日本フランチャイズチェーン協会によると、今年5月のコンビニ既存店の来店客数は前年同月比2.5%減を記録し27カ月連続のマイナスだった。コンビニが得意とする食品がドラッグストアでも扱われるようになり、24時間化も進む。インターネット通信販売の普及も加速するなど、コンビニの事業環境は厳しさを増す一方だ。業界2位のファミリーマートが「ドン・キホーテ」と提携し「情熱価格」で動き出した。ドンキからの供給商品が2800点と半分以上を占める。ドンキ化したファミリーマートの業績が吉と出るか凶と出るか。コンビニ業界の将来を展望するうえでも目が離せない動きです。
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「ファミリーマート」が大胆な変貌をみせている。外観はファミマの略称で親しまれるおなじみのコンビニエンスストアだが、一歩足を踏み入れると、ディスカウント店「ドン・キホーテ」の店舗なのだ。新たな店舗像を探る共同実験に異業種同士がタッグを組んだ。来店客数が伸び悩み、成長神話に陰りが見えるコンビニ業界。ドンキ化したファミマは台風の目となるか。
◆目の前に迫る商品
6月1日、東京都立川市のJR立川駅から徒歩約10分。幹線道沿いにあるその店舗はいたって普通のファミマの外観だった。ただ目をこらすと、出入り口上部の看板に「PRODUCED BY ドン・キホーテ」の文字。店舗外側の窓際には商品を満載したワゴンが並び、一つ手に取ると、ドンキの商品であることを示す「情熱価格」のシールも目に飛び込んできた。
この「ファミリーマート立川南通り店」がユニー・ファミリーマートホールディングス(HD)とドンキホーテHDが手がける共同実験店舗の第1号店だ。勢いのあるドンキのノウハウを取り入れ、ファミマ改革に生かそうという試みだ。
店内に入ると整然と商品が並ぶ従来のファミマと違い、ぐっと目の前に商品が迫ってくる印象だ。通常より20センチ高い180センチの陳列棚にぎっしりと商品が並び、床から天井近くまでうずたかく積み上げるドンキ流の「圧縮陳列」を彷彿(ほうふつ)とさせた。
また、人の腰の高さほどのタワー型の陳列棚はファミマにはない陳列手法で、商品の一部が飛び出すほど詰め込まれていた。天井からつるしたチェーンにいくつもの商品を取り付けて目立たせる、いかにもドンキ風の陳列も。なんと、レジ脇ではドンキ名物の焼き芋まで売られていた。 実験店ではこうした陳列によって商品数も当然増え、改装前の約1.5倍に相当する5000点に膨らんだ。このうち、ドンキからの供給商品が2800点と半分以上を占め、中身もドンキ化した形だ。
特に若者や女性客の需要を積極的に取り込むため、菓子の商品数を従来比で3倍に拡大。商圏のユーザーの嗜好(しこう)を踏まえ、加工食品や日用品、酒を充実させたのも特徴だ。
タッグの勝算だが、興味深いのはユニー・ファミリーマートHD傘下の流通大手ユニーの動きだ。一足先に総合スーパー(GMS)6店をドンキとの共同店舗「MEGA ドン・キホーテUNY」に刷新している。ドンキの店作りのノウハウを取り入れた結果、今年3、4月の売上高は共同化前のユニー単体と比べ2.2倍に増加、1日当たりの客数もユニー単体と比べ1.9倍に伸長し、テコ入れはひとまず成功した。
GMSとコンビニでは業態が異なるが、ファミマ側でもこうした先例をみて、ある程度勝算を見込んでいるとみられる。
ただ、見た目の奇抜さに頼ることは固定ファンの反発を招く恐れもあり、今回の新たな取り組みはもろ刃の剣でもある。果たして、ファミマの挑戦は吉と出るか凶と出るか。コンビニ業界の将来を展望するうえでも目が離せない。