平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

GOTH~ひとりでいることのすすめ

2010年12月08日 | 小説
 以前、小説「告白」の記事で、ひとりで学食で食事の出来ない<便所メシ>のことを書いたが、今回はひとりでいることのカッコ良さについて。

 乙一の「GOTH」の森野という女性キャラクターについてこんな描写がある。

★はじめて森野のことを知ったのは、二年に進級して同じクラスになったときだった。僕と同じで、だれとも関わらずに生活しているやつがいると最初は思った。休憩時間になっても、廊下を歩いているときも、彼女は常に人をさけて行動していた。つまり、群れたがらないのだ。
 同じクラスでそういうことをしているのは、森野と僕だけだった。といっても、僕は彼女のように、クラスメイトたちのはしゃいでいる様子を眺めて冷ややかな顔をしない。僕の場合は話しかけたれれば返事はするし、人間関係を円滑にするため冗談も言う。普通の生活をするための最低限のことはしていた。
 しかしいずれも表面的なつきあいで、クラスメイトに向ける笑顔はほとんど嘘だった。
 最初に話をしたとき、森野は僕のその部分を見通して突いてきたのだ。
 「私にも、その表情のつくりかたを教えてくれる?」

 主人公の僕と女生徒・森野の出会いのシーンだが、ふたりとも他人から距離をおいて交わろうとしない。主人公の僕はうわべだけのつき合いはするが、森野はその点、徹底している。
 こんな描写もある。

★その存在の特異さは時々、目を引いた。彼女は目立つ生徒ではないが、目立たないことが逆に注目させるのだ。クラスには、活発で光を発しているようなカリスマを持った人間がいる。森野はそれを逆方向へ思いきりわがままに突き進んだような存在だった。楽しげに話しかけてくるクラスメイトたちを容赦なく無視し、常に孤立し、その孤独さを愛しているようだった。

 人は幼い頃から<友達がたくさんいることはいいこと><人の間にいるから人間>などと教えられるが、果たしてそうだろうか?
 <便所メシ>をする学生さんは、きっとこの<友達がたくさんいることはいいこと>という考えに囚われている。
 そういう考えは捨てて、森野のように「群れているお前らはバカだ」と開き直ってみよう。
 他人と上手く交われない自分を見つめることで、本当の自分が見えてくる。
 見つめた結果、「群れるのはカッコ悪い。孤高はカッコイイ」「表面だけ取り繕ってつき合うのって疲れるだけ」「ひとりでいることは孤独ではなく自由だ。自分は自由を愛している」という結論が出て来れば、これが新しい自分になる。

 「GOTH」という作品の本質からは少し離れてしまったが、小説を始めとするエンタテインメントにはこういう読み方もあると思う。


コメント
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