Q、俗世の願いの成就こそ本来の姿という密教の説があるが如何?
A,密教で俗世の願いを加持祈祷で聞き届けるが、その裏には本物の悟りへ至らしめたいとする願いがある。
夢中問答集(無窓疎石)より・・・
問、真言師の中に有相の悉地こそ密教の本意なれ、無相を貴ぶは顕教の所談なれと申す人あり、その義如何。
答、・・大日経に甚深無相法と説ける(大日経巻七に「甚深無相法 劣慧所不堪
爲應彼等故 兼存有相説」とあり)は顕教の所談にもあらず、いはむや外道の所解にも同じからず。大日経疏に云はく、空と不空と、畢竟して無相なり。しかも一切の相を具するを大空三昧と名ずくと云々(大毘盧遮那成佛經疏卷第六入漫荼羅具縁品第二之餘)。空とは無相なり、不空とは有相なり。有相無相ともに無相といへるはいかなる処ぞや。この無相の上にしかも一切の相を具すといへるはこれ凡夫所見の有相ならむや。しかればすなわち密宗所談の無相法といへるは甚深微細の法門なり。凡情のおよぶところにあらず。ゆえに劣慧のかなはざるところと説けり。しかるを無相を貴ぶは真言の本意にあらずといはむや。もし人この無相の法を顕教所談の無相のやうに心得たらばまことに嫌ふべし。もしこの甚深無相の悉地を開きたる人の愚人を誘引せむために、調伏等の法をおこなふをば有相の法とて嫌ふべからず。しかるゆえはその行は有相なれどもその心無相なればなり。…密宗に調伏の法と申すことは悪心邪見の衆生の心を、秘法の力を以て降伏して、仏法の正理にいれしむることなり。あるひは仏法のために障礙を成す人のいかにするとも邪心を翻すことあるまじきをば先ず彼が命を奪にて正法をして世に住せしめて後に、方便をめぐらして彼の悪人をも仏法に入らしめんためなり。或ひは人の怨敵によりて心を悩乱して仏法に入ることあたはぬをみて、彼の敵を調伏して仏法に入れしむることもあり。菩薩のかやうの逆行を修するはみなこれ興法利生のためなり。世俗の名利のためにはあらず。‥涅槃経にいはく「怨みを以て怨を報ふは油を以て火を消すが如し」・・・・たとひ三皇五帝の世なりとも仏法流布の時ならねば仏法者の願ふべきことにあらず。乱世なりとももし仏法だに世に住せば嘆くべきにあらず。しかれば禪・教・律かはりたりといふとも仏弟子となれる人は同じく天下泰平仏法紹隆と祈りたまふべし。もししからば天下に誰にても仏法を興隆しますべき宿習も威勢も具はりたまふ人、この祈りをば受け取り給ふべし。・・
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