・ネガティブ・ケイパビリティ(negative capability 負の能力もしくは陰性能力)とは、「どうにも答えの出ない、どうにも対処しようのない事態に耐える能力」をさします。あるいは、「性急に証明や理由を求めずに、不果実さや不思議さ、懐疑の中にいることができる能力」を意味します。
・キーツがネガティブ・ケイパビリティの用語を書き記した170年後、同じく英国のウィルフレッド・R・ビオンによって新たに言及されたのは、私には奇跡にしか思えないのです。
・ビオンがネガティブ・ケイパビリティの重要性を説いたのは、詩や散文といった文学の分野、ありは芸術の分野ではなかったのです。ビオンの専門である精神分析の分野で、ネガティブ・ケイパビリティは不可欠だと注意を促したのです。ネガティブ・ケイパビリティを保持しつつ、治療者と患者の出会いを支え続けることによって、人と人との素朴な、生身の交流が生じるのだとビオンは説きました。精神分析に限らず、人と人との出会いによって悩みを軽減していく精神療法の場において、ネガティブ。ケイパビリティは必須の要素だと、ビオンは考えたのです。
・ビオンは、将来のノーベル文学賞受賞者サミュエル・ベケットを患者として治療する機会に恵まれます。
・不可解さに性急に結論を与えず、神秘さと不可思議さに身を浸しつつ、宙ぶらりんを耐えぬく力、ネガティブ・ケイパビリティに行きついたのも、出発点が若い頃のベケットとの出会いにあったからでしょう。
・ネガティブ・ケイパビリティが保持するのは、形のない、無限の、言葉ではいい表しようのばう、非存在の存在です。この状態は、記憶も欲望も理解も捨てて、初めて行き着けるのだと結論づけます。
・作家モーリス・ブランショ
「答えは質問の不幸である」
「答えは好奇心を殺す」
・作家黒井千次
「謎や問には、簡単に答えが与えられぬほうがよいのではないかと。不明のまま抱いていた謎は、それを抱く人の体温によって成長、成熟し、さらに豊かな謎への育っていくのではあるまいか。そして場合によっては、一段と深みを増した謎は、底の浅い答えよりも遥かに貴重なものを内に宿しているような気がしてならない」
・小児科医ウィニコットの「ホールディング」(抱える)
「治療上大切なのは、今生じていることを手を加えずに持ちこたえることだ」
・人の病の最良の薬は人である
ヒューマニティは医療のホルモンである(カナダ医師ウィリアム・オスらー)
・身の上相談に必要なネガティブ・ケイパビリティ
身の上相談には、解決法を見つけようにも見つからない、手のつけどころのない悩みが多く含まれています。主治医の私としては、この宙ぶらりんの状態をそのまま保持し、間に合わせの解決法で帳尻を合わせず、じっと耐え続けていくしかありません。耐えるとき、これこそがネガティブ・ケイパビリティだと、自分に言い聞かせます。すると耐える力が増すのです。
・「治せないかもしれませんが、トリートメントはできます」
トリートメントが意味するところは「治療」で、言い換えると「治す行為」でした。
・メディシンマンの薬草も、大いにこのプラセボ効果をねらっていると考えられます。
・メディシンマンが用いる知慮法
・占い
・悪魔払いないし病魔退治
現代のあらゆる精神療法に共通している。
・プラセボ効果
1980年代初頭に実施された実験では、835人の頭痛を頭痛を訴える女性患者を四群に分けて、います。A群はただ単に(鎮痛薬)と書いたプラセボ、B群は鎮痛薬の有名ブランド名を記したプラセボ、C群は(鎮痛薬)とのみ記したアスピリン、D群はB群同様に有名ブランド名を記したアスピリンを投与しました。
一週間後、頭痛がどのくらい軽くなったかを点数化して返答を集計すると、鎮痛効果はDCBAの順でした。プラセボよりもアスピリンの実薬のほうが効果があったのはいなめません。しかし有名ブランド名を記したほうが、偽薬、実薬ともに効果大だったのです。
・ノセボ効果
プラセボでも副作用が出るという驚くべき事実です。
・誰に対しても、治療するだけというのは大変な間違いです。私たちは、心のすべてを差し出さなくてはなりません。
・研究に必要な「運・鈍・根」
運・鈍・根は、ネガティブ・ケイパビリティの別な表現と言っていいのです。
・そうやっても、うまくいかない事例に出会ったときこそ、この「ネガティブ・ケイパビリティ」が必要になってきます。
「どうしても解決しないときにも、持ちこたえていくことができる能力」を焙ってやる、こんな視点も重要かもしれません。
・戦争は、こうした国の宝とも言うべき若者の命を、いとも簡単に吸い取ります。戦争を始め、遂行するのは、若者ではありません。分別があるはずの大人たち、年配者たちです。
戦没した若い画家たちの絵を展示しているのが、長野県上田市にある「無言館」
絵を見ていると、もし戦争がなかったら、あったとしても生還出来たら、どんな作品が描かれていたろうと想像がかき立てられます。そんな未来に生まれたはずの絵も、戦争は閉ざしてしまうのです。
感想;
あるがままを受け入れる。
自然に任せることなのでしょう。
