・五来重「先祖供養と墓」「日本の宗教は、霊魂の宗教です。日本の宗教はまず死者の霊から出発して、それが清められて祖霊になり、全く浄化されて神になるという、死霊・祖霊・神の宗教です。また、自然崇拝の宗教です。山河草木鳥虫動物は、すべて魂を持っていると考えますので、日本人はそういうものを供養するという考え方があります。虫供養や牛馬供養があったり、木を供養したりするのは、一種のアニミズムですが、日本人にはそういうものが源泉にあります」
・五来重『熊野詣』「いまでは墓にまつる死霊の浄化されたものが、寺でまつる祖霊であり、祖霊の昇華したものが神霊として神社にまつられたという霊魂昇華説は、民俗学や宗教学ではうたがうもののない仮説である。」
・日野西真定「高野山の秘密」「両墓制の時代には、遺体は山の向こうの山麓に埋められ、墓は生活空間に隣接して見える山の斜面に設けられます。そしてこの近辺に寺ができます。この寺で死んだばかりのご先祖さんの魂が清められ、山の頂上には神社がありました。ここが清まった御先祖さんの魂が集合する場所だったのです。つまり氏神様です。・・そしてここに循環が生まれます。山の麓の生活空間にいる住民は絶えず、墓や神社を仰ぎ見て拝みます。さまざまな厄災から身を守り農作物をもたらしてくれる氏神様を頼りにしているわけです。節目節目は氏神様のためのお祭りが行われます。氏神様はもとはご先祖様ですからその魂を清めるための先祖供養も丁寧に行われます。一方死んだものからすると、子孫を守る性格のものに誰もがなれるわけです。そこの生活空間にいるものは、死んだらご先祖様の塚に入り、供養を受け、それがすむと今度は氏神様の世界に入って子孫を守ることができるわけです。だから生きている者にとっては死んでも楽しみです。・・将来的にはその地域の人を救う仲間になって永遠に生きることができるわけです。最後には人を救うというのが先祖供養なのです。・・」