日々の恐怖 8月12日 怖い話が大好き(6)
車系霊現象の定番“手形”だ。
左側の後部座席のドアを見てみる、が何もない。
埃だらけのままで、何かが触れたり擦れたりした跡もない。
一応全体をよく見たが何もない。
無いならいい、無くていいんだ。
あの子供は見間違いで、信号は誤作動だった。
これで一件落着だ。
そこで、昨日車に置きっぱなしにした荷物を取ろうと、左側の後部座席のドアを開けた。
“ コロン。”
と、何かが落ちた。
地面に落ちたそれをよく見てみる。
水色の丸くて平べったい大きめのボタンだ。
絶対にオレの服のものじゃない。
昨日は友達も乗せてない。
オレの車は友達の家に置いて、友達の車で遊んだからだ。
どうしても昨日見た子供と関係あるものと考えてしまう。
子供服や園児服のボタンに、どうしても見えてしまう。
もう素手では触れない。
車からティッシュを3枚取りボタンの上に乗せて、そのままつまみ上げぐしゃりと包んだ。
今度はコレをどうするかだ。
その辺に捨てたら何か悪い事が起こりそうな気がする。
“ もうこうなったらしょうがない・・・・。”
まだ明るい今ならばと、オレは昨日の交差点へと向かった。
現場に着き、車から降りて少し周りを見て回った。
“ もしかしたら、花束でも供えているんじゃないか・・・?”
と思ったが、何もなかった。
オレは昨日子供の背中が見えた辺りにいき、ボタンをティッシュから取り出して林に放り投げた。
“ 返したからな、頼んだぞ!”
と心の中で言い、途中で買ったコーラをドボドボと道路の脇に流した。
傍から見ればゴミと飲み物を捨てただけの、けしからん野朗だが、俺なりの供養のつもりだった。
帰り道、
“ 子供に言い聞かせるには、言葉が少し足りなかったかな・・・。
ちゃんと伝わったかな・・・・?”
と少し不安になったが、その後何もないので大丈夫だったのだろう。
友達とは今でも遊んでいるが、その道は使わず遠回りして帰っている。
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