平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

わるいやつら 最終章

2007年03月10日 | 推理・サスペンスドラマ
 さて最終章。
 映像としてはこの点。
 戸谷(上川隆也)の取り調べの井上警部補(大杉漣)とのやりとり。
 このやりとりの間に豊美(米倉涼子)の証言が挿入される。
 食い違っている両者の証言。
 この挿入が戸谷の証言の嘘と裏づけになっていくのが面白い。
 このカットバックの使い方、覚えておきたい。
 なお、大杉漣の刑事ぶりも見事。
 お茶を出しあくまで丁寧だが、決めるところは決める。
 逮捕状が出て井上警部補はガラリと変わる。
「これからは私の権限で徹底的にあなたを追いつめます」
 戸谷がのらりくらりとかわすと、突然デスクを蹴飛ばして。
 このメリハリ。
 戸谷の嘘を見破るために、豊美が首を絞められた日時を言わなかったのも見事。
「あの日にはアリバイがあります」と戸谷が言った瞬間、「私は日付は言っていませんよ」。
 この柔と剛のメリハリ。
 刑事と言えば、映画版「わるいやつら」の緒方拳の刑事もよかった。

 ドラマとしては裁判シーン。
 やはり裁判というのは人間ドラマの場だ。
 事件の当事者が一同に会して、嘘も含めて自分の想いを闘わせる。
 ただし今回は事件もなかったせいか、証言をする当事者の心の葛藤が描かれなかったのは残念。
 証言者の証言は単なる戸谷を追いつめる証言でしかなく、そこに強い感情や葛藤がない。
 面白かったのは伊武雅刀の「こいつは悪いヤツです。私は最初からわかっていました」と言って判事にたしなめられる証言。面白かった理由は証言者の人間性が付加されているからだ。
 豊美の証言も前ふりがない(後説明だった)から、説得力がない。
 視聴者は戸惑ってしまう。
 下手な法廷ドラマの作り方だ。
 まあ1時間で取り調べから裁判の結審、釈放まで描くのだから、深いドラマを期待するのは無理と言えば無理だが。

 そしてラスト。
 本当のわるいやつは下見沢(北村一樹)と槇村隆子(笛木優子)だったというオチはよかったが、「戸谷は、ついに私だけのものになりました。そして……」の後はいただけない。
 エンディングのテロップの後で豊美が戸谷を殺したと思われる映像が流れるが、やはり必然性を感じない。
 豊美が人を殺してしまった罪の意識に悩んだこと、殺されかけた復讐心まではついて来れたが、この証言をくつがえした豊美の心情と殺人にはついていけなかった。
 また釈放後、戸谷はどんな気持ちだったのかも言及されていない。
 戸谷は殺人を行った人間なのだから、心を改めているのかいないのかなど心情はしっかり描いてほしい。
 それで我々は戸谷という人物を考えることが出来る。
 すべては世界水泳のせいでしょうか?
 時間足らず、言葉足らずの印象を受けた。


 

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