日々の恐怖 8月21日 初めてのバイト(1)
当時私は専門学校に入学したばかりで、生活費を稼ぐために人生初のアルバイトを始めた。
ところが、人生初で就業経験もなく、おまけにとても背の低すぎた私は、色々なところの面接を落とされまくっていた。
これがアルバイト面接の洗礼か…としょんぼりしたのを覚えている。
そうしているうちに、やっと雇ってもらえた店があり、私は舞い上がって喜んだ。
そこは巨大なビアホールだった。
雇っているバイトの数だけでも140人を超える大きな店で、小学校の体育館よりも大きかった。
また、歴史もあり、80年以上営業し続けてきただけあって古くからの常連が多く訪れた。
稼ぎどきの夏場には、小さな滝のある涼しい前庭に沢山のテーブルと椅子を並べ、ビアガーデンとして開店した。
店は内外問わず多くの人で賑わった。
隣の席の人が誕生日会なら、周りの席の人々も手拍子で祝ってあげたり、店の一角から大合唱が聞こえてきたり、陽気な雰囲気がたちこめる居心地のよい場所だった。
ここまで書くと、ちょっとイイ店に思えるかもしれない、客側にとっては。
店員としてみれば地獄のような忙しさだった。
私と同期で入った人間は3日と経たないうちに全員辞めた。
私は人生初のアルバイトであったし、実家は農家で肉体労働には慣れていたので、こんなものかと思っていた。
毎日上司に怒鳴られながらも、慣れない接客術を磨いていった。
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