日々の恐怖 3月5日 お祓い(3)
その時、待機所にいる全員の視線が、青年に集まったのを感じた。
俺も実は、そこんとこは知りたかった。
青年は、
「 いやぁ全然見えないですねぇ。
まぁちょっとは、何かいるって感じることも、ないこtはないんですけど・・・・・。」
と、皆の注目を知ってか知らずか、そう笑顔で返した。
「 じゃあ修行っていうか、長いことその仕事続けたら段々見えるようになるんですか?」
と、俺の彼女が聞く。
「 ん~、それは何ともォ・・・・。
多分・・・・・・。」
青年が口を開いた、その時だった。
“ シュ、シュ、シュ、シュ、シュ、シュ、シュ・・・。”
入り口にある結構大きな木が、微かに揺れ始めた。
何事だと一同身を乗り出してその木を見た。
するとその入り口の側に、車椅子に乗った上品そうな老婆と、その息子くらいの歳に見える男が立っていた。
老婆は葬式帰りのような黒っぽい格好で、網掛けの(アメリカの映画で埋葬の時に婦人が被っていそうな)帽子を被り、真珠のネックレスをしているのが見えた。
息子っぽい男も、葬式帰りのような礼服で、大体50歳前後に思えた。
その二人も揺れる木を見つめていた。
そして木は一層激しく、
“ シュシュシュシュシュシュシュ・・・・・。”
と音を鳴らして揺れ始めた。
さらに、その振れ幅も大きくなった。
根もとから揺れているのか、幹の半分くらいから揺れているのか不思議と分からなかった。
分からないのが怖かった。
木が、
“ シュン、シュン、シュン、シュン・・・・・。”
と、凄い勢いで揺れる。
老婆と男は立ち止まり、その木を困ったように見上げていた。
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