讃観世音菩薩頌和釈・・15/20
惡鬼害人
「大力惡鬼執捉人 鳩槃荼等飮人髓 若能繋念觀音者 擁護其人銷疫難」
大力の惡鬼の人を執捉へて鳩槃荼等は人の髓膿を吸飲に遭たる人の 能く觀音を念じ奉れば大悲の智力にて其人を擁護して疫難を銷したまふとや。
慈覚大師円仁は承和五年に入唐して海上に大風のをこり舩を鬼嶋へ吹き流さる。嶋の鬼形の者浦へ走り集りて舩の着きなば食はんずる気色なり。舩人の怖れて魂を失ばかり。円仁は舩棟に上て、南無観世音と唱るに空より多聞天王の現れて御半足を海に下して梶取したまふ。舩は元の塩路に還りて難なく渡唐して数多の密法を傳へ帰朝し給ひき。