聖徳太子より今日まで千三百五十年の長きにわたってこの大乗佛教の精神と云うものが国民の肉となり血となって今日まで流れてきたのであります。その長い間この日域は大乗相応の地なりと謂う無言の声がわれわれの先祖の魂を貫いて鳴り響いて来ました。伝教・弘法両大師の鎮護国家の提唱も(注・・・弘法大師は「御遺告」に「四朝を経て国家の為に奉じて壇を建て法を修すること五十一個度」とあります。また山家学生式で伝教大師は「国の宝とは何物(なにもの)ぞ、宝とは道心(どうしん)なり。道心ある人を名づけて国宝と為(な)す。故(ゆえ)に古人(こじん)言わく、径寸十枚(けいすんじゅうまい)、是(こ)れ国宝にあらず、一隅(いちぐう)を照(てら)す、此(こ)れ則(すなわ)ち国宝なりと。古哲(こてつ)また云(い)わく、能(よ)く言いて行うこと能(あた)わざるは国の師なり、能く行いて言うこと能わざるは国の用(ゆう)なり、能く行い能く言うは国の宝なり。三品(さんぼん)の内(うち)、唯(ただ)言うこと能わず、行うこと能わざるを国の賊(ぞく)と為す。乃(すなわ)ち道心あるの仏子(ぶっし)、西には菩薩(ぼさつ)と称し、東には君子(くんし)と号す。悪事(あくじ)を己(おのれ)に向(むか)え、好事(こうじ)を他に与え、己(おのれ)を忘れて他を利(り)するは、慈悲(じひ)の極(きわ)みなり。」と国家の為の僧侶育生を説いているようです。)
栄西禅師の「興禅語国論」も(注「・・第二鎮護国家門とは、仁王経に曰「佛、般若をもって現在、未来世の諸の小国王等に付属してもって護国の秘法とす」と。其の般若とは禅宗なり。謂く、「境内にもし持戒の人あればすなわち諸天その国を守護す」と云々。・・・楞厳経に曰「佛のいわく、阿難よこの四種の律儀を持して、皎たること氷霜の如く、一心に我が般若壇怛羅呪(大白傘蓋神呪)を誦せよ。・・・この娑婆界に八万四千の災変の悪星、二十八の大悪星あり。世に出現せんとき、能く災変を生せんも、この呪ある地は悉くみな消滅せん。十二由旬に結界の地となりて、諸悪災障永く入ることあたわず。この故に如来はこの呪を宣示し、未来世において初学の諸の修行者を保護す」と。禅院において恒に修するは白傘蓋の法なり。鎮護国家の儀あきらかなり。・・・」とあります。)
日蓮上人の「立正安国論」もそれぞれのお立場から、大乗相応の霊地たる日本国を本当にお護りもうしあげようという精神にほかならないのであります。
親鸞聖人が「朝家のおんため、國民のために念仏申しあわせたまはばめでたく候べし」(親鸞聖人85歳の時に性信坊に 宛てた御消息)と申されたのも、
後に蓮如上人が「王法為本」(注・・・御文に「まづ王法をもて本とし仁義をもて先として,世間通途の義に順じて,当流安心をば内心にふかくたくはへて」とある)という旗印をかかげて勇猛精進せられたのも皆この大精神の現れと言わねばなりません。
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