矛盾論 ⑤
私が何故物理学を志したのか最近丸善出版より発刊された物理関係月刊誌「パリティ」に寄稿したので引用したい。
『大学進学で理系を選択したとき、親戚の面々から「なんで理系なの、文系の方が性に合っているのでは」と言われ、「文系の世界は訳がわからない。理系は理屈が通り住み心地良い」と答えていた。理屈通りの世界すなわち整合的世界に住みたい気性が理系人間の本性ではないだろうか。整合的世界の反対は矛盾世界である。従って整合的世界は無矛盾世界と言ってもよい。無矛盾世界の代表が物質的自然である(市川惇信『科学が進化する5つの条件』岩波ライブラリー、2008)。従ってそこには守備一貫した物理法則が貫徹しているはずだ。それを探求するのが自然科学であり、わけても物理学である。
矛盾世界の代表は人間社会である。そして矛盾の根源は言語にある。言語表現は容易に矛盾を含有できる。「クレタ人は嘘つきとクレタ人は言った」は有名な矛盾表現だが、日常会話も矛盾だらけである。たとえば教室で先生は生徒に向かって平気で「みんな頑張って上位の成績を目指せ」などという。上位下位は相対評価を意味するので絶対に全員が上位にはなれない。国会答弁から床屋談義にいたるまで言語表現に矛盾は満ち満ちているが、多くの場合人はそれに気付かない。とどのつまり物理学の基盤に横たわる次の矛盾が生まれる。「無矛盾の物質的自然をどうやって矛盾を含む言語表現に投影できるのか」』(続)
(永山國昭 Kuniaki Nagayama, PhD岡崎統合バイオサイエンスセンター・教授Professor of Okazaki Institute for Integrative Bioscience自然科学研究機構 National Institutes of Natural Sciences (NINS)生理学研究所・教授 National Institute for Physiological Sciences, Professor(併)総合研究大学院大学 The Graduate University for Advanced Studies生理科学専攻・教授 School of Life Science, Professor国際純粋応用生物物理学連合(IUPAB)会長(http://www.iupab.org/) )
私が何故物理学を志したのか最近丸善出版より発刊された物理関係月刊誌「パリティ」に寄稿したので引用したい。
『大学進学で理系を選択したとき、親戚の面々から「なんで理系なの、文系の方が性に合っているのでは」と言われ、「文系の世界は訳がわからない。理系は理屈が通り住み心地良い」と答えていた。理屈通りの世界すなわち整合的世界に住みたい気性が理系人間の本性ではないだろうか。整合的世界の反対は矛盾世界である。従って整合的世界は無矛盾世界と言ってもよい。無矛盾世界の代表が物質的自然である(市川惇信『科学が進化する5つの条件』岩波ライブラリー、2008)。従ってそこには守備一貫した物理法則が貫徹しているはずだ。それを探求するのが自然科学であり、わけても物理学である。
矛盾世界の代表は人間社会である。そして矛盾の根源は言語にある。言語表現は容易に矛盾を含有できる。「クレタ人は嘘つきとクレタ人は言った」は有名な矛盾表現だが、日常会話も矛盾だらけである。たとえば教室で先生は生徒に向かって平気で「みんな頑張って上位の成績を目指せ」などという。上位下位は相対評価を意味するので絶対に全員が上位にはなれない。国会答弁から床屋談義にいたるまで言語表現に矛盾は満ち満ちているが、多くの場合人はそれに気付かない。とどのつまり物理学の基盤に横たわる次の矛盾が生まれる。「無矛盾の物質的自然をどうやって矛盾を含む言語表現に投影できるのか」』(続)
(永山國昭 Kuniaki Nagayama, PhD岡崎統合バイオサイエンスセンター・教授Professor of Okazaki Institute for Integrative Bioscience自然科学研究機構 National Institutes of Natural Sciences (NINS)生理学研究所・教授 National Institute for Physiological Sciences, Professor(併)総合研究大学院大学 The Graduate University for Advanced Studies生理科学専攻・教授 School of Life Science, Professor国際純粋応用生物物理学連合(IUPAB)会長(http://www.iupab.org/) )