福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

秩父三十四所観音霊験圓通傳 秩父沙門圓宗編・・27/34

2023-10-27 | 先祖供養

 

第二十七番 再上かげもり龍河山大淵寺。御堂三間四面南向)。

本尊聖觀音 御長一尺(30㎝)後光佛に三十三體之觀音の尊像有 弘法大師御作

伏惟、當山の來由は、昔此里に寶明と號せし隠者ありき。其生處何の地と云事をあかさず、破笠爛筇、 東に走西に到り南去北來心に任て六十餘州足も止めず、此地に來て郡中に霊境餘多ましますに信心まさりてや、形の如くの草の庵結て暫く雲水の膝を曲しより、夏は蓮に功徳池の想を觀じ、冬は梢の雪に寶樹寶林を心にかけ、此影森に七年の春秋を送しが、思かけず難病を受て蹇ければ、今は早行脚の心も絶て、此處に生涯を果すべき覺悟にて行住坐臥、西方を念じて佛號を唱ふるの外、亦餘儀なかりける。或夜一僧來て一宿せん事を乞ふ。元より惜むべき舎かは、案内にや及ぶ 此方へと請しければ、客僧座定て庵主に云らく、此郡古へは武蔵國と隣て知々夫の國と云し、其郡中霊場列たてり、沙門いまだ順禮せざるや。寶明が曰、囚人は赦を夢み、飢たる者は食を夢み、蹇たる者立つ事をわすれず。某元來行脚を好み、日本の霊區残りなく廻りて拜せざる堂塔もなく、詣でざる神社もなかりしが、今は膝行ても行事不叶、然れども足下の仰を聞ときは歩行心にまかせし間に普く順禮せざりし悔しさ、今更臍をかむと雖も為方なし、君吾を憐給はゞ吾に慈愍を垂て順禮の功徳にむかふ事あらば示給へと。落涙限りなかりければ、旅僧の曰く、吾は當今の勅を受て諸國を經歴して佛法を弘通する空海とは吾事也。吾今一體の觀音 を造立して汝に與へん、亦此地は是より後各種々の因縁に依て、都合卅四所の霊場郡中に列るべし、本尊も各権者の彫刻なるべし、吾豫其霊地を知て本尊を彫刻し安置せし處も有、亦後世の権者來て開基すべき地も其像の形相も吾れ能く知、汝蹇たるを憂る事なかれ、今彫刻する處の本尊の後光佛に現て拜せしめん、是汝が為にする耳ならず、豫め卅四所と定りたる未來記と思ひ、當郡の霊場何れも小縁の事に非、其地未開闢先より、本尊の御容迄定り有しと信仰の心を生ぜしめんが為也と。忽ち觀音の尊像を彫刻し給ひ、後光佛に三十三ヶ所の本尊を悉く現給へり。寶明奇異の思をなし、吾蹇すとも師の教にあらずんばいかでか三十四所の霊地を知らん、況いまだ時至らずして開闢せざる霊地の本尊を豫拜する事古今未曾有の上思議也と感歎の涙墨染の袖も朽ぬべし。夜己に五更(午前三時〜五時)に至て、大師寶明に別を告て庵を出 て、亦他方有縁の地に趣き給ふ。寶明御跡を伏拜み誠に空海は大日遍照の化身と、王宮國土閭巷の凡民まで仰ぎ奉れり、誰か信敬せざらん、今此草庵に來て、如此霊像を彫刻し給ふ、何ぞ吾一人拜すべけん や、普く諸人に結縁せしめんと、未明に里人を集て件のあらましを語れば、人々感涙を催し、後光佛を拜し、扨は(さては)此後も猶此郡中に権化の人往來して、數ヶ所の霊地を開き給ふらん穴貴と、此國に住らん者は殊更に後の世もいと頼有心地ぞかしと、各たがいに力をはげまし、一宇を建立して本尊を安置し奉り寶明を推て當山第一祖とし、此後連綿として今に至れり。されば寶明一度蹇たるは其身の不祥と云べけ れど是に依て大師に値遇し、彫刻の霊像を永く此地に安置し奉り、しかのみならず後光佛を以て開闢以前に霊像を拜し、三十餘尊の威徳を顕しぬれば、不祥かへって吉事と変じ、其身のみかは今日の衆生普く霊像に結縁せしむる事、誠に不可思議の因縁ならずや。佛在世に頻婆沙羅王、太子阿闍世のために七重 室内に幽閉せられ、憂に沈給ひしかど、此縁に依て終に阿那含を成し給ひ、末世造惡の凡夫得生極樂の道を開き給へると等し。此等の事跡を思めぐらし今世若し心憂き事出來るとも、此世は假の舎に一炊の夢見るが如し。苦樂ともに暫が程ぞと思とりて、永き後の世を第一として小罪をも犯さゞれ。若今生を徒に過さば何を以てか後世の苦を脱れん。恐るべし慎むべし。

「夏山や しげきが下の 露までも 心へだてぬ月の影もり」

詠の意は、表には夏山のしげりたる木々の下露にも、月は必ずやどる事を此地の名によせ、裡には本尊の霊験、大師の高徳を演べ、寶明が柴の戸をたたき、信心だに有ば、凡下の草の菴にも大師至りしを、月の光に寄せたる歌也。是は一應の義にして至極の深理は、菩薩の弘誓、本師弥陀超世の悲願は罪障の木立しげくとも、必ず尋て来迎し給はん。持戒破戒と罪の軽重とを論ぜず、唯弘願を頼まん者に於いては心へだてず、救ひ取らんとの佛意を讀り。此詠亦自余の詠歌にすぐれて、いとあり難く意味ふかき詠也。當山誓願石(上に三尊の梵字有、下に廿二字の文あり)其の来由に付て笈摺の因縁有ると雖も、口傳の由なれば此編には漏しつ。以上。

 

 

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