日々の恐怖 8月6日 怖い話が大好き(3)
さっきまではゴミ袋かなんかが引っかかってるだけかも、と思っていた。
こんな時はお経を唱えるといい、という話はよくある。
しかしその時のオレは、
「 もう勘弁してくれ、頼むから勘弁してくれ、ホントマジで勘弁してくれ。」
と、バージョン違いの勘弁してくれを繰り返すしか出来なかった。
その祈りが通じたわけでもないだろうが、その後何も起こらない。
よくある話なら、バンバンと車を叩く音がしたり、
『 ボクヲヒイタノハオマエダロ?』
なんて声が聞こえたりするところだが、何も起こらない。
どれくらい経ったか、30秒?40秒?何も起こらないので少し冷静になれた。
“ このままではいられない、どうにかしないと・・・・。
だが、何をするにもまずは目を開けないと・・・・。”
そうなると目を閉じた事に後悔する。
今まで読んだ車系怖い話のいろんなパターンが浮かんでくる。
目を開けたとき足にしがみついてたり、フロントガラスにへばりついてたり、助手席にすわってたり・・・ 。
どれも最悪の展開だ。
目を開ける勇気がでない。
その時ふと頭に浮かんだもう一つの最悪。
エンジンが切れる。
一度切れたら最後、オレが行方不明になって話が終わる。
“ 冗談じゃない、今のうちになんとかしないと・・!”
とりあえず足をバタバタ動かして、何にも捕まれてないことを確認する。
“ 大丈夫だ。”
少し深呼吸し、大きく息を吸い込んだところで、
「 コノヤロー!」
と気合を入れて目を開けた。
“ 足元には何もない。
前、助手席、何もない。
そして助手席側のミラー・・・、何もない!?
あちこち見回してみたが何もいない。
“ 消えた?見間違い?”
オレは吸い込んだ息を一気に吐き出した。
童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