抜かれた。
別室で画像を見ながら「きれいでポリープもありません」と診断された。男性は「胃だけはしっかり診てもらわないと。最初はゲーゲーなってたけど、もう慣れっこだよ」と笑う。
内視鏡には、口から入れる経口と鼻から入れる経鼻があり、それぞれ特徴=イラスト=がある。年間約600件の検査をする吉村医院の場合、経口と経鼻の割合は半々だが、本人が迷った場合、経口を勧めるという。小型カメラが大きい分、解像度が高くて観察できる視野が広く、より精度の高い検査ができるためだ。
新潟市は2003年度から、胃がんの内視鏡検査の公的負担を独自に始めた。40歳と45歳、50~59歳は、検査料約1万2千円のうち、3400円を自己負担してもらう。国民健康保険の加入者の場合、さらに補助が増えるため自己負担は1700円。60歳以上は無料。
市医師会によると、03年度に検査を受けた約3万5千人では、X線が8割で、内視鏡は2割だったが、09年度に比率が逆転。12年度に受けた約6万9千人では内視鏡が6割に上る。
内視鏡検査を選択する人が増えた理由について、新潟県立がんセンター新潟病院の成沢林太郎・臨床部長(消化器内科)は、がん発見率の高さを挙げる。03年度以降の同市の胃がん発見率は、X線が毎年0・2~0・3%(千人あたり2~3人)。一方、内視鏡は0・74~1・07%と3倍以上になる。食道など他の部位の発見を含めると0・89~1・21%に上がる。
高い発見率の背景には診断結果を検証する「読影委員会」の存在がある。事務局となる市医師会に週1回、内視鏡専門医らが集まり、見落としがないか検証する。同委による検証で、11年度までに当初「問題なし」とされたケースの8・9%でがんが見つかった。市医師会長の藤田一隆・藤田内科消化器科医院長は「自分の診断を評価されることに抵抗のある医師もいるが、ダブルチェックで高い発見率につながっている」と話す。
■死亡率を下げる効果
国立がん研究センターは今年4月に公表した胃がん検診ガイドライン(2014年度版)で内視鏡検査を初めて推奨した。対象はリスクの高まる50歳以上が望ましく、2~3年おきに受ければよいとしている。
前回の05年度版ガイドラインで推奨されたのはX線検査だけ。内視鏡検査は「死亡率減少の効果の有無を判断する証拠が不十分」とされていたが、今回は効果が認められた。
13年に発表された新潟市と、同じく内視鏡検査を導入している鳥取県の住民を対象にした研究では、内視鏡検査で胃がん死亡率が30%減少する効果があった。
韓国で実施された20万人規模の研究でも、内視鏡で57%の胃がん死亡率減少効果があった。韓国は日本と並んで胃がんが多く、国のがん戦略として胃がん検診を実施している。
ただ、ガイドラインは学術的な政策提言という位置づけ。現在、厚生労働省の指針では、市区町村が実施する胃がん検診では、40歳以上の住民を対象にX線検査を年1回実施するとしている。
13年の厚労省調査によると、胃がん検診を実施する市町村のうち新潟市のように内視鏡検査を導入していたのは18%。今後、厚労省の指針が改定されれば、さらに広がる可能性がある。
■専門医確保・費用が壁
普及に向けては課題もある。X線は放射線技師でも操作できるが、内視鏡は医師に限られる。
日本消化器内視鏡学会の会員は全国約3万3千人。宮城県対がん協会の渋谷大助・がん検診センター所長によると、都市部に偏りがちだという。また、X線の受診者が内視鏡に置き換わった場合、推計で内視鏡医1人あたり年間約460人を現在の診療に加えて余分に診る必要があるという。
新潟市の場合、胃がん患者がもともと多く、内視鏡手術のできる医師が多かったという事情がある。また、データ管理のできる市医師会のような機関が必要になるほか、負担額をめぐって検査を委託する医師会などとの調整も必要となる。
都市部の施設で自費診療で内視鏡検査を受けると2万円を超えることもある。新潟市の検査料は他の地域に比べて安いが、それでも市の13年度の負担額は約5億6千万円に上る。
粘膜障害や鼻出血など偶発的に起きる事故(偶発症)への対処も必要になる。新潟市では検査の同意書のなかで「発生頻度は1万4千回に1回の報告がある」などと触れている。
成沢さんによると、新潟市では11年度まで約130件の偶発症の報告があり、92件は軽症の鼻出血(発生頻度0・05%)だが、のどに穴が開いて入院した例もあったという。成沢さんは「普及には行政、医療機関、医師会の三者の協力が重要だが、同じ条件で全国一律で広められるか課題も多い」と指摘する。(石塚広志、浅井文和)
■最新情報がある相談先知ろう 「がんとお金」講師・黒田尚子さん(アピタル夜間学校から)
がんの治療にかかるお金をどうするか。多くの患者家族にとって切実な問題です。治療には長い期間がかかることが多く、費用もかさみがち。次々に登場する新薬は効果が期待できる一方、高額です。
悩みは出費だけではありません。がんになったことに伴って、仕事をそれまで通り続けるのが難しくなり、収入が大きく減ってしまうことも珍しくありません。
