日々の恐怖 8月8日 怖い話が大好き(4)
もう信号は青になってる。
“ ここから離れないと・・・。”
と思うのだが、その前に別の可能性に気付く。
“ 霊じゃなくて本当の子供だったら?”
突然現れたあれに気が動転して霊的なものと思っていたが、そもそもオレには霊感はない。
オレに見えたとしたら生きてる普通の子供かも知れない。
あるじゃないか、深夜、山道で子供が出てきてオバケかと逃げたら殺人犯から逃げてたって話。
さすがに殺人事件はないだろうが、家から抜け出したとか、特に障害のある子なんかだと何するか判らない。
何処で見聞きした知識か憶えてないが、そういう子供は危機感があまりないとか。
何が危険かがよく判らないので思いも寄らぬ行動をするとか、間違っていたらすまない。
とにかく、車の前や下に入り込んでたりしないとも限らない。
降りて確認すればいいだけだが、やはり怖い。
まだ霊の可能性もあるのだから。
しかし現実的に考えて、車を降りて霊に出くわすのと、降りずに発進して事故を起こすのでは、どう考えても避けなければならないのは後者だ。
“ どうせ見間違いだろ・・・。”
と自分に言い聞かせて、ベルトを外してドアを開ける。
“ 開かない!?”
心臓がキュッと縮んだ気がした。
ドアが開かない、もう一度ノブを引いたが開かない。
そしてすぐに気付く、さっきドアをロックしたことに、アホかオレは。
外に出て上下前後左右を確認したがやっぱり何もない。
一応交差点の左右の道路も見てみたが何もない。生きてる普通の子供ではなさそうだ。
“ じゃあやっぱりさっきのは・・・。
もういいや、さっさといこう。”
車に戻ろうと歩き出した時、突然景色の色が変わった。
慌てて振り返ると信号が黄色に変わっている。
“ うそだろ!”
もう一度左右の道路を見てみたが車なんて何処にもいない。
だが一つ、ある物を見つけてしまった。
“ くそ!押しボタンもあったのか!”
信号柱の下に小さなランプが点いている。
歩行者用の押しボタンだ。
さっきみた子供の姿と何かが噛みあった気がして急いで車に戻り、信号を無視して逃げ出した。
童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