漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

古今和歌集 0357

2020-10-21 19:36:17 | 古今和歌集

かすがのに わかなつみつつ よろづよを いはふこころは かみぞしるらむ

春日野に 若菜つみつつ よろづ代を いはふ心は 神ぞ知るらむ

 

素性法師

 

 春日野に出て若菜を摘みながらご長寿を祝う私の心は、春日野の神様がご照覧になることでしょう。

 詞書には「尚侍(ないしのかみ)の、右大将藤原朝臣の四十の賀しける時に、四季の絵かけるうしろの屏風にかきたりける歌」とあり、この詞書はここから 0363 まで七首に掛かります。その七首の作者は、素性法師に始まって凡河内躬恒(二首)、紀友則、壬生忠岑、坂上是則、紀貫之と錚々たる顔ぶれ。長寿の祝宴に名だたる宮廷歌人たちが招かれ、次々を歌を書き連ねていったのでしょうか。何とも華やかな光景ですね。


古今和歌集 0356

2020-10-20 19:33:05 | 古今和歌集

よろづよを まつにぞきみを いはひつる ちとせのかげに すまむとおもへば

よろづ代を まつにぞ君を 祝ひつる ちとせのかげに すまむと思へば

 

素性法師

 

 万年の時の経過を待ちながら、松とともあなた様のご長寿をお祝いします。樹齢千年の松の蔭に住む鶴と同じように、あなた様の千歳にわたる庇護の元で暮らしたいと思いますので。

 詞書には「・・・むすめにかはりてよみはべりける」とあり、父親の長寿を祝う娘に成り代わって詠んだ歌。「まつ」は「待つ」と「松」、「つる」は助動詞「つ」の連体形と「鶴」のそれぞれ掛詞になっています。父を祝う娘の気持ちになぞらえ、かつ、技巧を凝らした一首ですね。

 


古今和歌集 0355

2020-10-19 19:20:38 | 古今和歌集

つるかめも ちとせののちは しらなくに あかぬこころに まかせはててむ

鶴亀も ちとせののちは 知らなくに あかぬ心に まかせはててむ

 

在原滋春
この歌は、ある人、在原時春がともいふ

 

 千年生きると言われる鶴亀でもそのあとのことはわからないけれども、あなたのご長寿がいくら長く続いたとしても私の心はそれで十分だとはなりません。

 末尾の二句がなかなかに難解ですが、「あかぬ心」とは「どんなに長生きしてくださっても、それで十分だという気持ちににはならない私の思い」。そんな作者の思いに「まかせはててむ」とは、相手の長寿をいつまででも寿ぎ続けるということのようです。

 作者の在原滋春は平安時代前期の歌人で、業平の子。古今集には、この歌を皮切りに計六首が入集しています。

 


古今和歌集 0354

2020-10-18 19:31:10 | 古今和歌集

ふしておもひ おきてかぞふる よろづよは かみぞしるらむ わがきみのため

臥して思ひ 起きて数ふる よろづよは 神ぞ知るらむ わが君のため

 

素性法師

 

 寝ては思い、起きては数えるご長寿を、あなた様のために神様が計らってくださることでしょう。

 「知る」はここでは「世話をする。面倒を見る。」、あるいは「治める。統治する。」といった意味でしょう。長寿は神の思し召し。その神様が、あなた様のために取り計らってくださることでしょう、というわけですね。

 


古今和歌集 0353

2020-10-17 19:37:02 | 古今和歌集

いにしへに ありきあらずは しらねども ちとせのためし きみにはじめむ

いにしへに ありきあらずは 知らねども ちとせのためし 君にはじめむ

 

素性法師

 

 昔にあったかなかったかは知りませんが、千歳の例はあなた様を初めといたしましょう。

 長寿の宴の場でのなごやかな雑談のような緩やかな雰囲気の歌、といった印象を持ちました。悪い意味ではまったくなくて素直にそう感じたのですが、感想としては少々失礼でしょうか。どうだろ??