日々の恐怖 8月14日 タクシー(3)
2~3分たったろうか、国道を走るとコンビニの灯りが見えて、タクシーは駐車場へ入った。
タクシーを止めると、後ろを振り向いて運転手が言った。
「 ごめんなさい、お客さん。
でもちょっとあれはねェ・・・。」
運転手は名刺を取り出し、
「 会社の電話番号はここにあるので、苦情が有れば私の名前を言って。
電話して構わないから。」
と前置きして言った。
火曜日に真由美さんを載せたのは、このタクシーだった。
初めは気が付かなかったのだが、例の××重機という名前で思い出したのだそうだ。
「 実は、お客さんの前に、男を乗せたんだけどね。」
真由美さんを追い越して行ったサラリーマンだ。
「 その男がね、××重機で降りたんだよ。」
タクシーの中で、男は携帯で電話していた。
『もうすぐ付くから』とか、『何分後だ』とか話していたのだという。
そう言えば運転手は、しきりに夜勤がどうの、××重機がどうのと言っていたのを思い出したが、なぜここまで通り過ぎたのかが分からない。
真由美さんが尋ねると、
「 お客さんは××重機の人じゃなさそうだし、火曜日もここまで来たでしょ。
まあ良いか、とは思ったんだけどね。」
“ ××重機の事務所は電気点いてないし、あの男もここの社員じゃないんだろうなぁ・・・・。”
とボンヤリ考えていたら、道の反対側にワンボックスが一台停まっていたのに気が付いたのだそうだ。
「 4人くらい乗ってたかなぁ。
それがライトが当たるとね、サッと隠れたんだよ。
あやしいだろう。
しかも運転席にいたのは、間違いなくあの男だったからねェ。
何かあっても俺も怖いし・・・・。」
真由美さんは、携帯で母親に話したのを思いだしてゾッとした。
「 うん・・今駅。
タクシーに乗るから・・××重機まで・・・。」
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