日々の恐怖 1月29日 何かあってもうちは知らないから(6)
その夜はさすがに作業を切り上げ、皆で逃げ出したという。
それからも路地での足音は変わらず毎日聞こえたらしいが、もう誰も相手にはしなくなった。
「 他にもホンットに、色々あったんですけどね。
物はよく無くなったし。
確かにそこにあったのに、ちょっと目を離したら無くなっててとんでもないとこに移動してるとか。
作業してたら肩を叩かれたとか。
トイレで用を足してたら後ろから押されたりとか。
一階の玄関の扉が開いて誰かが入ってくる音とか、階段を上ってくる足音がして、僕たちが作業してる部屋のあたりまで来るんだけど、見てみたら誰もいないとか。
一階には誰もいないはずなのに誰かがドタバタする音がしたり、子供の声がしたり。
本当にキリがないとこでしたよ。
どこから持ち出したのか知らないけど、僕たちが帰ろうとしたら玄関のたたきのところに、でかい洋服箪笥が斜めに突っ込んであったり。
そんなこと商店のオーナーたちはやらないし、何人かでないと出来ないし、でもそんな物音は全然しなかったし。
で、リーダーと、他の何人かはね・・・・・。」
倉庫の戸締まりは、商店側から予備の鍵を渡され、M君たちが行っていた。
ある日も午前0時近くまで作業をして、現場リーダーと2、3人の者が戸締まりをして最後に玄関を施錠して帰ろうとした。
玄関の戸はやはり時間が止まったままの様な、真横にガラガラとスライドさせて開閉する古びた木とガラスの引き戸で、現場から出る時は玄関の明かりも消してしまうので真っ暗になり、鍵をかける時は鍵穴のあたりを懐中電灯やペンライトで照らしていた。
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