解決できることは解決しても、どうしようもないことは、無理をせず、とりあえずそれを抱えながら生きていくことも大切なんだと知りました。
・キーツがネガティブ・ケイパビリティの用語を書き記した170年後、同じく英国のウィルフレッド・R・ビオンによって新たに言及されたのは、私には奇跡にしか思えないのです。
・ビオンがネガティブ・ケイパビリティの重要性を説いたのは、詩や散文といった文学の分野、ありは芸術の分野ではなかったのです。ビオンの専門である精神分析の分野で、ネガティブ・ケイパビリティは不可欠だと注意を促したのです。ネガティブ・ケイパビリティを保持しつつ、治療者と患者の出会いを支え続けることによって、人と人との素朴な、生身の交流が生じるのだとビオンは説きました。精神分析に限らず、人と人との出会いによって悩みを軽減していく精神療法の場において、ネガティブ。ケイパビリティは必須の要素だと、ビオンは考えたのです。
・ビオンは、将来のノーベル文学賞受賞者サミュエル・ベケットを患者として治療する機会に恵まれます。
・不可解さに性急に結論を与えず、神秘さと不可思議さに身を浸しつつ、宙ぶらりんを耐えぬく力、ネガティブ・ケイパビリティに行きついたのも、出発点が若い頃のベケットとの出会いにあったからでしょう。
・ネガティブ・ケイパビリティが保持するのは、形のない、無限の、言葉ではいい表しようのばう、非存在の存在です。この状態は、記憶も欲望も理解も捨てて、初めて行き着けるのだと結論づけます。
・作家モーリス・ブランショ
「答えは質問の不幸である」
「答えは好奇心を殺す」
・作家黒井千次
「謎や問には、簡単に答えが与えられぬほうがよいのではないかと。不明のまま抱いていた謎は、それを抱く人の体温によって成長、成熟し、さらに豊かな謎への育っていくのではあるまいか。そして場合によっては、一段と深みを増した謎は、底の浅い答えよりも遥かに貴重なものを内に宿しているような気がしてならない」
・小児科医ウィニコットの「ホールディング」(抱える)
「治療上大切なのは、今生じていることを手を加えずに持ちこたえることだ」
・人の病の最良の薬は人である
ヒューマニティは医療のホルモンである(カナダ医師ウィリアム・オスらー)
・身の上相談に必要なネガティブ・ケイパビリティ
身の上相談には、解決法を見つけようにも見つからない、手のつけどころのない悩みが多く含まれています。主治医の私としては、この宙ぶらりんの状態をそのまま保持し、間に合わせの解決法で帳尻を合わせず、じっと耐え続けていくしかありません。耐えるとき、これこそがネガティブ・ケイパビリティだと、自分に言い聞かせます。すると耐える力が増すのです。
・「治せないかもしれませんが、トリートメントはできます」
トリートメントが意味するところは「治療」で、言い換えると「治す行為」でした。
・メディシンマンの薬草も、大いにこのプラセボ効果をねらっていると考えられます。
・メディシンマンが用いる知慮法
・占い
・悪魔払いないし病魔退治
現代のあらゆる精神療法に共通している。
・プラセボ効果
1980年代初頭に実施された実験では、835人の頭痛を頭痛を訴える女性患者を四群に分けて、います。A群はただ単に(鎮痛薬)と書いたプラセボ、B群は鎮痛薬の有名ブランド名を記したプラセボ、C群は(鎮痛薬)とのみ記したアスピリン、D群はB群同様に有名ブランド名を記したアスピリンを投与しました。
一週間後、頭痛がどのくらい軽くなったかを点数化して返答を集計すると、鎮痛効果はDCBAの順でした。プラセボよりもアスピリンの実薬のほうが効果があったのはいなめません。しかし有名ブランド名を記したほうが、偽薬、実薬ともに効果大だったのです。
・ノセボ効果
プラセボでも副作用が出るという驚くべき事実です。
・誰に対しても、治療するだけというのは大変な間違いです。私たちは、心のすべてを差し出さなくてはなりません。
・研究に必要な「運・鈍・根」
運・鈍・根は、ネガティブ・ケイパビリティの別な表現と言っていいのです。
・そうやっても、うまくいかない事例に出会ったときこそ、この「ネガティブ・ケイパビリティ」が必要になってきます。
「どうしても解決しないときにも、持ちこたえていくことができる能力」を焙ってやる、こんな視点も重要かもしれません。
・戦争は、こうした国の宝とも言うべき若者の命を、いとも簡単に吸い取ります。戦争を始め、遂行するのは、若者ではありません。分別があるはずの大人たち、年配者たちです。
戦没した若い画家たちの絵を展示しているのが、長野県上田市にある「無言館」
絵を見ていると、もし戦争がなかったら、あったとしても生還出来たら、どんな作品が描かれていたろうと想像がかき立てられます。そんな未来に生まれたはずの絵も、戦争は閉ざしてしまうのです。
感想;
あるがままを受け入れる。
自然に任せることなのでしょう。
解決できることは解決しても、どうしようもないことは、無理をせず、とりあえずそれを抱えながら生きていくことも大切なんだと知りました。