日々の恐怖 4月2日 村(6)
いつの間にか月が顔を出し、不気味に廃墟群を浮かび上がらせていた。
急に自分の置かれている状況がひどく恐ろしいものに感じられた。
当然だ、こんな時間にこんな山奥の廃墟に人など居るはずがないからだ。
心拍数が跳ね上がるのが分かる。
得体の知れない何かが、すぐそばに居る。
“ ゴトッ。”
今度は少し離れたところから音がした。
目をやるが、何も見えない。
緊張感からか、身動き一つ取る事が出来ない。
額から汗が流れる。
初めて金縛りを経験した。
目だけを動かし周りを見渡す。
すると俺の今居る場所の正面、少し低い場所にある家の窓を月明かりに浮かんだ黒い影が、
“ スッ。”
と横切るのが見えた。
また少し間を置いて、横切る。
影が往復しているように見えた。
“ 歩き回っているのか・・・・?”
俺の背後の家からも、相変わらず音が聞こえている。
もはや俺の中の恐怖心は耐え難いものになっていたが、なにしろ身体が石の様に固まって動けない。
それに少しでも動いてこの廃墟の中に棲む何かに存在を悟られれば大変な事になる気がする。
童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