日々の恐怖 1月25日 昔の友達(1)
知人が小学校三年生の頃、隣の家にとある家族が引っ越して来たという。
両親と兄妹という家族構成だったが、皆テレビドラマから抜け出て来たような美形揃いだった。
そのため、やって来た当初は隣近所から遠巻きに見られ、知人も子供ながらに最初は近づき難い雰囲気を感じたという。
しかし、その家族は外見こそ浮世離れしていたが、中身はごく普通の中流家庭だった。
むしろ愛想はいい方で、夫婦揃ってよく地区の清掃活動や子供の学校行事に参加していたので、やがてすぐに近所に溶け込んだという。
兄の方は知人と同級生だったため、こちらもすぐに仲良くなった。
彼は女の子と見まごう可愛らしい顔立ちだったが、中身は腕白で、不思議なほど知人と馬があったという。
腕白な反面、妙に大人っぽい口調で皮肉を言うこともあり、そんな時にはいつも右の眉をピクリと上げた。
その仕草に知人は憧れたのだそうだ。
彼の妹はまた負けず劣らずの美少女で、お人形のようなという形容句がよく似合った。
兄に似てお転婆で、よく三人で日が暮れるまで遊んだそうだ。
知人にとって彼は親友とも呼べる存在だったが、一つだけ不満があった。
それは、決して彼の家に入れてはくれないことだった。
庭で一緒に遊ぶことはあっても、玄関の内側には入ったことがなかったそうだ。
彼の両親は愛想よく、
「 中で遊びなさいよ。」
と、しょっちゅう声をかけてくれたそうだが、その度に彼が、
「 僕たちは外で遊ぶよ。」
とか、
「 もう帰らなきゃいけないんだって。」
とその誘いを遮ったのだそうだ。
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