ファイナンシャルプランナーの黒田尚子さんは、自身も2009年に乳がんの診断を受け、「がんって、お金がかかる」と実感したそうです。
負担を軽減するため、「高額療養費制度」といった公的なサポートがあります。ただ、こうした制度は「セルフサービスが原則」と黒田さん。自分自身で申請しないとサービスは受けられません。せっかく制度があっても使われていないケースも少なくないそうです。
「お金の悩みは人によってそれぞれ。個人の事情に応じた最新の情報を得られるような、信頼できる相談先を知ることが大切です」。黒田さんはそう話しています。(田村建二)
感想;
20数年前に胃がんで胃を2/3切除した者として、もっと早く胃カメラが推奨になり、それを行っていたら助かったいのちももっとあっただろうなと思ってしまいました。もちろん、今回、推奨になったことは多くの方の努力の結果だと思います。
胃がんで胃を2/3切除してからは、毎年胃カメラを進められ10年くらいは毎年受けていましたが、だんだん間隔が長くなり、1回/2年になって来ました。
最近、2年半振りに胃カメラを受けた時、先生から「やはり毎年受けた方が良いです」とアドバイス(注意?)をいただきました。
残胃は通常の人よりも3倍 胃がんになる確率が高いとのデータがでています。
胃カメラが胃のX線撮影よりもよいことはわかっていても、それをどうやるかが難しかったのでしょう。
小椋桂さんがある病院から、その病院の歌を頼まれたそうです。そこで病院を見学した時に、院長との会話で胃の検診を受けたことがありますか?と尋ねられ、受けたことがないと返答したら、受けた方が良いとアドバイスを貰いました。ここで受けてみてはと言われ受けられました。そうしたら胃がんが見つかったそうです。
このようなふしぎな縁で助かる方もいらっしゃる一方、胃のX線をやっていたのに胃がんを見逃され、亡くなった方もおられました(裁判になった)。
ある一定の歳になれば胃カメラを受けることが良いのでしょうね。
◇がんを知ろう
国立がん研究センターが4月に公表した「胃がん検診ガイドライン」(2014年度版)で、内視鏡検査が初めて「推奨」とされた。独自に公的負担を導入した地域では、がんの発見率が高まるなど成果も出ている。ただ、広く普及するには専門医の確保や自治体の負担増など課題もある。
■発見率、X線の3倍超 公費負担の新潟市
「力を抜いて、目を開けて遠くを見てください」。11日午前、新潟市の診療所「吉村医院」の検査室。横になった男性(79)に吉村朗院長(45)が語りかけた。慣れた手つきで、口から内視鏡を入れていく。
先端部の小型カメラから映し出されたモニターを見ながら、「つばをできるだけのみ込まないで」などと助言しつつ、奥の十二指腸から胃、食道と診て、撮影をしていく。4分程度で内視鏡は抜かれた。
別室で画像を見ながら「きれいでポリープもありません」と診断された。男性は「胃だけはしっかり診てもらわないと。最初はゲーゲーなってたけど、もう慣れっこだよ」と笑う。
内視鏡には、口から入れる経口と鼻から入れる経鼻があり、それぞれ特徴=イラスト=がある。年間約600件の検査をする吉村医院の場合、経口と経鼻の割合は半々だが、本人が迷った場合、経口を勧めるという。小型カメラが大きい分、解像度が高くて観察できる視野が広く、より精度の高い検査ができるためだ。
新潟市は2003年度から、胃がんの内視鏡検査の公的負担を独自に始めた。40歳と45歳、50~59歳は、検査料約1万2千円のうち、3400円を自己負担してもらう。国民健康保険の加入者の場合、さらに補助が増えるため自己負担は1700円。60歳以上は無料。
市医師会によると、03年度に検査を受けた約3万5千人では、X線が8割で、内視鏡は2割だったが、09年度に比率が逆転。12年度に受けた約6万9千人では内視鏡が6割に上る。
内視鏡検査を選択する人が増えた理由について、新潟県立がんセンター新潟病院の成沢林太郎・臨床部長(消化器内科)は、がん発見率の高さを挙げる。03年度以降の同市の胃がん発見率は、X線が毎年0・2~0・3%(千人あたり2~3人)。一方、内視鏡は0・74~1・07%と3倍以上になる。食道など他の部位の発見を含めると0・89~1・21%に上がる。
高い発見率の背景には診断結果を検証する「読影委員会」の存在がある。事務局となる市医師会に週1回、内視鏡専門医らが集まり、見落としがないか検証する。同委による検証で、11年度までに当初「問題なし」とされたケースの8・9%でがんが見つかった。市医師会長の藤田一隆・藤田内科消化器科医院長は「自分の診断を評価されることに抵抗のある医師もいるが、ダブルチェックで高い発見率につながっている」と話す。
■死亡率を下げる効果
国立がん研究センターは今年4月に公表した胃がん検診ガイドライン(2014年度版)で内視鏡検査を初めて推奨した。対象はリスクの高まる50歳以上が望ましく、2~3年おきに受ければよいとしている。
