福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

内田さんから紀行文「高野山から信貴山へ」がとどきました。その3

2010-10-23 | 開催報告/巡礼記録
三日朝四時半起床、護摩祈祷のため浴油堂に向かう。浴油堂の闇の中で護摩木を焚く明かりが周囲の人々の顔を照らす。僧侶の力強い読経の声だけが響く。目覚めきっていない身体の奥から力が湧いてくるのを感じる。

 護摩祈祷が終わり、本堂での大般若祈祷へ向かう途中、本堂外の高い舞台から、東の奈良の山々から太陽が昇ろうとしていた。濃紺から藍へ、そして青く変わっていく空を背景に、雲は濃紫から薄紫に、桜色へと刻々変化していく。太陽が昇る前に、雲が見事に周囲の模様を作る。まるで分単位の自然の劇場を見ているようだ。恥ずかしそうに、やがて堂々と、山際から太陽が顔を出す。読経の声を聞きながら、山の上からの美しい朝焼けだ。夜明けと共に鳥の声が聞こえてくる。人間も含め全ての生きとし生けるものは、自然のリズムに包まれて生きているのだろう。

 祈りを込めた力強い祈祷をしていただいたあと、諸堂を回る。地蔵尊、かやの木稲荷、融通堂など、境内は起伏があり、広い。教科書で習った国宝信貴山縁起絵巻は傷みが激しいため奈良国立博物館の倉庫にあるそうで本物は見られない。玉蔵院の箱崎睦昌画伯の襖絵も拝見した。見事な四季の絵が八部屋六十八面にわたって描かれている。それぞれの部屋に座ると、まるで満開の桜の下にいるような、紅葉に囲まれているような、絵でありながら自然をそのまま切り取ったような美しさだ。

 入り口の虎に別れを告げ、平城京一三〇〇年の観光の人々の喧騒を避け、新大阪から新幹線に乗る。日本ほど四季がはっきりしている国は世界にないそうだが、帰りの新幹線からも日本の秋を眺められ、あらためてこの国の自然の美しさを感じた。(続)
 
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