日々の恐怖 1月26日 何かあってもうちは知らないから(5)
音は深夜のご近所に鳴り響いており、騒ぎを聞きつけた商店のオーナーたちが来てくれないかな、などとも思ったが、その様子は無さそうだった。
” どうしよう・・・・。”
と皆で顔を見合わせ、いい歳をした男たちがおびえまくるものの音は依然として鳴りやまず、揃って青い顔をしていると、やがて壁を叩く音がふっと止み、代わりに、
” ガリッ!”
と、壁を引っ掻く様な音が聞こえてきた。
それに、
” 何だ・・・・?”
とまたも顔を見合わせていると、
” ガリッ、ガリッ、ガリッ・・・・・。”
その音はどうやら近づいて来ている様だった。
一階から、自分たちがいる部屋の窓へと壁を這い上って来る。
” ・・・・・・!?”
皆は目を見開け、いいっと歯を食いしばった表情でお互いの顔を、そして音が近づいて来る窓を一心に見つめた。
と、次の瞬間、路地に向かって、
「 うるさいッ!」
と怒鳴った同僚が、部屋にあった電気ポットを持ち上げ、蓋を開けると、窓の外を見ないように顔をそむけたまま、いきなり窓を、
” ガラッ!”
と開けて、ポットの熱湯を窓の真下にぶちまけた。
音はパタリと止んだ。
そして、同僚は顔をそむけたまま、すぐに窓を、
” ピシャリ!”
と閉めた。
部屋にはポットを握ったままの同僚の、荒い息だけが響いた。
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