前回の05年度版ガイドラインで推奨されたのはX線検査だけ。内視鏡検査は「死亡率減少の効果の有無を判断する証拠が不十分」とされていたが、今回は効果が認められた。
13年に発表された新潟市と、同じく内視鏡検査を導入している鳥取県の住民を対象にした研究では、内視鏡検査で胃がん死亡率が30%減少する効果があった。
韓国で実施された20万人規模の研究でも、内視鏡で57%の胃がん死亡率減少効果があった。韓国は日本と並んで胃がんが多く、国のがん戦略として胃がん検診を実施している。
ただ、ガイドラインは学術的な政策提言という位置づけ。現在、厚生労働省の指針では、市区町村が実施する胃がん検診では、40歳以上の住民を対象にX線検査を年1回実施するとしている。
13年の厚労省調査によると、胃がん検診を実施する市町村のうち新潟市のように内視鏡検査を導入していたのは18%。今後、厚労省の指針が改定されれば、さらに広がる可能性がある。
■専門医確保・費用が壁
普及に向けては課題もある。X線は放射線技師でも操作できるが、内視鏡は医師に限られる。
日本消化器内視鏡学会の会員は全国約3万3千人。宮城県対がん協会の渋谷大助・がん検診センター所長によると、都市部に偏りがちだという。また、X線の受診者が内視鏡に置き換わった場合、推計で内視鏡医1人あたり年間約460人を現在の診療に加えて余分に診る必要があるという。
新潟市の場合、胃がん患者がもともと多く、内視鏡手術のできる医師が多かったという事情がある。また、データ管理のできる市医師会のような機関が必要になるほか、負担額をめぐって検査を委託する医師会などとの調整も必要となる。
都市部の施設で自費診療で内視鏡検査を受けると2万円を超えることもある。新潟市の検査料は他の地域に比べて安いが、それでも市の13年度の負担額は約5億6千万円に上る。
粘膜障害や鼻出血など偶発的に起きる事故(偶発症)への対処も必要になる。新潟市では検査の同意書のなかで「発生頻度は1万4千回に1回の報告がある」などと触れている。
成沢さんによると、新潟市では11年度まで約130件の偶発症の報告があり、92件は軽症の鼻出血(発生頻度0・05%)だが、のどに穴が開いて入院した例もあったという。成沢さんは「普及には行政、医療機関、医師会の三者の協力が重要だが、同じ条件で全国一律で広められるか課題も多い」と指摘する。(石塚広志、浅井文和)
■最新情報がある相談先知ろう 「がんとお金」講師・黒田尚子さん(アピタル夜間学校から)
がんの治療にかかるお金をどうするか。多くの患者家族にとって切実な問題です。治療には長い期間がかかることが多く、費用もかさみがち。次々に登場する新薬は効果が期待できる一方、高額です。
悩みは出費だけではありません。がんになったことに伴って、仕事をそれまで通り続けるのが難しくなり、収入が大きく減ってしまうことも珍しくありません。
ファイナンシャルプランナーの黒田尚子さんは、自身も2009年に乳がんの診断を受け、「がんって、お金がかかる」と実感したそうです。
負担を軽減するため、「高額療養費制度」といった公的なサポートがあります。ただ、こうした制度は「セルフサービスが原則」と黒田さん。自分自身で申請しないとサービスは受けられません。せっかく制度があっても使われていないケースも少なくないそうです。
「お金の悩みは人によってそれぞれ。個人の事情に応じた最新の情報を得られるような、信頼できる相談先を知ることが大切です」。黒田さんはそう話しています。(田村建二)
感想;
20数年前に胃がんで胃を2/3切除した者として、もっと早く胃カメラが推奨になり、それを行っていたら助かったいのちももっとあっただろうなと思ってしまいました。もちろん、今回、推奨になったことは多くの方の努力の結果だと思います。
胃がんで胃を2/3切除してからは、毎年胃カメラを進められ10年くらいは毎年受けていましたが、だんだん間隔が長くなり、1回/2年になって来ました。
最近、2年半振りに胃カメラを受けた時、先生から「やはり毎年受けた方が良いです」とアドバイス(注意?)をいただきました。
残胃は通常の人よりも3倍 胃がんになる確率が高いとのデータがでています。
胃カメラが胃のX線撮影よりもよいことはわかっていても、それをどうやるかが難しかったのでしょう。
小椋桂さんがある病院から、その病院の歌を頼まれたそうです。そこで病院を見学した時に、院長との会話で胃の検診を受けたことがありますか?と尋ねられ、受けたことがないと返答したら、受けた方が良いとアドバイスを貰いました。ここで受けてみてはと言われ受けられました。そうしたら胃がんが見つかったそうです。
このようなふしぎな縁で助かる方もいらっしゃる一方、胃のX線をやっていたのに胃がんを見逃され、亡くなった方もおられました(裁判になった)。
ある一定の歳になれば胃カメラを受けることが良いのでしょうね。