日々の恐怖 10月21日 私の話(9)
朝、副住職が、
「 もうすぐ朝のお勤めがあるから。」
と起こしに来た。
起こされた俺は部屋を見回すと、電気は消えていて、部屋の隅にテレビがあるという寝る前の光景そのままだった。
昨日の事を思い出し、副住職に話をすると、
「 俺も前にこの部屋に泊ったことがあるけど、そんなことなかったぞ。」
と普通に返された。
” あれ、ひょっとして昨日のは夢?
でも体に昨日の感覚が残っているし・・・。”
と思っていると、僧侶が、
「 そういえば、昨日の真夜中何を騒いでいたの?」
と聞いてきた。
俺は何のことかわからず、
「 昨日の夜中は、部屋で静かにしていたけど。」
と答えると、
「 夜中三時ごろだと思うんだけど、廊下を走るものすごい足音が聞こえたから、何の音か部屋から出たら、ちょうどお前の部屋に若い人が入って行く姿を見たんだよ。」
と言われ、
「 何言ってんだよ?
そんな夜中に足音立てて人が走るわけないだろ。
寝ている住職が起きたらどうするんだよ。」
「 でも、確かに見たんだよ。
お前の寝ている部屋の入口を開けて入って行く、白い衣(法要で使う衣)に袈裟を着た若い人を・・・。」
「 お前なぁ、若い人って今ここにいる二人以外にはいないはずだぞ。」
俺はこの部屋が使われない理由がわかった気がした。
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